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第2章

49.火口

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 ロミーとケンが住む国ケセラン国では、ちょっとした騒ぎになったことは言うまでもないこと。

 ケセラン国も南の海上で、突如、島らしきものができたという知らせをすでに掴んでいた。

 でも、それがアルカイダ国から逃げてきた聖女様がお創りになった島ということを漁師のロミーとケンから聞いて、驚いている。

 この世界では、まだ領海というものが曖昧で、もう少し、その島がケセランに近ければ、領有権を主張したいところなのだが、やや離れている。

 しかし、あの島が聖女様の島だとわかり、にわかに交易意欲がそそられるということも確かで、ケセラン国としては、正式に使節団を送ることにした。

 独立国として認めるか、植民地のような形で支配下に置くかは、まだ決めかねている。

 それにロミーとケンの二人から聞いた話では、アルカイダ国が滅ぶきっかけになったのは、まぎれもなく聖女様絡みの話というから、どう対処すべきか悩む。

 もし、話し合いの途中で聖女様に対して不敬があり、怒らせでもしたら、アルカイダの二の舞になるかもしれないという恐れがある。

 すぐ、我が国に上陸していただいて、十分なおもてなしをと、思っても、すでに聖女様は、あの島で何不自由なく暮らしておられる。

 縁談と言っても、わが国には、適当な年頃の王子がいない。

 モノでも、王子でも連れないとなると、他に何がある?めぼしいものは、残念ながら、わが国には何もない。

 それでも、一応は使節団を出すしか他ならない。聖女様は、立場的に国王陛下より上のお立場で、だから、アルカイダ国など取り潰せるぐらいのお力をお持ちなのだ。

 その気になれば、聖女様はケセラン国もアルカイダと同じようにするだけの力をお持ちであるということは言うまでもないことなので。




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 その頃、ジェファニーは、この島とケセラン国の位置関係は、わかったが、島の周辺海域に他に島や陸地がないか、空を散歩しながら探索魔法を繰り出している。

 とにかくアルカイダを一刻も早く抜け出すことばかりに重きを置いて、考えていたから、よく世界地図が頭に入っていない。

 島を出るとき、ついでだから、アルカイダの様子も見に行った。アルカイダは、ほとんど溶岩まみれになっていて、生存者は一人としていない状態に見えた。

 ロミーとケンの話の様子から、アルカイダには噴火するような高い火山はなく、地震も温泉も出ない。

 山はあるものの、山というよりは小高い丘と言った方が適切だったので、火山が噴火したという話は、正直なところ眉唾だと信用していなかったのだ。

 でも、こうして上から眺めただけで、溶岩がそこらじゅうに流れていることがわかる。

 詳しく検分していくと、溶岩の山のようになっているところがある。それは、おそらくお城だと思う。その隣地にあるのが、ジェニファーが住んでいた貴族街、でもそのあたりの溶岩の量が群を抜いて多い。

 そして、あの大穴付近がとりわけ……、というかあの大穴からどう見ても噴出しているとしか思えない。今でも、そこから煙が上がっているのが見える。

 エリエールやシャーロットが住んでいたところも同じように、そこから煙が上がっている。

 大聖堂があったところも、本来なら人々を救済すべく建っていなければならない大聖堂も、今や島の一部と化している。

 その跡地にも火口らしきものが口を開いているように見える。

 念のため、グラント領地へ行くと、そこが火口の様にいまでも、ぶすぶすと煙が上がっている。

 スコット領地へ行っても、同じ現象が起きている。

 ということは、ジェニファーが地面ごと持っていったところに火口ができ、それがあっという間に王国全土を飲み込んだという形容が正しいように思われる。
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