12 / 15
12
しおりを挟む
あの教会は、バーバラの聖女魔法によりサン・ピエトロ教会として生まれ変わり、宿泊施設兼病院として機能するようになったことを見届けて、再び馬車で移動する。
「それにしてもバービーをこの視察旅行へ連れてきたことは正解だったな。みんな笑顔になって、喜んで幸せになってくれる。これも聖女様効果ってやつかな?」
言われてみればその通り。
聖女様だって知らなかった時でも、この不思議な能力を誰も迷惑がっていない。
「それに何よりありがたいのは、新しい産業を生み出してくれたこと。サマリー領では入浴前の菓子に、入浴中のドリンク、湯上りのビール。それにあのユカタ、ドテラを作る衣装の工房。この前の教会では、病院と宿泊施設。バービーが教えてくれたことにより、それは産業として民が潤う。民が潤えば、領主が潤い、やがて王国も潤うというものだ。」
「そんな……大げさな。」
「いや大げさなことではない。君は名実ともに王妃となったんだよ。」
へ?それって契約更新するって、言われてない?いやいや。そんなはずはない!だったらなぜ金貨10万枚もくれるの?
あれは、契約満期前にわたくしを自由にしたいからではないの?愛されていないはず。お金で買われたのだからと黙ってカラダを開いただけ。元より愛など存在しない……はず。
なぜ?なぜ?頭の中の思考回路を必死に繋ぐ。やっぱり答えは出ない。もういいや。なんでも。時が満ちれば、おのずと答えが出るはずなのだから。
「ククク。何度見てもバービーの百面相は面白いな。案ずるな。バービーは立派な王妃だ。」
え?百面相?ウソ!?
「愛しているよ。バービーこっちへ座れ。
「無理です。」
そのまま馬車は進む。
陛下が目を閉じられたので、バーバラも目を閉じうつらうつらしている。急に馬車の窓から光が差し込んできて、目を開けると海が広がっている。
「わぁ!海!」
その声で陛下も起きられたみたい。
「もうすぐカンダールに着く。」
カンダールと言えば、子爵様で大きな商会を経営していらっしゃるところ。
やがて馬車は立派な建物の前に泊る。
商会主の子爵だろうか、揉み手ニコニコ愛想が良い男がいる。
「ようこそおいでくださいました陛下。それにお美しい聖女様でいらっしゃる妃殿下も、お待ち申し上げておりました。」
げ!もうここまでバーバラが聖女であることがバレている。
「出迎え大儀である。」
どうやら商会の中が今夜のお宿なのかも?また、陛下がお預けになるって機嫌悪くなってしまうけど、わたくしのせいではありませんからねっ!
商会の中にある客間に通される。
しばらくお茶を飲んでから、陛下はこの領内の視察へ行かれる。今日はお留守番の予定だったんだけど、サン・ピエトロ教会の噂で、バーバラが聖女様と言うことになったので、聖女様もぜひご一緒に。と言う話になる。
めんどくさい。
聖女だってわかった途端にこの待遇、だからあれほど水晶玉判定はイヤだって言ったのに。
別に不思議な能力の正体なんて、どうでもよかったのよ。ただ便利だと言うだけだったんだから。
さっさと行って、さっさと終わらせよう。
勢い込んで出たものの、聖女の仕事は祝福を与えるだけでなくけが人病人の治療、魔物退治と多岐にわたっていることがわかる。
そんなのできっこないわよ。だってやったことがないんだもん。誰も教えてくれなかったから。
とにかく祈ればいいなら、祈るけど……?
あとでインチキなんて、言わないでよ。内心ブツブツ文句を言いながら祈る。本当にこんなので効果があるのかどうかもわからない。
とにかくすべての予定をこなし、商会へ戻る。お部屋で侍女が淹れてくれたお茶を飲んでいたら、どうも誰かが走り回っているような音が聞こえる。
「何かございましたの?」
侍女が護衛に聞き、護衛が商会主に聞く。
「いやぁ、王妃様の御寛ぎのところ恐れ入ります。本日国王ご夫妻歓迎の宴に出す魚を獲りに漁を出たものがいまだ戻らず、どうしたものかと案じております。それに今夜は嵐になるという占いが出ておりまして、既に満潮を迎えております。」
「バーバラ今の話を聞いて何かできることはあるか?」
「ないこともないですわね。」
「なんだ。言ってみろ。」
「今日、聖女の仕事をした時から気になっていたのですが、港に灯台がなかったこと。」
「灯台?それはなんだ?どういうものか説明してくれ。」
前世は何処の港にもあった灯台の役目をかいつまんで説明する。
「我が国にはそう言った海の道しるべはないな。よし早速作ろう。手配させるが、今日すぐにはできないかな?」
「何かで代用することは可能です。わたくしを小高い丘の上に案内してください。」
「よし、俺も行こう。バービーに何かあれば困るからな。」
それから商会関係者と小高い丘へ行き、そこにこの間の古びた教会を出す。それから教会の前でやぐらを組んで火を焚いてもらう。ちょうどキャンプファイヤーのようなものを想像すると出てきたので、それで火を焚く。
教会の金を鳴らすことで気づいてくれるかもしれない。
それだけでは不十分なので、バーバラは塔の階段を駆け上がる。
この時代は電気がまだないから、サーチライトを出しても?無駄と思ったけどキャンピングカーなら発電できる。
だからあの時、出さなかったキャンピングカーを今、出す。ヘッドライトを灯台のライトに見立てる作戦。
海に正面をヘッドライト、少し右側にもサーチライト、左側にもサーチライトを設置する。くるくる回るカバーがないので、つけっぱなし光っぱなしにした。
よくよく考えれば、灯台そのものを買うことさえできたかもしれない。まぁ、でも教会が余っていたので、とっさにそこまで考える余裕はなかったのだ。
「それにしてもバービーをこの視察旅行へ連れてきたことは正解だったな。みんな笑顔になって、喜んで幸せになってくれる。これも聖女様効果ってやつかな?」
言われてみればその通り。
聖女様だって知らなかった時でも、この不思議な能力を誰も迷惑がっていない。
「それに何よりありがたいのは、新しい産業を生み出してくれたこと。サマリー領では入浴前の菓子に、入浴中のドリンク、湯上りのビール。それにあのユカタ、ドテラを作る衣装の工房。この前の教会では、病院と宿泊施設。バービーが教えてくれたことにより、それは産業として民が潤う。民が潤えば、領主が潤い、やがて王国も潤うというものだ。」
「そんな……大げさな。」
「いや大げさなことではない。君は名実ともに王妃となったんだよ。」
へ?それって契約更新するって、言われてない?いやいや。そんなはずはない!だったらなぜ金貨10万枚もくれるの?
あれは、契約満期前にわたくしを自由にしたいからではないの?愛されていないはず。お金で買われたのだからと黙ってカラダを開いただけ。元より愛など存在しない……はず。
なぜ?なぜ?頭の中の思考回路を必死に繋ぐ。やっぱり答えは出ない。もういいや。なんでも。時が満ちれば、おのずと答えが出るはずなのだから。
「ククク。何度見てもバービーの百面相は面白いな。案ずるな。バービーは立派な王妃だ。」
え?百面相?ウソ!?
「愛しているよ。バービーこっちへ座れ。
「無理です。」
そのまま馬車は進む。
陛下が目を閉じられたので、バーバラも目を閉じうつらうつらしている。急に馬車の窓から光が差し込んできて、目を開けると海が広がっている。
「わぁ!海!」
その声で陛下も起きられたみたい。
「もうすぐカンダールに着く。」
カンダールと言えば、子爵様で大きな商会を経営していらっしゃるところ。
やがて馬車は立派な建物の前に泊る。
商会主の子爵だろうか、揉み手ニコニコ愛想が良い男がいる。
「ようこそおいでくださいました陛下。それにお美しい聖女様でいらっしゃる妃殿下も、お待ち申し上げておりました。」
げ!もうここまでバーバラが聖女であることがバレている。
「出迎え大儀である。」
どうやら商会の中が今夜のお宿なのかも?また、陛下がお預けになるって機嫌悪くなってしまうけど、わたくしのせいではありませんからねっ!
商会の中にある客間に通される。
しばらくお茶を飲んでから、陛下はこの領内の視察へ行かれる。今日はお留守番の予定だったんだけど、サン・ピエトロ教会の噂で、バーバラが聖女様と言うことになったので、聖女様もぜひご一緒に。と言う話になる。
めんどくさい。
聖女だってわかった途端にこの待遇、だからあれほど水晶玉判定はイヤだって言ったのに。
別に不思議な能力の正体なんて、どうでもよかったのよ。ただ便利だと言うだけだったんだから。
さっさと行って、さっさと終わらせよう。
勢い込んで出たものの、聖女の仕事は祝福を与えるだけでなくけが人病人の治療、魔物退治と多岐にわたっていることがわかる。
そんなのできっこないわよ。だってやったことがないんだもん。誰も教えてくれなかったから。
とにかく祈ればいいなら、祈るけど……?
あとでインチキなんて、言わないでよ。内心ブツブツ文句を言いながら祈る。本当にこんなので効果があるのかどうかもわからない。
とにかくすべての予定をこなし、商会へ戻る。お部屋で侍女が淹れてくれたお茶を飲んでいたら、どうも誰かが走り回っているような音が聞こえる。
「何かございましたの?」
侍女が護衛に聞き、護衛が商会主に聞く。
「いやぁ、王妃様の御寛ぎのところ恐れ入ります。本日国王ご夫妻歓迎の宴に出す魚を獲りに漁を出たものがいまだ戻らず、どうしたものかと案じております。それに今夜は嵐になるという占いが出ておりまして、既に満潮を迎えております。」
「バーバラ今の話を聞いて何かできることはあるか?」
「ないこともないですわね。」
「なんだ。言ってみろ。」
「今日、聖女の仕事をした時から気になっていたのですが、港に灯台がなかったこと。」
「灯台?それはなんだ?どういうものか説明してくれ。」
前世は何処の港にもあった灯台の役目をかいつまんで説明する。
「我が国にはそう言った海の道しるべはないな。よし早速作ろう。手配させるが、今日すぐにはできないかな?」
「何かで代用することは可能です。わたくしを小高い丘の上に案内してください。」
「よし、俺も行こう。バービーに何かあれば困るからな。」
それから商会関係者と小高い丘へ行き、そこにこの間の古びた教会を出す。それから教会の前でやぐらを組んで火を焚いてもらう。ちょうどキャンプファイヤーのようなものを想像すると出てきたので、それで火を焚く。
教会の金を鳴らすことで気づいてくれるかもしれない。
それだけでは不十分なので、バーバラは塔の階段を駆け上がる。
この時代は電気がまだないから、サーチライトを出しても?無駄と思ったけどキャンピングカーなら発電できる。
だからあの時、出さなかったキャンピングカーを今、出す。ヘッドライトを灯台のライトに見立てる作戦。
海に正面をヘッドライト、少し右側にもサーチライト、左側にもサーチライトを設置する。くるくる回るカバーがないので、つけっぱなし光っぱなしにした。
よくよく考えれば、灯台そのものを買うことさえできたかもしれない。まぁ、でも教会が余っていたので、とっさにそこまで考える余裕はなかったのだ。
10
あなたにおすすめの小説
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る
白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。
伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。
「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、
その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。
失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。
グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。
あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___
異世界恋愛:短編☆(全13話)
※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
悪役令嬢は名女優 〜そんな小芝居で私を断罪できるとでも?〜
本見りん
恋愛
元女優のこの私は、婚約者の王子の三文芝居に我慢が出来なくてよ!
いきなり始まった婚約破棄劇の真っ最中に蘇った前世の記憶。
『婚約破棄』? 『私がそこの令嬢をいじめた』? ……何を言っているのかしら? そんな三流の小芝居でこの私を陥れようだなんて! 前世名女優と呼ばれたこの私が本物の演技というものを見せて差し上げますわ!
王宮でのパーティーでいきなり『婚約破棄』を言い出した婚約者のファビアン王子に、前世は大女優だった侯爵令嬢セシリアが演技で反撃させていただきます!
『小説家になろう』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる