契約婚から玉の輿婚~前世喪女が朝チュン

青の雀

文字の大きさ
4 / 15

4

しおりを挟む
 わたくしはこの結婚で幸せを掴むつもりだったのに、実際のバトラーとの結婚が生易しいものではなかった。

 結婚して王妃となったわたくしは、後宮に放り込まれたんだけど、ここが……なんといえばいいか前世の大奥のような所と言えばいいのか?

 いや、大奥はまだ正妻に対して、というか正妻のために最優先で傅いてくれるのだが、ここ後宮は王妃といえども、自分たちのライバルが一人増えたような感覚でしかない。

 要するに周りは皆、バトラーと寝たくて仕方がない欲求不満の女の巣だったわけで、王妃といえども新入り扱いは避けられなかったのだ。

 王妃と言う立場でありながら、嫁ぐ前の身分が大きく関わる。

 もし首尾よく国王のお手付きとなり男児を儲けたとしても、生母の身分が低いと王位継承権もままならないらしい。

 バーバラは伯爵令嬢だったので、まぁまぁと言ったところだが、ハーバネスに嫁いだ男爵令嬢のリリアーヌだったか?あの女が、後宮へ来たら確実にイジメられ、もし男児を産んでも取り上げられ折檻死させられるか、その男児はもろとも闇から闇へ。が日常茶飯事に行われる。

 思えば、なんて恐ろしいところへ来たものだと思う。こんな話いくら聞いていないと言っても通じない。

 後宮の女たちはそれほど必死なのだ。中には、自ら進んで、後宮の女官になる試験を受けてなったものもいるが、たいていは貴族の令嬢で親によもや側室になれるかも?という因果を含められて来ている娘たちがほとんどなのである。

 もし、側室になり男児でも産めば、どんな栄耀栄華でも望める立場になる。

 でも、それに厄介なのが一人いる。

 先の大戦で、敗戦国の王女が人質として来ているのだ。先王の弟殿下は負けた際に、自分の娘をバトラーの嫁候補として、後宮に送り付けた。

 それって、どう考えても従姉弟だというのに。本当の王女かどうかも実は怪しいらしい。王女の身分なら、処刑されないと思って、ひょっとすればバトラーの寝首を掻く刺客かもしれない。

 だから、バトラーは後宮に近づかない。

 それでいまだに初夜が済ませていないのだ。

 バトラーは結婚前に「結婚してから、ゆっくり恋愛して行けばいいではないか?」恋愛してから結婚か、結婚してから恋愛か、順序が違うだけで長い人生を考えれば、どうってことないというものがバトラーの考え方であったはず。それなのに、国王夫妻としてまだ契りを交わしていないというのは、どこか落ち着かない。

 まぁ、あの夜は例外だったけど。

 約束の2年なんて、あっという間に過ぎてしまう。焦るけど、こればかりはどうにもならない。

 外国の賓客があるときなどは表へ行くこともあるが、それは公務優先で、私的な会話は口を噤む。

 なぜかバトラーも後宮の話になると、うんざりした顔をするから話しづらい。でも2年経てば、金貨100000枚もらって、おさらばできるというのも悪くはない。

 普通は、国王と一夜でも共にすれば、絶対に離婚なんてできず、後宮ではなく違う別宮に移されて、まぁ一種の貴族牢のようなところで一生幽閉されるものらしい。

 でもバーバラの場合は、羊紙に王の刻印までしてもらった契約書があるから、大丈夫だろう。これを表ざたにすれば、たぶん離婚できるはず。

 結婚当初の2年前ならいざ知らず、もう今は名前だけの形式上の王妃だけなんだから、残すところ、あと3か月。情もない。おとなしく待っていれば金貨がもらえ、一生遊んで暮らせる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。 ※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。

悪役令嬢は名女優 〜そんな小芝居で私を断罪できるとでも?〜

本見りん
恋愛
 元女優のこの私は、婚約者の王子の三文芝居に我慢が出来なくてよ!  いきなり始まった婚約破棄劇の真っ最中に蘇った前世の記憶。  『婚約破棄』? 『私がそこの令嬢をいじめた』? ……何を言っているのかしら? そんな三流の小芝居でこの私を陥れようだなんて! 前世名女優と呼ばれたこの私が本物の演技というものを見せて差し上げますわ!  王宮でのパーティーでいきなり『婚約破棄』を言い出した婚約者のファビアン王子に、前世は大女優だった侯爵令嬢セシリアが演技で反撃させていただきます!   『小説家になろう』様にも投稿しています。

処理中です...