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8.大居夫妻視点
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大居明彦・恵理子23歳、大居宣伝社社長の息子夫妻でともに、早稲田義塾大学卒業であるが、就職経験がなく、親の会社を手伝っている。
明彦は最近、ことごとく仕事を失っていて、なぜかと首をひねっている。
明彦の会社はいわゆる下請けで、大手広告代理店や中規模広告代理店が請け負った仕事の一部または全部を製作し、それを納品するという仕事をしている。
大手が5000万円だとしたら、大居宣伝社は、その10分の1ぐらいが手取りとしてになる。
大手ほど、他に経費がいるわけでもなく、人件費など限られているから。大居宣伝社のような会社は小回りがよく効率よく稼げるのである。
それが恵理子と結婚してから、相次いで契約を打ち切られている。恵理子は下げマンだったのかもしれない。
今までなら、ひなのの親父の新聞社から直に広告依頼が来ていた。だが、明彦が恵理子と浮気して、ひなのを捨てたからか、あれ以来一切の依頼がなくなったのだ。まぁ、それは致し方ないとして、明彦も今更、ひなのの親父さんに頭を下げることではないと思っているから。
でも、他のところまで追随しているとは、どういうことだ。
親父は、昔、大手の広告代理店に勤務していた。そのころのツテを頼って、今回の下請け切りを調べてくれたら、衝撃の事実がそこにはあったことがわかる。
親父の知り合いが言うには、百万年企画の社長の息子の嫁が、明彦に弄ばれ捨てられたことへの報復措置だと説明を受けたらしい。
え?
いやいや、明彦は身に覚えがない!と必死に訴えるものの。親父は、あんな大手から睨まれたら、うちはもうおしまいだと半ば諦め状態。
親父は会社をたたむから、明彦もこの業界以外のところで仕事を探せ。もうじき、子供も生まれてくるのだから。と念を押される。
うそだろ?
明彦に広告以外の仕事は考えられない。恥を忍んで、ひなのの親父さんに頭を下げ新聞広告の仕事をもらおうと思って、出向く。
「ひなのの大学時代のお友達だったよね?ごめん。悪いのだけど、ひなのの嫁ぎ先が広告代理店なもので、これからはすべてそこの代理店になったのだよ。すまないね。」
「え⁉ ひなのさん、ご結婚されたのですか?おめでとうございます。どちらの代理店でしょうか?差し支えなければ、お教え願えませんか?」
「え……とね。大久保さんと結婚したのだよ。」
大久保?聞いたことがない?
アイツ、俺が恵理子と結婚したことがよっぽどショックだったのか?アイツの実家に招待状を送ったけど、結局なしのつぶてだったよな。
明彦は祝福してもらおうと思って、招待状を出したのではない。アイツの実家が金持ちだったから、祝儀を当て込んでのこと。
帰宅して、親父に「大久保」という代理店を知っているかと聞くと、親父はみるみる顔色が悪くなっていき、
「明彦、その名前をどこで聞いた?」
「大学の同級生が大久保という代理店の奴と結婚したって、聞いたからさ。」
「バカ者!大久保さんが経営している広告代理店が百万年企画だよ。明彦、やっぱり、お前って奴は……!その同級生の女性を弄んで捨てたのだな!お前など、勘当だ!今すぐこの家から出ていけ!」
えっえっえー!
ひなのが百万年企画の御曹司と結婚!?
そんなバカな……。
明彦は、間違いなく、ひなののことが好きだった。ひなのの屈託がない笑顔が好きで、ひなのの大きくて柔らかいおっぱいが好きで、ひなのと付き合っていることが自慢できて、それなのに、どこで間違えてしまったのだろう。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
恵理子は妊娠5か月で、専業主婦をしているのだが、いつまで経っても帰ってこない夫を心配して、夫の実家に電話をして、事の子細をすべて聞いた。
これは、もう……帰ってこないだろうという予感がある。
恵理子は、ひなののことがうらやましくてしょうがなかった。ひなののお父さんが新聞社の局長をしていることも、腹立たしい原因の一つで、ひなのは明るく、誰からも好かれる性格で、恵理子は根暗で、嫉妬深いから、最初は付き合ってくれる人がいても、そのうち捨てられる。会話が続かないことが原因なのだ。
就活も失敗して、家に帰ると毎日、朝から晩までグチグチと愚痴を言われる。
それで気晴らしに入ったパチンコ屋で、明彦と再会したのだ。明彦は仕事とひなのの自慢ばかりしていて、ムカついたけど、そのうち、ひなのから明彦を奪ってやることを思いつき、実行に移す。
ただ寝るだけでは、明彦を奪えない。だから安全日だと嘘をついて寝たのだ。
結果、就活は失敗したけど、永久就職はすることができ、親の愚痴から解放されることに成功した。
でも、またひなのに負け、何もかも失うことになってしまうとは……。自業自得と言えば、それまでだが、お腹の子供をどうしようか迷っている。
せっかく授かった命だから、せめて後5か月、無事に生まれてきてほしい。
明彦は最近、ことごとく仕事を失っていて、なぜかと首をひねっている。
明彦の会社はいわゆる下請けで、大手広告代理店や中規模広告代理店が請け負った仕事の一部または全部を製作し、それを納品するという仕事をしている。
大手が5000万円だとしたら、大居宣伝社は、その10分の1ぐらいが手取りとしてになる。
大手ほど、他に経費がいるわけでもなく、人件費など限られているから。大居宣伝社のような会社は小回りがよく効率よく稼げるのである。
それが恵理子と結婚してから、相次いで契約を打ち切られている。恵理子は下げマンだったのかもしれない。
今までなら、ひなのの親父の新聞社から直に広告依頼が来ていた。だが、明彦が恵理子と浮気して、ひなのを捨てたからか、あれ以来一切の依頼がなくなったのだ。まぁ、それは致し方ないとして、明彦も今更、ひなのの親父さんに頭を下げることではないと思っているから。
でも、他のところまで追随しているとは、どういうことだ。
親父は、昔、大手の広告代理店に勤務していた。そのころのツテを頼って、今回の下請け切りを調べてくれたら、衝撃の事実がそこにはあったことがわかる。
親父の知り合いが言うには、百万年企画の社長の息子の嫁が、明彦に弄ばれ捨てられたことへの報復措置だと説明を受けたらしい。
え?
いやいや、明彦は身に覚えがない!と必死に訴えるものの。親父は、あんな大手から睨まれたら、うちはもうおしまいだと半ば諦め状態。
親父は会社をたたむから、明彦もこの業界以外のところで仕事を探せ。もうじき、子供も生まれてくるのだから。と念を押される。
うそだろ?
明彦に広告以外の仕事は考えられない。恥を忍んで、ひなのの親父さんに頭を下げ新聞広告の仕事をもらおうと思って、出向く。
「ひなのの大学時代のお友達だったよね?ごめん。悪いのだけど、ひなのの嫁ぎ先が広告代理店なもので、これからはすべてそこの代理店になったのだよ。すまないね。」
「え⁉ ひなのさん、ご結婚されたのですか?おめでとうございます。どちらの代理店でしょうか?差し支えなければ、お教え願えませんか?」
「え……とね。大久保さんと結婚したのだよ。」
大久保?聞いたことがない?
アイツ、俺が恵理子と結婚したことがよっぽどショックだったのか?アイツの実家に招待状を送ったけど、結局なしのつぶてだったよな。
明彦は祝福してもらおうと思って、招待状を出したのではない。アイツの実家が金持ちだったから、祝儀を当て込んでのこと。
帰宅して、親父に「大久保」という代理店を知っているかと聞くと、親父はみるみる顔色が悪くなっていき、
「明彦、その名前をどこで聞いた?」
「大学の同級生が大久保という代理店の奴と結婚したって、聞いたからさ。」
「バカ者!大久保さんが経営している広告代理店が百万年企画だよ。明彦、やっぱり、お前って奴は……!その同級生の女性を弄んで捨てたのだな!お前など、勘当だ!今すぐこの家から出ていけ!」
えっえっえー!
ひなのが百万年企画の御曹司と結婚!?
そんなバカな……。
明彦は、間違いなく、ひなののことが好きだった。ひなのの屈託がない笑顔が好きで、ひなのの大きくて柔らかいおっぱいが好きで、ひなのと付き合っていることが自慢できて、それなのに、どこで間違えてしまったのだろう。
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恵理子は妊娠5か月で、専業主婦をしているのだが、いつまで経っても帰ってこない夫を心配して、夫の実家に電話をして、事の子細をすべて聞いた。
これは、もう……帰ってこないだろうという予感がある。
恵理子は、ひなののことがうらやましくてしょうがなかった。ひなののお父さんが新聞社の局長をしていることも、腹立たしい原因の一つで、ひなのは明るく、誰からも好かれる性格で、恵理子は根暗で、嫉妬深いから、最初は付き合ってくれる人がいても、そのうち捨てられる。会話が続かないことが原因なのだ。
就活も失敗して、家に帰ると毎日、朝から晩までグチグチと愚痴を言われる。
それで気晴らしに入ったパチンコ屋で、明彦と再会したのだ。明彦は仕事とひなのの自慢ばかりしていて、ムカついたけど、そのうち、ひなのから明彦を奪ってやることを思いつき、実行に移す。
ただ寝るだけでは、明彦を奪えない。だから安全日だと嘘をついて寝たのだ。
結果、就活は失敗したけど、永久就職はすることができ、親の愚痴から解放されることに成功した。
でも、またひなのに負け、何もかも失うことになってしまうとは……。自業自得と言えば、それまでだが、お腹の子供をどうしようか迷っている。
せっかく授かった命だから、せめて後5か月、無事に生まれてきてほしい。
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