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そんな時、またマイケルから、女性の口説き方を伝授してもらったのだ。
マイケル曰く、女性はモノをプレゼントするだけではダメだと言われ、愛の言葉を囁かなければ、自分になびかない。それに相手が反応すれば、わずかなスキンシップも十分に有効だと教えてもらった。
情けない話だが、今まで女を口説いたことがないアーノルドにとって、それはどれも難関中の難関で、そんな難度が高いものいきなりできるのだろうか?と不安になる。
いつも気に入った女の腕を掴み、部屋に引き入れ、押し倒し、「脱げ!」と命令する。女は言われたとおり、全裸になり、あられもない姿で、アーノルドを誘う。そのパターンしか経験がないのだ。それなのに、それらをすべて封じ込め、言葉だけで相手をその気にさせることなど、アーノルドにとっては、至難の業としか言いようがない。
でもそれをしなければ、キャロラインは墜ちないとまで言われてしまえば、やるしかない!
どうしても、キャロラインが欲しくて欲しくて堪らない。もう自分に嘘は吐けない。寝ても覚めてもキャロラインのことを考え、息をするのも苦しいほどの思いを抱いている。この感情の正体はいまだわからないが、キャロラインの姿を見た途端、悦びでカラダが確かに震えだす。
マイケルは、それを「恋」だと言うが、俺は愛を知らないで、ここまで生きてきたから、恋だけは、マイケルの言葉を鵜呑みにはできない。
絶対、違うものだと言いたい!俺は、キャロラインを抱きたいだけなんだと、言い聞かせる。でも、それをキャロラインにどう伝える?ただ、「抱かせてくれ」だけでは、絶対、断られるだろう。断られたら、俺は生涯立ち直れないほどのショックを受けることは間違いない。
断られたら、キャロラインに対して、不敬罪を適用して、罰するか?そんなこと、彼女にだけはしたくない。キャロラインには、俺の方を見てほしい。俺に関心を持ってほしい。できれば、一生、俺の傍にいて、俺だけを見つめてほしいと願う。
マイケルは、呆れたようにため息を吐くと、
「殿下のそれは紛れもないキャロライン嬢に対する恋心をお持ちなのです。言えばいいでしょう?キャロライン嬢がどう反応なさるか、わかりませんが誠心誠意、殿下が願うことを口にすればよろしいかと存じます」
え?抱かせてくれ、でいいのか?でも、そんなこと言って、キャロライン嬢に嫌われたくないという本音がある。なら、どう言えばいいのだ?わからない!誰か、教えてくれー!
堂々巡りの思考に、マイケルはついについていけないとばかりに背中を向けてしまう。そして、帰宅して愛する妻のクリスティーヌに洗いざらいぶちまけようと心に誓う。
妻は笑いながら、マイケルの話に耳を傾ける。そして、キャロラインお嬢様も、シンデレラになれたのだと感激して涙を流す。
あの辛い5年間があったからこそ、人を敬い、モノを大切になさる優しいお嬢様がどう判断されるかが見ものという気もするけど、お嬢様なら、きっと殿下のお気持ちを汲まれるに違いない。
クリスティーヌの涙をそっとぬぐい、優しく口づけするマイケル。その背中に腕を回し、自分から抱き着くクリスティーヌ、二人の夜はこれから長い。
翌日、また図書室を訪れたキャロラインに、アーノルドは思い切って、声をかける。
「今日は、天気も良いし、久しぶりに街へ下りないか?少し地味眼のドレスを着て、平民の娘のようにふるまいながら、街へ行こう」
意外にも、この申し出にキャロラインは、目を輝かせる。
「それでは、持っていきたいものもございますし、いったん帰宅してから着替えて参ります!」
ん?持っていきたいもの?とは、なんだ?と思うが、キャロラインが悦んでくれている様子を見ただけで、満足している。
マイケル曰く、女性はモノをプレゼントするだけではダメだと言われ、愛の言葉を囁かなければ、自分になびかない。それに相手が反応すれば、わずかなスキンシップも十分に有効だと教えてもらった。
情けない話だが、今まで女を口説いたことがないアーノルドにとって、それはどれも難関中の難関で、そんな難度が高いものいきなりできるのだろうか?と不安になる。
いつも気に入った女の腕を掴み、部屋に引き入れ、押し倒し、「脱げ!」と命令する。女は言われたとおり、全裸になり、あられもない姿で、アーノルドを誘う。そのパターンしか経験がないのだ。それなのに、それらをすべて封じ込め、言葉だけで相手をその気にさせることなど、アーノルドにとっては、至難の業としか言いようがない。
でもそれをしなければ、キャロラインは墜ちないとまで言われてしまえば、やるしかない!
どうしても、キャロラインが欲しくて欲しくて堪らない。もう自分に嘘は吐けない。寝ても覚めてもキャロラインのことを考え、息をするのも苦しいほどの思いを抱いている。この感情の正体はいまだわからないが、キャロラインの姿を見た途端、悦びでカラダが確かに震えだす。
マイケルは、それを「恋」だと言うが、俺は愛を知らないで、ここまで生きてきたから、恋だけは、マイケルの言葉を鵜呑みにはできない。
絶対、違うものだと言いたい!俺は、キャロラインを抱きたいだけなんだと、言い聞かせる。でも、それをキャロラインにどう伝える?ただ、「抱かせてくれ」だけでは、絶対、断られるだろう。断られたら、俺は生涯立ち直れないほどのショックを受けることは間違いない。
断られたら、キャロラインに対して、不敬罪を適用して、罰するか?そんなこと、彼女にだけはしたくない。キャロラインには、俺の方を見てほしい。俺に関心を持ってほしい。できれば、一生、俺の傍にいて、俺だけを見つめてほしいと願う。
マイケルは、呆れたようにため息を吐くと、
「殿下のそれは紛れもないキャロライン嬢に対する恋心をお持ちなのです。言えばいいでしょう?キャロライン嬢がどう反応なさるか、わかりませんが誠心誠意、殿下が願うことを口にすればよろしいかと存じます」
え?抱かせてくれ、でいいのか?でも、そんなこと言って、キャロライン嬢に嫌われたくないという本音がある。なら、どう言えばいいのだ?わからない!誰か、教えてくれー!
堂々巡りの思考に、マイケルはついについていけないとばかりに背中を向けてしまう。そして、帰宅して愛する妻のクリスティーヌに洗いざらいぶちまけようと心に誓う。
妻は笑いながら、マイケルの話に耳を傾ける。そして、キャロラインお嬢様も、シンデレラになれたのだと感激して涙を流す。
あの辛い5年間があったからこそ、人を敬い、モノを大切になさる優しいお嬢様がどう判断されるかが見ものという気もするけど、お嬢様なら、きっと殿下のお気持ちを汲まれるに違いない。
クリスティーヌの涙をそっとぬぐい、優しく口づけするマイケル。その背中に腕を回し、自分から抱き着くクリスティーヌ、二人の夜はこれから長い。
翌日、また図書室を訪れたキャロラインに、アーノルドは思い切って、声をかける。
「今日は、天気も良いし、久しぶりに街へ下りないか?少し地味眼のドレスを着て、平民の娘のようにふるまいながら、街へ行こう」
意外にも、この申し出にキャロラインは、目を輝かせる。
「それでは、持っていきたいものもございますし、いったん帰宅してから着替えて参ります!」
ん?持っていきたいもの?とは、なんだ?と思うが、キャロラインが悦んでくれている様子を見ただけで、満足している。
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