契約婚から玉の輿婚~前世喪女が朝チュン

青の雀

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 バーバラが教会を灯台代わりにしたおかげで、無事、漁に出ていた船が戻ってこれたのはいいけど、港は寄港する船で一杯になった。

 あの灯台の明かりを頼りに遭難していた難破船が、押し寄せたのだ。

 結局その日は歓迎会どころか、多国籍の船員と共に朝まで飲み明かすことになってしまう。

 「それにしてもあの嵐の中であの光を見つけた時は、あの時程、助かる!を実感したことはない。」

 「んだ。んだ。コンパスもアテにならないし、ありがたかった女神様の光に見えたべ。」

 ここでもまた「女神様」呼びにへこむバーバラ。

 この世界の人って、よっぽど女神様が好きなのかしらね。

 そんなこんなで、あれからいろいろな貴族の領地を回ってそろそろ終わりが近づく。

 「あの……陛下、お話しがあるのですが。」

 「なんだ?言ってみろ。」

 「もうすぐ契約期間が満了でございます。わたくしはこの視察旅行が済めば、いったん後宮へ帰らず、実家のメルセデス伯爵邸に身を寄せたいと存じます。もちろん契約期間が残っている間は、王妃としての務めを全うしとうございます。住まいが後宮から伯爵邸に代わるだけでございますれば、問題はないと存じ上げますが?」

 「な、なんだと!それではバーバラは本当に2年経てば、俺と離縁するつもりなのか?」

 「はい。これからは自由に生きたいと思っています。」

 「まぁ約束だからな。あいわかった。だが、後宮はぶっ潰すから、王妃としての期間がある場合は、これからは王城で暮らしてくれ。」

 「残り1か月間をでございますか?」

 バーバラはその条件を渋々ながらも承知する。1か月間辛抱すれば、晴れて自由の身となることは間違いないから。

 バトラーは王都に戻るや否や、後宮を解体すべく動いた。後宮にはあのニセモノ王女がいる。あのニセモノさえ始末すれば、後はただの烏合の衆、家臣に下賜すればいいだけの話。

 バーバラが後宮を出たいと言い出したことは、バトラーにとっては幸いなことだったのだ。なぜなら、もしバーバラを人質にされでもしたら思い切ったことができなくなる。

 まぁ今は、バーバラは聖女様であるから、聖女魔法でなんとか切り抜けることができるだろうが。

 王城でのバーバラのお部屋は、バトラーの部屋の隣をあてがわれる。廊下を回らなくても扉一つで、すぐ隣に行ける構造になっている。

 バーバラの部屋からバトラーの部屋へは行けるが、バトラーの部屋からバーバラの部屋へ行くことは難しい。なぜならバーバラの部屋からカギをかけることができる。

 夜を拒否したいときは、バーバラが決定権を持つようになっている。

 だから最後の一か月間は、バーバラに取りすこぶる快適だったわけで、そのかわりバトラーの窶れぶりに気が付くのが遅れたことは少々心残りがある。

 ニセモノ王女を何とか帰国させようと躍起になっていたのだ。

 バトラーの幼い時の記憶だけでは、ニセモノと断じることができない。

 ニセモノ王女は王女で、この9年間事あるごとにバトラーに毒を飲ませ続けていたのだ。

 そう。

 父国王が毒殺された時と同じ毒で。

 明日でちょうど契約満了の日と言う時、バーバラが懐妊していることがわかる。

 ここのところ、少し体調がすぐれなかったので、どうせならと、侍医に診てもらって判明したのだ。

 王城内は一気にお祝いムードに包まれる。

 あと半年ほど契約を延ばしてもらう?

 でも生まれてきた子供は確実に王家に取り上げられる。そんなことは絶対イヤだ。

 どうしよう。どうしよう。喜ばしいことだけど、素直に喜べない。

 そう思っていたら、バトラー急死の知らせがもたらされ、怒涛の人生の幕が切って落とされた。
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