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1.婚約破棄
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ある夜の王宮でのパーティでのこと。
聖女キャロラインは、婚約者であるジークフリク王太子にエスコートされず、壁の花となっていた。
キャロラインは、孤児だったのを教会の司祭に拾われ育てられた。15歳の時、聖女認定儀式の際、数多の聖女候補の中からキャロラインだけが、聖女に選ばれた。
以来、王太子の婚約者となり、王宮に住み、王国の結界を維持し続けている。
王国の結界を維持するには、聖女の膨大な魔力が必要で王太子と結婚し、国母とならなければならないからだ。
王太子は、25歳だった。その下に第2皇子が19歳、第3皇子が17歳と続く。
キャロラインは、教会から王太子と婚約者に、と言われ歳の離れた相手でも否応なく承諾した。王太子とは、まったく価値観が異なり、話が合わず嫌いだった。
周りの貴族が次々頭を下げていたので、気が付いたらジークフリク王太子殿下が、目の前にいらっしゃった。
「聖女キャロライン、結界を維持すると言いながらお前は、何もしていないではないか。お前との婚約を破棄させてもらおう。お前のような、どこの馬の骨とも知れぬ女を聖女とは、片腹痛いわ。即刻、この王宮から出ていけ!」
「わかりました。」そう言って、キャロラインは、荷物をまとめて王宮を出た。
「まったく、あの税金泥棒が!最近、教会の奴らが力を持ちすぎて、王国の政治に口出しするから、目障りだったのだ。キャロラインがいなくとも、結界は維持できる。新しい聖女を雇えばいい。」とほくそ笑んでいた。
王宮を出たキャロラインは、行く当てがないにもかかわらず、心は晴れ晴れしていた。
「だって、あの嫌いな王太子との結婚がなくなったんだもん♪大っ嫌い。偉そうに、いつも上から目線で。」
「とりあえず、国境を目指すとしますか、あ!その前に、育ててくれた司祭様に、ご挨拶しなければ。」
教会に向かって、歩き出した。
教会の前では、司祭様が待っていてくださった。
「王太子殿下とのことを聞いたよ。嘆かわしいことだが、私には、どうしてやることもできない、すまないキャロライン。」
司祭様は、あるだけの金貨を袋に入れて渡してくれた。
「これだけあれば、隣国まで、馬車で行けるだろう。気を付けて行っておいで。」
「ありがとうございます。司祭様。結界のこと、宜しくお願いします。」
「いや。この国は、もう終わりだ。キャロライン以外の誰が結界を維持できるというのだ。王太子殿下は、誰か他の聖女を雇う、と申されているが、雇われるような聖女に、この国の結界維持は、神がお許しにならないだろう。キャロラインは、神から選ばれし聖女だ。すべては、神の御心のままに。」
「司祭様も、お元気で。さようなら。」
こうして、キャロラインは、隣国行きの馬車に乗った。
馬車の中では、小さい子供を連れた母子の姿があった。その子供が熱を出したみたいで、母親がオロオロしている。キャロラインは、その子に聖魔法を使って、治した。みるみる熱が下がり、顔色が良くたった。その母子をはじめとして、馬車に乗り合わせた乗客から、「聖女様」と拝まれた。
国境を越えました。ということで、無事(?)結界が消滅しました。
馬車の中から、結界が消えていくのが、うっすら見える。
「あのバカ男、私が何もしていない税金泥棒なんて、言っていたけどけっこうたいへんだったのよぉ。どうせ言っても信じてくれないだろうけど。」
その頃、王宮では、国王陛下が、ご立腹されている
「なに!ジークフリクが聖女様を追い出したとは、まことか?」
「なんのために、教会に手を回し聖女様と婚約させたとおもっていたんだ。」
「教会が発言力を強めてきたとの警戒心から、兄上も聖女様を追い出したのかと、思います。」第2皇子がいう。
「いくらなんでも聖女様を追い出すのは、やりすぎです。追い出すなら、教会を追い出せばいい。」第3皇子が言う。
国王陛下が、
「結界維持は、神から選ばれたキャロライン様でないとできない。ジークフリクは流れ者の聖女を雇うと言っているが、そんな聖女では、結界維持ができない。聖女キャロライン様がいらっしゃらなければ、この国は亡ぶ。ゆくゆくは、王太子を廃嫡せざるを得なくなるだろう。お前たち、聖女様を連れ戻せ、どちらか連れ戻したほうに、王位継承権を渡す。」
第2王子、第3王子が
「はっ。お任せください。」と慌ただしく、部屋を出て行った。
第3王子が
「兄上様には、負けませぬ。」
第2皇子は、
「せいぜい頑張ってくれたまえ。」と余裕だ。
聖女キャロラインは、婚約者であるジークフリク王太子にエスコートされず、壁の花となっていた。
キャロラインは、孤児だったのを教会の司祭に拾われ育てられた。15歳の時、聖女認定儀式の際、数多の聖女候補の中からキャロラインだけが、聖女に選ばれた。
以来、王太子の婚約者となり、王宮に住み、王国の結界を維持し続けている。
王国の結界を維持するには、聖女の膨大な魔力が必要で王太子と結婚し、国母とならなければならないからだ。
王太子は、25歳だった。その下に第2皇子が19歳、第3皇子が17歳と続く。
キャロラインは、教会から王太子と婚約者に、と言われ歳の離れた相手でも否応なく承諾した。王太子とは、まったく価値観が異なり、話が合わず嫌いだった。
周りの貴族が次々頭を下げていたので、気が付いたらジークフリク王太子殿下が、目の前にいらっしゃった。
「聖女キャロライン、結界を維持すると言いながらお前は、何もしていないではないか。お前との婚約を破棄させてもらおう。お前のような、どこの馬の骨とも知れぬ女を聖女とは、片腹痛いわ。即刻、この王宮から出ていけ!」
「わかりました。」そう言って、キャロラインは、荷物をまとめて王宮を出た。
「まったく、あの税金泥棒が!最近、教会の奴らが力を持ちすぎて、王国の政治に口出しするから、目障りだったのだ。キャロラインがいなくとも、結界は維持できる。新しい聖女を雇えばいい。」とほくそ笑んでいた。
王宮を出たキャロラインは、行く当てがないにもかかわらず、心は晴れ晴れしていた。
「だって、あの嫌いな王太子との結婚がなくなったんだもん♪大っ嫌い。偉そうに、いつも上から目線で。」
「とりあえず、国境を目指すとしますか、あ!その前に、育ててくれた司祭様に、ご挨拶しなければ。」
教会に向かって、歩き出した。
教会の前では、司祭様が待っていてくださった。
「王太子殿下とのことを聞いたよ。嘆かわしいことだが、私には、どうしてやることもできない、すまないキャロライン。」
司祭様は、あるだけの金貨を袋に入れて渡してくれた。
「これだけあれば、隣国まで、馬車で行けるだろう。気を付けて行っておいで。」
「ありがとうございます。司祭様。結界のこと、宜しくお願いします。」
「いや。この国は、もう終わりだ。キャロライン以外の誰が結界を維持できるというのだ。王太子殿下は、誰か他の聖女を雇う、と申されているが、雇われるような聖女に、この国の結界維持は、神がお許しにならないだろう。キャロラインは、神から選ばれし聖女だ。すべては、神の御心のままに。」
「司祭様も、お元気で。さようなら。」
こうして、キャロラインは、隣国行きの馬車に乗った。
馬車の中では、小さい子供を連れた母子の姿があった。その子供が熱を出したみたいで、母親がオロオロしている。キャロラインは、その子に聖魔法を使って、治した。みるみる熱が下がり、顔色が良くたった。その母子をはじめとして、馬車に乗り合わせた乗客から、「聖女様」と拝まれた。
国境を越えました。ということで、無事(?)結界が消滅しました。
馬車の中から、結界が消えていくのが、うっすら見える。
「あのバカ男、私が何もしていない税金泥棒なんて、言っていたけどけっこうたいへんだったのよぉ。どうせ言っても信じてくれないだろうけど。」
その頃、王宮では、国王陛下が、ご立腹されている
「なに!ジークフリクが聖女様を追い出したとは、まことか?」
「なんのために、教会に手を回し聖女様と婚約させたとおもっていたんだ。」
「教会が発言力を強めてきたとの警戒心から、兄上も聖女様を追い出したのかと、思います。」第2皇子がいう。
「いくらなんでも聖女様を追い出すのは、やりすぎです。追い出すなら、教会を追い出せばいい。」第3皇子が言う。
国王陛下が、
「結界維持は、神から選ばれたキャロライン様でないとできない。ジークフリクは流れ者の聖女を雇うと言っているが、そんな聖女では、結界維持ができない。聖女キャロライン様がいらっしゃらなければ、この国は亡ぶ。ゆくゆくは、王太子を廃嫡せざるを得なくなるだろう。お前たち、聖女様を連れ戻せ、どちらか連れ戻したほうに、王位継承権を渡す。」
第2王子、第3王子が
「はっ。お任せください。」と慌ただしく、部屋を出て行った。
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「兄上様には、負けませぬ。」
第2皇子は、
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