愛人契約～純情な貧乏娘に一目ぼれ!?あの手この手で口説きまくる

18.

 　キャロラインがトラブルに巻き込まれたことは、間違いなくアーノルドの責任、それで気まずくて、しばらく目を合わせられないでいる。

　アーノルドは、そういうところ本当に、ヘタレで、夜は手を繋いで寝るだけとなり、キャロラインはここしばらく少々お冠になっている。

「今夜もまた、手だけを繋いで寝るのでございますか？それならわたくしは、もう必要ないと言われている気がします」

「いや、そういう意味ではない。ただ、この前学園でトラブルに巻き込んでしまったから……」

「あら？それは、どういう意味でございますか？クローム伯爵のことだけでなく、何かやましいことでもおありなのでしょうか？」

「そういうことではなく……」

　確かにやましいことはある。事実で……、でもそれを今、知られるわけにはいかない。アーノルドが今まで、軒並みに女に夜伽をさせて、愛人契約をしていたことだけは、キャロラインに知られたくない。

　飽きたという理由だけで、次から次へと女を乗り換え、捨てていたことを知られれば、キャロラインは、間違いなくアーノルドを軽蔑し、もう顔を見るのもイヤと言い出されるかもしれない。それは、絶対にイヤだ。

「わかった。俺が悪かったよ。こっちへおいでキャロル愛している」

　胡乱な目をしてアーノルドの方を見るも、素直に身を寄せてくる。今日は、キャロラインが何も感じられなくなるほど、たっぷりと愛撫をしよう。

　そう思って、念入りに触っているが、どうも反応が薄い。いつもなら、もうトロトロになっていてもおかしくないと思うのに、ふと顔を覗き込むと、アーノルドは思わず絶句してしまう。キャロラインは、泣いていたのだ。それも声を出さずに。

「どうした？キャロル、どこか痛いか？」

「アーニー様のばか！」

「え？」

　意外にも、キャロラインは、アーノルドが今までさんざん女を抱き捨ててきたこと、愛を信じていなかったことをみんな知っていたのだ。学園にいれば、否が応でもその手の話は噂として耳に入る。そして今回のことで、その噂話にさらに尾ひれがつく形になり、アーノルドに関するいろんな醜聞をさんざん聞かされた後だということがわかる。

　アーノルドは、正直、その話がまんざら誇張された話ではないことを知っているが、キャロラインにはショックなことだったのだろう。

「どうする？俺に愛想が尽きたのなら、今宵は、いつもと同じように手を繋いで寝るが……それもイヤなら、キャロルはこの部屋で休んでくれ。俺は隣の自室に戻って寝るから」

　アーノルドは来るべきものが来たと覚悟を決めた。キャロラインと婚約破棄をしても、キャロラインは、いわゆる結婚で言うところの白い結婚をしているわけだから、何も傷つかない。

　キャロラインの純潔は守られているのだから。

「わたくしも修道院送りとなるのでございますか？もう、わたくしのことを飽きてしまわれたのですね」

　寂しそうなキャロラインの横顔を見て、俺は息をするのも苦しくなる。

「違う！キャロルを飽きるなんてこと、あり得ない！だって、俺たちはまだ……清い関係なんだ」

「え？」

　キャロラインは訳が分からないといった顔で、アーノルドの顔を覗き込む。

「それは、どういうことなのでございますか？清い関係とは……」

「いや、あの、その……、キャロルのことが大事過ぎて、まだ本格的に抱いていないということだ」

「えっえっー！？だって……いつも、わたくしをたっぷりと可愛がってくださいまして、その……ご寵愛を受けていたと思っていたのです、わたくしは殿下で十分満足していたのに……、それでは、殿下はわたくしのことを女にしてくださったのではないのですか？」

「いや、なんというか……、キャロラインの純潔を汚したくないと思って……まだ婚約式や結婚披露パーティの前だしさ。結婚式が済み、正式な夫婦となってからでも遅くはないと思っていたのだよ」