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アルキメデスを神界まで送りがてら、せっかくアントニオ様と二人きりになれたのだから、少し大回りして帰ることにしたのである。
そこは、1000年前に、レオナルド一世様と初めて出会った思い出の国、1000年前はみなしごとしてグレジオラ公爵邸の前にいたんだっけ。信心深いお義母様の娘として、生まれてきたかったけど、それが叶わぬものとなったから、孤児として拾ってもらえるように門前にいたのだ。
ひとつ年上のレオナルド様の義妹として、育てられた。グレジオラ公爵邸の向かい側に立っていたサルバカラ公爵邸の令嬢に、孤児であること、みなしごであることを3歳年上のブルータス王太子殿下に暴露され、婚約破棄されてしまったあの地。
いい思い出はなかったと言えば、なかったけれど義理の両親と義理の兄に出会えたことは良かった。
そういえば、サルバカラ公爵令嬢の名前もリリアーヌと言ったっけ。23年前の化けガエルの名前もリリアーヌと名乗っていたわ。よほど、リリアーヌという名前に悪縁がある。
約1050年前まで、真っ黒だった大陸も、今や草木が生えるジャングルと化していた。だけど、わずかながらに怨念が残っているようで、楽園とまではいかないようである。
浄化すれば、使えるだろうが今のところ土地には不自由していない。王城のあった場所は、わずかに石垣の残骸が見える。
あの時は、突発的に腹が立ち、氷の国としたが、果たして全員が女神を不信心していたのだろうか?
でも焦土としたのは、ブルータスのお父様のせいですわ。グレジオラ公爵憎しで、土地にできた穴に火を放ったのだから、少し考えてからやるべきです。
ゴールデニアとアントニオは、穴のところまで行ったが、いくら捜しても穴は見つからない。1000年の間に雨が降り土砂が流出して埋まったのであろうか?
ひょっとして、これは天然の落とし穴かもしれない。一見するとお花畑に見える大地に足を踏み入れた途端に、真っ逆さまに落ちるのかもしれない。
それでもう穴探しは止めて、そろそろアンダルシア国へ帰ろうとするとき、何やら穴の底から声が聞こえるような?気がする。気のせいよね、きっと。無視、無視。
これ以上厄介ごとに関わる気はない。この国はもう1000年以上前に滅んだ国なのだから。そもそも個々の国って何て名前だった?もうそれすら記憶にないぐらいの年月が過ぎているのだ。
それでもなお聞こえる地の底からの声
もう無視しきれなくなって、ええいままよ。とばかりにお花畑をめくるゴールデニア
そこでゴールデニアが見たものは!
なぜかグレジオラの民衆だったのである。
国土が凍って逃げ遅れた民衆は、ゴールデニアの実家の公爵領の跡地穴に飛び込んで、凍えるのを食い止め、穴の淵の壁際に芋などを植え、飢えをしのいでいたのだ。
そして、あれから23年間、どうにかこうにか生きてきた。そこへゴールデニアらしき女神の光が見えた人がいて、その人が懸命に声を振り絞って、地上にいるゴールデニアに知らせたというわけ。
で、どうする?元は、グレジオラ国の国土は、この地にあったグレジオラ領を切り取って持って行ったものだから、穴同士が繋がっていても別におかしくはない?
とりあえず穴の中にいた人の希望を聞こうと思う。穴の中での生活は、モグラやネズミがいて、食料には困らなかったらしい。また、地下水は凍っていなくて、美味しく飲めた。穴の土の中には、植物の種もあり、それを順番に植えていき、食べたらしい。
途中、氷土となったグレジオラを海に還したことがあった時、何やら上のほうで、海の気配がしたけど、その時はすでに横穴のほうへ入り込んでいて、安全だったなど。
「みなさんには、大変な苦労をおかけしましたわね。この地に残りたく場、ここに残り、新グレジオラ国となすもよし、わたくし達とともにアンダルシア国へ行きたいというのであれば、アンダルシアへの移住を認めます。」
「その前に女神様にお聞きしたいことがあります。ここはどこですか?」
「ここは、1000年前にわたくしとレオナルド一世様が住んでいた国です。もう1000年も前に滅び去ってしまいました。この国の領地の一部を移築して、グレジオラ国はできました。そして、今わたくしとともにいらっしゃる人は、グレジオラ国のレオナルド一世様の魂を持つお方です。」
「つまり開国の祖同士が再び夫婦となられてアンダルシアにいらっしゃるというわけですね?わかりました。そういうことでしたら、私たちもアンダルシアへともに参りましょう。」
というわけで、穴の中にいた住人たちとともに転移魔法を使って、アンダルシアへ帰ることとする。
アンダルシアへ到着後は、ハーバード領を移築した場所にとりあえず、住んでもらうこととする。ハーバードの領民ではないが、おそらく近隣の領民だったのだろう。気候風土がグレジオラにいた時と似ているので、居心地は悪くないはず。
仕事も与えた。主に教育関係の教科書を作る、配布すること、学校給食の献立作りなど父に頼んで、仕事を作ってもらったのだ。
そこは、1000年前に、レオナルド一世様と初めて出会った思い出の国、1000年前はみなしごとしてグレジオラ公爵邸の前にいたんだっけ。信心深いお義母様の娘として、生まれてきたかったけど、それが叶わぬものとなったから、孤児として拾ってもらえるように門前にいたのだ。
ひとつ年上のレオナルド様の義妹として、育てられた。グレジオラ公爵邸の向かい側に立っていたサルバカラ公爵邸の令嬢に、孤児であること、みなしごであることを3歳年上のブルータス王太子殿下に暴露され、婚約破棄されてしまったあの地。
いい思い出はなかったと言えば、なかったけれど義理の両親と義理の兄に出会えたことは良かった。
そういえば、サルバカラ公爵令嬢の名前もリリアーヌと言ったっけ。23年前の化けガエルの名前もリリアーヌと名乗っていたわ。よほど、リリアーヌという名前に悪縁がある。
約1050年前まで、真っ黒だった大陸も、今や草木が生えるジャングルと化していた。だけど、わずかながらに怨念が残っているようで、楽園とまではいかないようである。
浄化すれば、使えるだろうが今のところ土地には不自由していない。王城のあった場所は、わずかに石垣の残骸が見える。
あの時は、突発的に腹が立ち、氷の国としたが、果たして全員が女神を不信心していたのだろうか?
でも焦土としたのは、ブルータスのお父様のせいですわ。グレジオラ公爵憎しで、土地にできた穴に火を放ったのだから、少し考えてからやるべきです。
ゴールデニアとアントニオは、穴のところまで行ったが、いくら捜しても穴は見つからない。1000年の間に雨が降り土砂が流出して埋まったのであろうか?
ひょっとして、これは天然の落とし穴かもしれない。一見するとお花畑に見える大地に足を踏み入れた途端に、真っ逆さまに落ちるのかもしれない。
それでもう穴探しは止めて、そろそろアンダルシア国へ帰ろうとするとき、何やら穴の底から声が聞こえるような?気がする。気のせいよね、きっと。無視、無視。
これ以上厄介ごとに関わる気はない。この国はもう1000年以上前に滅んだ国なのだから。そもそも個々の国って何て名前だった?もうそれすら記憶にないぐらいの年月が過ぎているのだ。
それでもなお聞こえる地の底からの声
もう無視しきれなくなって、ええいままよ。とばかりにお花畑をめくるゴールデニア
そこでゴールデニアが見たものは!
なぜかグレジオラの民衆だったのである。
国土が凍って逃げ遅れた民衆は、ゴールデニアの実家の公爵領の跡地穴に飛び込んで、凍えるのを食い止め、穴の淵の壁際に芋などを植え、飢えをしのいでいたのだ。
そして、あれから23年間、どうにかこうにか生きてきた。そこへゴールデニアらしき女神の光が見えた人がいて、その人が懸命に声を振り絞って、地上にいるゴールデニアに知らせたというわけ。
で、どうする?元は、グレジオラ国の国土は、この地にあったグレジオラ領を切り取って持って行ったものだから、穴同士が繋がっていても別におかしくはない?
とりあえず穴の中にいた人の希望を聞こうと思う。穴の中での生活は、モグラやネズミがいて、食料には困らなかったらしい。また、地下水は凍っていなくて、美味しく飲めた。穴の土の中には、植物の種もあり、それを順番に植えていき、食べたらしい。
途中、氷土となったグレジオラを海に還したことがあった時、何やら上のほうで、海の気配がしたけど、その時はすでに横穴のほうへ入り込んでいて、安全だったなど。
「みなさんには、大変な苦労をおかけしましたわね。この地に残りたく場、ここに残り、新グレジオラ国となすもよし、わたくし達とともにアンダルシア国へ行きたいというのであれば、アンダルシアへの移住を認めます。」
「その前に女神様にお聞きしたいことがあります。ここはどこですか?」
「ここは、1000年前にわたくしとレオナルド一世様が住んでいた国です。もう1000年も前に滅び去ってしまいました。この国の領地の一部を移築して、グレジオラ国はできました。そして、今わたくしとともにいらっしゃる人は、グレジオラ国のレオナルド一世様の魂を持つお方です。」
「つまり開国の祖同士が再び夫婦となられてアンダルシアにいらっしゃるというわけですね?わかりました。そういうことでしたら、私たちもアンダルシアへともに参りましょう。」
というわけで、穴の中にいた住人たちとともに転移魔法を使って、アンダルシアへ帰ることとする。
アンダルシアへ到着後は、ハーバード領を移築した場所にとりあえず、住んでもらうこととする。ハーバードの領民ではないが、おそらく近隣の領民だったのだろう。気候風土がグレジオラにいた時と似ているので、居心地は悪くないはず。
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