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現世:新たなる旅立ち

51.披露宴

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 結婚式の後は、披露宴だが第1会場はレストラン・アフロディーテ、第2会場はレストラン・アイリーンと2会場を設けた。

 2会場とも、2階フロアまで開け放つぐらい盛況で、本来ならホールスタッフがいるところをビュッフェ形式にして、好きなだけ皿に取り、自分のテーブルまで箱音でそこで頂くという形式にする。

 もちろん座らなくても、飲み物片手で立ち話しているグループもある。その中心にいるのは、サファイアで他の神様から質問攻めにあっている。

「どうしたら、こんな可愛い女性と結婚できるのだ?」

「人間の女性は、そんなにいいのか?」

「最高だぜ」

「アイリーン様がしょっちゅう行かれることに納得が行くか?」

「もちろんだな。エレモアが出産したら、神の一員だから神界で暮らすことになると思う。そうしたら、俺と入れ替わりに人間界に行けばいいのでは?」

「教えてくれて、ありがとう」

 もう何人かの神様は行く気満々でいるみたい。慢性的に神界も嫁不足が深刻だから、でも……若い女神など一人もいないので、しょうがない。

 エレモアはエレモアで、エストロゲン家で働いていた同輩たちに囲まれている。

「ねえ、あのオーナーの方、アイリーン様といわれたかしら?あの方、ステファニーお嬢様とそっくりだけど、ご親戚か何かなのかしら?」

「どこでどうやって、神様と知り合えることができたの?」

「この店は、ステファニーお嬢様のお店なのですよ。ステファニー様のミドルネームがアイリーン様で女神様なのです」

「まあ!では、異能が女神さまだったということでしょうか?」

「ステキね!」

「この店の名は、女神さまのお友達の名前からとられたのだけど、エストロゲン家ゆかりの……元から女神さまの眷属だった神様と共に、それに今では侍女長だったジェニファー様もご一緒に働いていらっしゃいますわ」

「ということは、わたくし達にも、働ける可能性があるということなのかしら?そうすれば、眷属の神様と知り合えて、神様と親戚になれるかもしれないということですわね」

「あの一件で、婚約破棄はされるし、勘当や座敷牢には入れられるし……さんざんな目に遭ったけど、こうしてエレモア様が神様と結婚されることになり、面目躍如でございますわ」

「ありがとうございます。でも、すべてはアイリーン様ことステファニーお嬢様のお計らいなのでございますわ。ステファニーお嬢様がわたくしを赦し受け入れてくださったからこそ、旦那様とも巡り合うことができましたの」

「狙い目は、やはりステファニーお嬢様だったということですわね?ありがとうございます。頼んでみますわ」

「ユリア様も、ご結婚までの間、こちらで働いていらっしゃったのです」

「まあ!ユリア様とも御同輩で、いらしたの?」

「ええ。先輩として、いろいろ丁寧にご指導いただきましたわ」

「わたくしも雇っていただけないかしら?」

「今は、アフロディーテ様といわれる女神さまがステファニーお嬢様から引き継がれていますが、ステファニーお嬢様は隣国アムステルダムで、2号店を出され、近々開店予定であらせられるので、そちらなら、ご応募できるかと存じますわ」

 今まで行きたいと言っていた令嬢たちは、アムステルダムと聞いて急に怖気づく。

 厨房の奥から行けることなど知らない。でも、神々は、エレモアの夫も含めて、先ほどからこちらと隣国の店を行ったり来たりしているものだから、ついエレモアも軽い調子で言ってしまったのだ。

「もし、よろしければ、今からでもアムステルダムのお店に行ってみましょうか?」

「えっ!?」

「このお店とアムステルダムのお店は繋がっておりますのよ」

「えーーーっ!?」

 その言葉で、令嬢たちは、厨房を抜け、アムステルダムに次々と行く。

「本当ですわ!ここは……アムステルダム国だなんて……!」

「さすが、神様はやることが違いますわね!」

「わたくし、アムステルダムで働きたいですわ!」





 2度目の披露宴はフランドル家が主催しても、こちらも神界から神々がたくさん列席されることになったのだが、お目当ては人間の令嬢。

 人間の令嬢とお近づきになりたい神々がこぞって集まる。

 エレモア父も、鼻が高い。新婚両人だけを呼ぶつもりであったが、勝手に神界からワラワラと集まってきてくれたので、見た目からして、明らかに人間とは思えない衣装、容姿、背中に羽根を生やしている姿は圧巻である。

 そうなると黙っていられないのがアフロディーテとアイリーン。だから二人の女神さまも媒酌人として?介添え人として?参加している。

 二人の女神さまが参加するとなれば、眷属であるデイジーやオパールなどの半馬神も必然的にくっついてくるというわけ。

 フランドル家のタウンハウスの庭も屋敷もすべて開放して、おもてなしに必死なのだが、表面上は笑顔。

「エレモアの婿殿は神様なのだから、儂も鼻が高い」

「よくまあ、神様とのご縁がありましたなぁ」

 エレモアと婚約破棄した伯爵家は悔しそうにしている。それを見て、フランドルとエレモアは留飲を下げている。

「儂は、エレモアならきっと、素晴らしい婿殿を連れ帰ってくれると信じておったわ」

 うそばっかり。エレモアは俯いているがサファイアはそんなエレモアのことが愛おしくてたまらない。

 どうぞ、末永くお幸せに……。
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