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オフィスラブ
30.夫婦喧嘩
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正彦と美織の夫婦は、あれから50年が経ち、金婚式を息子夫婦が海外旅行のプレゼントをしてくれて、若い頃は、さんざん行ったが、子供が生まれるまでの頃で、子供が生まれてからは、子育てと仕事の両立で、けっこう遊びに行く暇もなく、二人で汗を流したものだ。
もちろん、夫婦生活は、息子が独立して家を出る日まで、お盛んで、家を出てからも実際には続くのだが、回数が毎日3回から1日1回、3日に1回、1週間に1回とだんだん年齢と共に減っていく。
金婚式の頃には、もうほとんど夫婦の営みはしていない。当然と言えば、当然だけど、それでも、外国人並みにしょっちゅうチュッチュッしていることは変わりがない。
ただ、この頃の口癖は、「今度生まれ変わっても、また夫婦になろうね。」が合言葉のように頻繁に囁かれることになったというぐらい。
50年間も仲良しでいられる夫婦というのは、貴重で希少、ロイヤルカップル並みだということは間違いない。
それで海外旅行に出かける前日、孫娘の頼みで、乙女ゲームなるものを買ってやることにしたのだ。
恋愛ゲームの一種のようなものだが、無論、この老夫婦にとっては無縁のもので、孫娘の頼みを嬉しそうに聞く好々爺のごときになっている。
孫娘は、老夫婦をATM代わりにしているだけでも、若い女の子と一緒にいることは、華やいでいて、楽しい。
「ラブパラダイス」なんて、乙女ゲームを買わされているのだけど、名前からして、エッチな雰囲気満載、嫁入り前の若い娘がこんなもので遊んで大丈夫かしら。と美織は心配するが、正彦は、「美織も若い時は、相当にエロかったよ。」の一言で、生まれて初めての夫婦げんかに発展する。
「それって、どういう意味ですか!」
「いやいや、俺は、そういう美織が好きだったのだから、しょうがないだろ?」
「ちょっと待ってくださいよ。正彦が私をさんざん開発したから、そうなっただけですよ。それを最初からエロイなんて、許さない!」
「そういう美織が、ものすごく魅力的だってことさ。」
若ければ、この後イチャイチャして、夫婦喧嘩はお開きとなるのだが、もう美織は77歳、正彦は80歳で、そんな体力はどこにもない。
そのまま搭乗ゲートまで行く。昨日から、二人とも冷戦状態で、一言も口をきいていない。
息子夫婦は、懸命に宥めるも、二人とも眼も合わせないまま、出国ゲートに並ぶ。当の孫娘は、自分が買ってもらった乙女ゲームが原因なのに、我関せずの態度であっけらかんとしている。
息子夫婦が奮発してくれたおかげで、ファーストクラスに乗れたのだが、美織は怒って、エコノミーに座る。
食事やサービスは、客室乗務員が気を利かせてくれて、ファーストクラスと同様のものを受け取ることができた。
ただ、エコノミーは座席と座席との間隔が狭いので、十分に休めない。
こんなのだったら、短気は損気なので、せめてビジネスクラスの方へ移れば、よかったと後悔するも、癪なので、エコノミーに居座る美織。
ちょうど食事が終わり、ウトウトとしかけた時、機体に大きな衝撃を受け、急にシートベルト着用のランプが点き、機内は騒然とする。
映画もまだ途中だというのに、途中で切れ、客室乗務員が慌ただしく行き来し始める。
機長の説明では、赤い国の上空で、爆撃されたらしい。このまま撃墜されて、地上に落下するか、胴体着率を試みるかもしれないので、シートベルトをしっかり締め、頭を低くして、備えてくれと言うアナウンスが流れてくる。
その時、客室乗務員の制止を振り切って、美織を探しに正彦が来てくれたけど、こればかりは、正彦でもどうしようもできないこと。
「美織。俺が悪かった。死ぬときは一緒だよ。だから、せめてファーストクラスに来てくれないか?」
ファーストクラスは、伊達に値段が高くサービスが良いだけではない。何かあった時に、助かる可能性が高い。
反対にエコノミーは、エンジンから近く、爆撃された場合、爆発して、炎上するのは、エコノミークラスの方から、と相場が決まっている。
これは、飛行機にのみならず、電車でも新幹線でも自由車よりは指定席、指定席よりはグリーン車の方が安全で、何かあれば、グリーン車の乗客から先に助け出されるというもの。
命にお金が関係しているということなど、会ってはならないことだが、現実では、それが当然のようにまかり通っている。
もちろん、夫婦生活は、息子が独立して家を出る日まで、お盛んで、家を出てからも実際には続くのだが、回数が毎日3回から1日1回、3日に1回、1週間に1回とだんだん年齢と共に減っていく。
金婚式の頃には、もうほとんど夫婦の営みはしていない。当然と言えば、当然だけど、それでも、外国人並みにしょっちゅうチュッチュッしていることは変わりがない。
ただ、この頃の口癖は、「今度生まれ変わっても、また夫婦になろうね。」が合言葉のように頻繁に囁かれることになったというぐらい。
50年間も仲良しでいられる夫婦というのは、貴重で希少、ロイヤルカップル並みだということは間違いない。
それで海外旅行に出かける前日、孫娘の頼みで、乙女ゲームなるものを買ってやることにしたのだ。
恋愛ゲームの一種のようなものだが、無論、この老夫婦にとっては無縁のもので、孫娘の頼みを嬉しそうに聞く好々爺のごときになっている。
孫娘は、老夫婦をATM代わりにしているだけでも、若い女の子と一緒にいることは、華やいでいて、楽しい。
「ラブパラダイス」なんて、乙女ゲームを買わされているのだけど、名前からして、エッチな雰囲気満載、嫁入り前の若い娘がこんなもので遊んで大丈夫かしら。と美織は心配するが、正彦は、「美織も若い時は、相当にエロかったよ。」の一言で、生まれて初めての夫婦げんかに発展する。
「それって、どういう意味ですか!」
「いやいや、俺は、そういう美織が好きだったのだから、しょうがないだろ?」
「ちょっと待ってくださいよ。正彦が私をさんざん開発したから、そうなっただけですよ。それを最初からエロイなんて、許さない!」
「そういう美織が、ものすごく魅力的だってことさ。」
若ければ、この後イチャイチャして、夫婦喧嘩はお開きとなるのだが、もう美織は77歳、正彦は80歳で、そんな体力はどこにもない。
そのまま搭乗ゲートまで行く。昨日から、二人とも冷戦状態で、一言も口をきいていない。
息子夫婦は、懸命に宥めるも、二人とも眼も合わせないまま、出国ゲートに並ぶ。当の孫娘は、自分が買ってもらった乙女ゲームが原因なのに、我関せずの態度であっけらかんとしている。
息子夫婦が奮発してくれたおかげで、ファーストクラスに乗れたのだが、美織は怒って、エコノミーに座る。
食事やサービスは、客室乗務員が気を利かせてくれて、ファーストクラスと同様のものを受け取ることができた。
ただ、エコノミーは座席と座席との間隔が狭いので、十分に休めない。
こんなのだったら、短気は損気なので、せめてビジネスクラスの方へ移れば、よかったと後悔するも、癪なので、エコノミーに居座る美織。
ちょうど食事が終わり、ウトウトとしかけた時、機体に大きな衝撃を受け、急にシートベルト着用のランプが点き、機内は騒然とする。
映画もまだ途中だというのに、途中で切れ、客室乗務員が慌ただしく行き来し始める。
機長の説明では、赤い国の上空で、爆撃されたらしい。このまま撃墜されて、地上に落下するか、胴体着率を試みるかもしれないので、シートベルトをしっかり締め、頭を低くして、備えてくれと言うアナウンスが流れてくる。
その時、客室乗務員の制止を振り切って、美織を探しに正彦が来てくれたけど、こればかりは、正彦でもどうしようもできないこと。
「美織。俺が悪かった。死ぬときは一緒だよ。だから、せめてファーストクラスに来てくれないか?」
ファーストクラスは、伊達に値段が高くサービスが良いだけではない。何かあった時に、助かる可能性が高い。
反対にエコノミーは、エンジンから近く、爆撃された場合、爆発して、炎上するのは、エコノミークラスの方から、と相場が決まっている。
これは、飛行機にのみならず、電車でも新幹線でも自由車よりは指定席、指定席よりはグリーン車の方が安全で、何かあれば、グリーン車の乗客から先に助け出されるというもの。
命にお金が関係しているということなど、会ってはならないことだが、現実では、それが当然のようにまかり通っている。
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