魔性の聖女~前世、聖女と王太子に断頭台に送られた令嬢は、復讐するため自ら聖女となる

青の雀

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第2章 少女期

14.マーガレット

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 マーガレットは、ビクトリアが8歳の時、結婚した。相手は、ウィルソン伯爵様でマーガレットより3歳年上だった。マーガレットはもともと子爵家令嬢で、我が家の侍女になった経緯は、行儀見習いとしてだった。

 マーガレットの兄とウィルソン様が同い年で学園の同級生だったことから、二人は知り合いになった。二人が婚約してすぐの頃、マーガレットの父が商売で失敗し、多額の借金をっ背負い夜逃げした。マーガレットはその時もう、うちの侍女見習いだったから、借金取りも公爵家までは押し掛けない。兄も同時に行方不明になった。ウィルソン伯爵とマーガレットが二人で借金を返したのだ。

 二人は本当に愛し合っていた。仲睦まじく体を寄せる二人に子供心ながらうらやましいと憧れを持った。

 二人が結婚して、屋敷を辞めた。ビクトリアは母よりマーガレットのほうが好きだったので、前世は大泣きしたわ。でも今世は泣かない。マーガレットには幸せになってほしいと思っている。結婚祝いとして、ある宝石に聖なる魔力を込めて渡したわ。それは防御魔法と治癒魔法。肌身離さず持っててもらうことにした。何かあれば、その宝石が身代わりになってくれる。どうしても助けたい人がいたら、その宝石が病気やケガを治してくれるというもの。
持ちやすいようにブレスレットに加工して渡した。マーガレットは嬉しそうにその場でつけてくれた。伯爵様にも同様のブレスレットをペアでプレゼントした。

 二人の間には、1男2女の子供が生まれた。ビクトリアが留学する前の日まで、よく親子で顔を出してくれた。そして、留学して婚約話で一時帰国したときも、まだ生きていてくれていて、前世では、入学当初、ビクトリアをかばって暴走した馬車に撥ねられ、死ぬところだった。ビクトリアの結婚式にも夫婦そろって出席してくれた。よかった。あの宝石の威力か?それとも歴史が変わったのか?どちらかわからなかったが、マーガレットが生きているだけでうれしい。


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 マーガレット視点

 ビクトリアお嬢様が3歳の誕生日を迎えられた日、突如として、性格が変わられた。
 好き嫌いをせず、なんでも召し上がるようになったことは、とても喜ばしい変化でした。
 身の回りのこともすべて、ご自分一人でなさるようになり、お勉強も進んで学ばれるように、ほんとに人が変わったように見えました。私にもずいぶん、やさしいお言葉をかけてくださるようになり、聞き分けのいいお嬢様になられました。

 教会にも毎日いかれるようになり、ある時、お嬢様が治癒魔法を使っていらっしゃるのを見た時は、驚いてしまいました。司祭様から目配せいただいて、なるべくお嬢様一人になる時間を作って差し上げたら、みるみるうちに病人のカラダが金色の光に包まれて、回復していくのです。

 もう聖女様、まちがいなしです。私が結婚するときも主人とペアのブレスレットをくださいました。その宝石の中に魔力を仕込んでいらっしゃることを知っていました。私たち、二人の幸せのため魔力を込めてくださったお嬢様は本当にお優しいのです。
 そのお嬢様が隣国へ留学され、此度は、ご結婚されるということ。月日が経つのは早いものですね。久しぶりにお会いしたお嬢様は、もうご立派になられて、式の間中、ずっと涙があふれていました。

 お嬢様、今度は私から申し上げますね。
 「聖女様に祝福を!幸、多からんことを心よりお祈り申し上げます。」
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