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イケメン青年と姫乃は名刺交換をして、初めて相手の正体が分かった。
相手のイケメンは、大手不動産会社の御曹司か!?うーん。ご親戚の方?萬年不動産の萬年良平専務取締役だったのだ。
「ほお!余頃さんとこの芦崎さんというのは君のことだったのか?お噂はかねがね聞いているよ」
へ?どんな噂?俯きかけた姫乃に
「ウチの会社に来ませんか?お給料は余頃さんとこの5割増しでどうだろう?若いやる気のある社員を募集しているところだったんだ」
ああ。引き抜き話か。余頃に入社してから、その若さと美貌を武器に、とりあえずは会ってはもらえることをいいことにして、順調に営業成績を伸ばしてきた実績がある。
これまでも何度か中小の不動産会社からお声をかけてもらったことはあるものの萬年さんのような大手とは初めてのこと。
今は若年者人口が大幅に減っているので、若い社員はどこの会社でも引っ張りだこになっている。
でも、この会場に余頃社長と専務が来ている以上、すぐここで「はい」とは返事できない。それが態度に出ていたのか?萬年さんは、すぐ破顔して
「返事はいつでもいいよ。それより本の百均には、よく行くの?あの店で芦崎さんのような若い女性客を見るのが初めてだったので、よく覚えているよ」
「そういえば、確かに女性客は少ないですね。私も私以外の女性客を見たことがありません」
「だろ?しかも宅建コーナーを見ている女性なんて皆無だったからさ。思わずおせっかいをしてしまった」
「いいえ。そのおかげで、こうして合格することができたのですもの。萬年さんのおかげです。ありがとうございました」
会釈して、その場を離れようとしたら、腕を掴まれる。ビックリして振りほどこうにも解けない。
「ごめん。もう少し、一緒にいてもらえるとありがたいのだが……」
「いいのですか?あんな綺麗な人たちをほったらかしにして」
「綺麗、どこが?あいつらのは造られた美でしかない。あんなものを綺麗とは言わないよ。それにあいつらは俺の金と肩書にしか興味がない」
「はあ……、そうですか。大手さんも大変ですね」
たぶん整形か過度な化粧のことを言っているのだろうけど、造られた美ね……。女性の努力の結晶とは思わないのか?
だいたい萬年の専務と一緒にいるところを余頃社長や専務に見られたくないのよ。査定に響くじゃない!引き抜きの話はありがたいと言えば、ありがたいけど、5割増しというのが魅力的よね。どうせなら倍にしてくれたら、即決するのに。
パーティでは、結局、YACの先生にもまともに挨拶もできないまま萬年さんにお持ち帰りされることになってしまった。
立食パーティだったけど、ほとんど何も食べないうちに萬年さんに摑まってしまったから、お腹が空いてしまって、会場がお開きとなった時に、萬年さんに誘われた。ラーメンを食べに行くつもりで出たら、プリンスの豪華ディナーだったので驚いてしまった。そこでしこたま飲まされ、気が付いたらシャワーを一緒に浴びる仲になっていたというわけ。
きっと軽い女だと思われただろうけど、誘ったのは萬年さんなんですからねっ!
朝になって、朝食をルームサービスで摂っているときに萬年さんは真顔で
「昨日、言った引き抜きの話、やめにするわ」
やっぱりね。尻軽女は社員にできないってことよね。
「わかりました。もう会わないと約束します」
すると、急に慌てだした萬年さん
「違う!そういう意味ではない!会社の女性と関係を持たないという意味なんだ。理解してほしい。姫乃とは、ずっと付き合っていきたいと思っている。その……カラダの相性もバッチリだったし、できれば結婚を前提に付き合ってほしいと思っている」
え!?ワンナイトラブではなかったの?
「恋人になるってこと?」
「うん。そうだな、できれば婚約したい」
急な展開に頭が追い付かない。
「昨日の女性から逃げるため?」
「それもあるけど、それだけではない。最初から、本の百均で出会ったときから姫乃のことが好きだった。あれからしょっちゅう本の百均へ行ってみたけど、逢えなかった。昨日のパーティで、もしかしたら会えるのではないかと行ってみて、そこで会えたからこれはもう運命だって思ったんだ」
相手のイケメンは、大手不動産会社の御曹司か!?うーん。ご親戚の方?萬年不動産の萬年良平専務取締役だったのだ。
「ほお!余頃さんとこの芦崎さんというのは君のことだったのか?お噂はかねがね聞いているよ」
へ?どんな噂?俯きかけた姫乃に
「ウチの会社に来ませんか?お給料は余頃さんとこの5割増しでどうだろう?若いやる気のある社員を募集しているところだったんだ」
ああ。引き抜き話か。余頃に入社してから、その若さと美貌を武器に、とりあえずは会ってはもらえることをいいことにして、順調に営業成績を伸ばしてきた実績がある。
これまでも何度か中小の不動産会社からお声をかけてもらったことはあるものの萬年さんのような大手とは初めてのこと。
今は若年者人口が大幅に減っているので、若い社員はどこの会社でも引っ張りだこになっている。
でも、この会場に余頃社長と専務が来ている以上、すぐここで「はい」とは返事できない。それが態度に出ていたのか?萬年さんは、すぐ破顔して
「返事はいつでもいいよ。それより本の百均には、よく行くの?あの店で芦崎さんのような若い女性客を見るのが初めてだったので、よく覚えているよ」
「そういえば、確かに女性客は少ないですね。私も私以外の女性客を見たことがありません」
「だろ?しかも宅建コーナーを見ている女性なんて皆無だったからさ。思わずおせっかいをしてしまった」
「いいえ。そのおかげで、こうして合格することができたのですもの。萬年さんのおかげです。ありがとうございました」
会釈して、その場を離れようとしたら、腕を掴まれる。ビックリして振りほどこうにも解けない。
「ごめん。もう少し、一緒にいてもらえるとありがたいのだが……」
「いいのですか?あんな綺麗な人たちをほったらかしにして」
「綺麗、どこが?あいつらのは造られた美でしかない。あんなものを綺麗とは言わないよ。それにあいつらは俺の金と肩書にしか興味がない」
「はあ……、そうですか。大手さんも大変ですね」
たぶん整形か過度な化粧のことを言っているのだろうけど、造られた美ね……。女性の努力の結晶とは思わないのか?
だいたい萬年の専務と一緒にいるところを余頃社長や専務に見られたくないのよ。査定に響くじゃない!引き抜きの話はありがたいと言えば、ありがたいけど、5割増しというのが魅力的よね。どうせなら倍にしてくれたら、即決するのに。
パーティでは、結局、YACの先生にもまともに挨拶もできないまま萬年さんにお持ち帰りされることになってしまった。
立食パーティだったけど、ほとんど何も食べないうちに萬年さんに摑まってしまったから、お腹が空いてしまって、会場がお開きとなった時に、萬年さんに誘われた。ラーメンを食べに行くつもりで出たら、プリンスの豪華ディナーだったので驚いてしまった。そこでしこたま飲まされ、気が付いたらシャワーを一緒に浴びる仲になっていたというわけ。
きっと軽い女だと思われただろうけど、誘ったのは萬年さんなんですからねっ!
朝になって、朝食をルームサービスで摂っているときに萬年さんは真顔で
「昨日、言った引き抜きの話、やめにするわ」
やっぱりね。尻軽女は社員にできないってことよね。
「わかりました。もう会わないと約束します」
すると、急に慌てだした萬年さん
「違う!そういう意味ではない!会社の女性と関係を持たないという意味なんだ。理解してほしい。姫乃とは、ずっと付き合っていきたいと思っている。その……カラダの相性もバッチリだったし、できれば結婚を前提に付き合ってほしいと思っている」
え!?ワンナイトラブではなかったの?
「恋人になるってこと?」
「うん。そうだな、できれば婚約したい」
急な展開に頭が追い付かない。
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