13 / 15
13
しおりを挟む
バーバラが教会を灯台代わりにしたおかげで、無事、漁に出ていた船が戻ってこれたのはいいけど、港は寄港する船で一杯になった。
あの灯台の明かりを頼りに遭難していた難破船が、押し寄せたのだ。
結局その日は歓迎会どころか、多国籍の船員と共に朝まで飲み明かすことになってしまう。
「それにしてもあの嵐の中であの光を見つけた時は、あの時程、助かる!を実感したことはない。」
「んだ。んだ。コンパスもアテにならないし、ありがたかった女神様の光に見えたべ。」
ここでもまた「女神様」呼びにへこむバーバラ。
この世界の人って、よっぽど女神様が好きなのかしらね。
そんなこんなで、あれからいろいろな貴族の領地を回ってそろそろ終わりが近づく。
「あの……陛下、お話しがあるのですが。」
「なんだ?言ってみろ。」
「もうすぐ契約期間が満了でございます。わたくしはこの視察旅行が済めば、いったん後宮へ帰らず、実家のメルセデス伯爵邸に身を寄せたいと存じます。もちろん契約期間が残っている間は、王妃としての務めを全うしとうございます。住まいが後宮から伯爵邸に代わるだけでございますれば、問題はないと存じ上げますが?」
「な、なんだと!それではバーバラは本当に2年経てば、俺と離縁するつもりなのか?」
「はい。これからは自由に生きたいと思っています。」
「まぁ約束だからな。あいわかった。だが、後宮はぶっ潰すから、王妃としての期間がある場合は、これからは王城で暮らしてくれ。」
「残り1か月間をでございますか?」
バーバラはその条件を渋々ながらも承知する。1か月間辛抱すれば、晴れて自由の身となることは間違いないから。
バトラーは王都に戻るや否や、後宮を解体すべく動いた。後宮にはあのニセモノ王女がいる。あのニセモノさえ始末すれば、後はただの烏合の衆、家臣に下賜すればいいだけの話。
バーバラが後宮を出たいと言い出したことは、バトラーにとっては幸いなことだったのだ。なぜなら、もしバーバラを人質にされでもしたら思い切ったことができなくなる。
まぁ今は、バーバラは聖女様であるから、聖女魔法でなんとか切り抜けることができるだろうが。
王城でのバーバラのお部屋は、バトラーの部屋の隣をあてがわれる。廊下を回らなくても扉一つで、すぐ隣に行ける構造になっている。
バーバラの部屋からバトラーの部屋へは行けるが、バトラーの部屋からバーバラの部屋へ行くことは難しい。なぜならバーバラの部屋からカギをかけることができる。
夜を拒否したいときは、バーバラが決定権を持つようになっている。
だから最後の一か月間は、バーバラに取りすこぶる快適だったわけで、そのかわりバトラーの窶れぶりに気が付くのが遅れたことは少々心残りがある。
ニセモノ王女を何とか帰国させようと躍起になっていたのだ。
バトラーの幼い時の記憶だけでは、ニセモノと断じることができない。
ニセモノ王女は王女で、この9年間事あるごとにバトラーに毒を飲ませ続けていたのだ。
そう。
父国王が毒殺された時と同じ毒で。
明日でちょうど契約満了の日と言う時、バーバラが懐妊していることがわかる。
ここのところ、少し体調がすぐれなかったので、どうせならと、侍医に診てもらって判明したのだ。
王城内は一気にお祝いムードに包まれる。
あと半年ほど契約を延ばしてもらう?
でも生まれてきた子供は確実に王家に取り上げられる。そんなことは絶対イヤだ。
どうしよう。どうしよう。喜ばしいことだけど、素直に喜べない。
そう思っていたら、バトラー急死の知らせがもたらされ、怒涛の人生の幕が切って落とされた。
あの灯台の明かりを頼りに遭難していた難破船が、押し寄せたのだ。
結局その日は歓迎会どころか、多国籍の船員と共に朝まで飲み明かすことになってしまう。
「それにしてもあの嵐の中であの光を見つけた時は、あの時程、助かる!を実感したことはない。」
「んだ。んだ。コンパスもアテにならないし、ありがたかった女神様の光に見えたべ。」
ここでもまた「女神様」呼びにへこむバーバラ。
この世界の人って、よっぽど女神様が好きなのかしらね。
そんなこんなで、あれからいろいろな貴族の領地を回ってそろそろ終わりが近づく。
「あの……陛下、お話しがあるのですが。」
「なんだ?言ってみろ。」
「もうすぐ契約期間が満了でございます。わたくしはこの視察旅行が済めば、いったん後宮へ帰らず、実家のメルセデス伯爵邸に身を寄せたいと存じます。もちろん契約期間が残っている間は、王妃としての務めを全うしとうございます。住まいが後宮から伯爵邸に代わるだけでございますれば、問題はないと存じ上げますが?」
「な、なんだと!それではバーバラは本当に2年経てば、俺と離縁するつもりなのか?」
「はい。これからは自由に生きたいと思っています。」
「まぁ約束だからな。あいわかった。だが、後宮はぶっ潰すから、王妃としての期間がある場合は、これからは王城で暮らしてくれ。」
「残り1か月間をでございますか?」
バーバラはその条件を渋々ながらも承知する。1か月間辛抱すれば、晴れて自由の身となることは間違いないから。
バトラーは王都に戻るや否や、後宮を解体すべく動いた。後宮にはあのニセモノ王女がいる。あのニセモノさえ始末すれば、後はただの烏合の衆、家臣に下賜すればいいだけの話。
バーバラが後宮を出たいと言い出したことは、バトラーにとっては幸いなことだったのだ。なぜなら、もしバーバラを人質にされでもしたら思い切ったことができなくなる。
まぁ今は、バーバラは聖女様であるから、聖女魔法でなんとか切り抜けることができるだろうが。
王城でのバーバラのお部屋は、バトラーの部屋の隣をあてがわれる。廊下を回らなくても扉一つで、すぐ隣に行ける構造になっている。
バーバラの部屋からバトラーの部屋へは行けるが、バトラーの部屋からバーバラの部屋へ行くことは難しい。なぜならバーバラの部屋からカギをかけることができる。
夜を拒否したいときは、バーバラが決定権を持つようになっている。
だから最後の一か月間は、バーバラに取りすこぶる快適だったわけで、そのかわりバトラーの窶れぶりに気が付くのが遅れたことは少々心残りがある。
ニセモノ王女を何とか帰国させようと躍起になっていたのだ。
バトラーの幼い時の記憶だけでは、ニセモノと断じることができない。
ニセモノ王女は王女で、この9年間事あるごとにバトラーに毒を飲ませ続けていたのだ。
そう。
父国王が毒殺された時と同じ毒で。
明日でちょうど契約満了の日と言う時、バーバラが懐妊していることがわかる。
ここのところ、少し体調がすぐれなかったので、どうせならと、侍医に診てもらって判明したのだ。
王城内は一気にお祝いムードに包まれる。
あと半年ほど契約を延ばしてもらう?
でも生まれてきた子供は確実に王家に取り上げられる。そんなことは絶対イヤだ。
どうしよう。どうしよう。喜ばしいことだけど、素直に喜べない。
そう思っていたら、バトラー急死の知らせがもたらされ、怒涛の人生の幕が切って落とされた。
10
あなたにおすすめの小説
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
やさしい・悪役令嬢
きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」
と、親切に忠告してあげただけだった。
それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。
友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。
あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。
美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。
【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る
白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。
伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。
「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、
その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。
失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。
グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。
あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___
異世界恋愛:短編☆(全13話)
※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。
悪役令嬢は名女優 〜そんな小芝居で私を断罪できるとでも?〜
本見りん
恋愛
元女優のこの私は、婚約者の王子の三文芝居に我慢が出来なくてよ!
いきなり始まった婚約破棄劇の真っ最中に蘇った前世の記憶。
『婚約破棄』? 『私がそこの令嬢をいじめた』? ……何を言っているのかしら? そんな三流の小芝居でこの私を陥れようだなんて! 前世名女優と呼ばれたこの私が本物の演技というものを見せて差し上げますわ!
王宮でのパーティーでいきなり『婚約破棄』を言い出した婚約者のファビアン王子に、前世は大女優だった侯爵令嬢セシリアが演技で反撃させていただきます!
『小説家になろう』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる