78 / 99
第3章
78.思い出の旅4
しおりを挟む
「なんだか聖女様の力が凄すぎて、自分の娘だと思えなくなってしまうよ」
「今までの父は、みんなそうだったと思います。母は、いいところへお嫁に行けるとか、贅沢できるなど言っていましたわ」
「妻もそのクチだ」
「でも、この聖女島は観光だけしか売りがないので、お母様にはピッタリかもしれませんね」
言いながら、問題の国、ムーランへの扉を開ける。
そこは、王城の目の前、ジェニファーは、両頬を軽くたたき、気合を入れる。
門番に手紙の主が来たことを伝えると、門番は慌てて王城の中へと消える。
「聖女様、どうぞこちらへ」
「懐かしいわ。もう白髭の司祭様もお亡くなりになっていますよね?」
「遠路はるばるお越しいただいて、今日も空からでございますか?」
「いいえ、父の商会の仕入れがてら、お手紙を頂いたので、転移魔法で来ましたのよ」
その時、バタバタと走ってくるような足音が聞こえる。それは、たぶん国王陛下だと思う。
「この方が伝説の聖女様か」
「初めましてですわね?」
「おお、そうであった。わが国では、今から100年ほど前に偽聖女を輩出してしまって、申し訳ございません」
「もう、済んだことですし、リリアーヌ様はあれから、いかがされましたか?」
「近所に住む平民と、ケロっとして結婚し、曾曾孫が成人したあたりでしょうか?」
「さようでございますか?それで、ご用件というのは」
「聖女様とそのご家族様に、ムーラン国に移住していただけないかと思いまして」
「それはできないご相談ですわ。ご存知の通り、聖女様は1000年に一度しか存在しえない。ですが、人間の寿命は100年を切っています。残り900年を聖女様なしでは、人々は暮らしていけません。そこで神の思し召し、つまりメッセージを伝えるために、初代の聖女が転生を繰り返して、存在しているというわけです。前世のわたくしは、シドニー国に王妃として、存在してしまいましたから、今世は、まったく別の国で活躍しなければなりません。ですから、その儀ばかりは、何卒、ご容赦くださいませ」
「しかしながら偽聖女様を輩出したという悪いイメージを払しょくするには、聖女様にこの国を統治していただきたいのです」
「?……つまりは、わたくしに、この国を下さるということでよろしゅうございますの?それは……少し……、確かに前世も、その前の前々世も、王妃としての役目は果たしましたが……」
「ですから、聖女様が気に入った男性と結婚して、その方を王配として迎えれば、問題がないでしょう?」
「え……と、王配候補のお心当たりの方が……?」
「滅相もございません。むしろ、聖女様にはこんな小国の王を押し付けるような格好になり、すまないと思っておる次第でございますから、できればムーラン国を聖女国としていただきたいだけなのです。私と妻の間には、子がおりませぬ。このままでは、この国は没落してしまいます。できれば、ご家族の方ともども、この王家に入っていただきたいのです」
ということは、父がムーランの国王になるってこと?これはさすがに……。父を見ると真剣に考えこんでいる様子。ひょっとして、やる気ある?
もしそうならば、ここで一存で断ってはいけないような気もする。
「今ここで、お返事をするわけには行きません。家へ持ち帰り、母やカルダンの国とも相談してみないとは、なんとも言えないというのが現状でございます。領地の領民をどうするかも含めて、考えたいと思います」
「もちろん、お返事はよく考えられてからで、けっこうです。急ぎませんが、なんせ私も年なもので、この老いぼれがいつまで生きているか、わかりませんので、なるべく早くお返事してくださるとありがたいです」
急な話で、驚いて、しまって、その日、シドニー国へ寄らずにまっすぐ帰宅した。
その夜、母を交えて、家族会議が開かれる。
「今までの父は、みんなそうだったと思います。母は、いいところへお嫁に行けるとか、贅沢できるなど言っていましたわ」
「妻もそのクチだ」
「でも、この聖女島は観光だけしか売りがないので、お母様にはピッタリかもしれませんね」
言いながら、問題の国、ムーランへの扉を開ける。
そこは、王城の目の前、ジェニファーは、両頬を軽くたたき、気合を入れる。
門番に手紙の主が来たことを伝えると、門番は慌てて王城の中へと消える。
「聖女様、どうぞこちらへ」
「懐かしいわ。もう白髭の司祭様もお亡くなりになっていますよね?」
「遠路はるばるお越しいただいて、今日も空からでございますか?」
「いいえ、父の商会の仕入れがてら、お手紙を頂いたので、転移魔法で来ましたのよ」
その時、バタバタと走ってくるような足音が聞こえる。それは、たぶん国王陛下だと思う。
「この方が伝説の聖女様か」
「初めましてですわね?」
「おお、そうであった。わが国では、今から100年ほど前に偽聖女を輩出してしまって、申し訳ございません」
「もう、済んだことですし、リリアーヌ様はあれから、いかがされましたか?」
「近所に住む平民と、ケロっとして結婚し、曾曾孫が成人したあたりでしょうか?」
「さようでございますか?それで、ご用件というのは」
「聖女様とそのご家族様に、ムーラン国に移住していただけないかと思いまして」
「それはできないご相談ですわ。ご存知の通り、聖女様は1000年に一度しか存在しえない。ですが、人間の寿命は100年を切っています。残り900年を聖女様なしでは、人々は暮らしていけません。そこで神の思し召し、つまりメッセージを伝えるために、初代の聖女が転生を繰り返して、存在しているというわけです。前世のわたくしは、シドニー国に王妃として、存在してしまいましたから、今世は、まったく別の国で活躍しなければなりません。ですから、その儀ばかりは、何卒、ご容赦くださいませ」
「しかしながら偽聖女様を輩出したという悪いイメージを払しょくするには、聖女様にこの国を統治していただきたいのです」
「?……つまりは、わたくしに、この国を下さるということでよろしゅうございますの?それは……少し……、確かに前世も、その前の前々世も、王妃としての役目は果たしましたが……」
「ですから、聖女様が気に入った男性と結婚して、その方を王配として迎えれば、問題がないでしょう?」
「え……と、王配候補のお心当たりの方が……?」
「滅相もございません。むしろ、聖女様にはこんな小国の王を押し付けるような格好になり、すまないと思っておる次第でございますから、できればムーラン国を聖女国としていただきたいだけなのです。私と妻の間には、子がおりませぬ。このままでは、この国は没落してしまいます。できれば、ご家族の方ともども、この王家に入っていただきたいのです」
ということは、父がムーランの国王になるってこと?これはさすがに……。父を見ると真剣に考えこんでいる様子。ひょっとして、やる気ある?
もしそうならば、ここで一存で断ってはいけないような気もする。
「今ここで、お返事をするわけには行きません。家へ持ち帰り、母やカルダンの国とも相談してみないとは、なんとも言えないというのが現状でございます。領地の領民をどうするかも含めて、考えたいと思います」
「もちろん、お返事はよく考えられてからで、けっこうです。急ぎませんが、なんせ私も年なもので、この老いぼれがいつまで生きているか、わかりませんので、なるべく早くお返事してくださるとありがたいです」
急な話で、驚いて、しまって、その日、シドニー国へ寄らずにまっすぐ帰宅した。
その夜、母を交えて、家族会議が開かれる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
800
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる