私が出会った団塊世代

バクッシー覚悟

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無鉄砲の上司『媚美長巻男』

「俺が若かった頃は――」

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その前に…今は関係を断ち切る事が出来たが,出会ってしまった『団塊』さんの話をさせて頂きたい。


それは…私がまだ社会の穢れを知らずに,会社の為にと真剣に働いていた時の事。

其処はそれなりに名のある企業で,私は何方かといえば接客業に近い事をしていた。


「〇×さん…これは何処に――」

「嗚呼…それはね?確かこの辺に…」


普段は事務作業だけど,人手が足りない時は其処に駆り出される。

ただ,其処にもストーカーの如く『団塊』さんが居た。



媚美長こびなが巻男まきお


定年退職したOBで,性格は最悪だけど上層部に気に入られていた事もあり,現場に復帰した『団塊』さんだ。

今では一発アウトの暴力を『指導』と称して行い,好みの相手には『セクハラ』もする下衆だった。

役職も何故か?定年退職時と同じで,私よりも遥かに上の立場だ。



まぁ不幸中の幸いか?私は,上司の御眼鏡に敵わなかったお陰で何もされずに済んだけど,上司が原因で退職した従業員やバイトは数知れず。


「お前らは良いよなぁ?食い扶持ぶちがあって…俺が若かった頃は――」


人手が足りなかった時,一緒に入った店で私らは上司の「若かった頃の話」を耳に胼胝ができる程,何度も聞かされた。

それで接客もしてくれるなら多少の自慢話や苦労話も黙って聞いたかもしれない。

けど,上司は接客は一切せずバックヤードに閉じ籠って,裏で作業をする従業員やバイトに永遠に話を続け。



「口答えするな!俺が本気出せばお前程度,軽く葬る事だって出来るんだぞ!」


初めて入ったバイトに,客にクレームを入れられたのは「上司が裏で引き留めた」からと言われた時は,真実なのに殴られ…折角せっかく,増えた人手は一日で消え。



「ほぉ~…なかなか優秀な接客じゃないか」

「それは当然です!なにせ,この私が手塩にかけて教育しましたから♪はい!」


上司よりも上の人間が視察にやって来た時は,私が教育した子を意図も「自分がやりました」と,全力でアピールする始末。



「今日…お客様に――だって褒められました♪」

「――で?そんな事よりも此処汚いから掃除しておけよ?」


如何なるファインプレーも褒められる事はなく,逆に些細な事でもブツブツと文句を言われ…酷い時には,理不尽にも激怒され。


まぁそんな事が続いた結果――

(言わずもがなだけど)従業員やバイトからの信頼は完全に消え,独り善がりの上司を追放する運動が起こるまでに発展した。

ただ,あまりの繋がりのエグさに上司を会社から排除する事は出来ず,逆に従業員やバイトが大量に退職した。

「私も辞めさせて頂けませんか?」

「キミまで辞められると困る!早急に従業員を増やすから,一年だけ待ってくれないか?」


勿論,私も「辞めたい」と上司ではない上層部に訴えたが,上司のせいで辞める事が出来ず。

仕方なく上層部の言葉を信じ,一年残留した…が,上司のパワハラ・セクハラで定着する従業員は居らず。

まぁ少し考えれば判る事だよね?ただ,当時の私は疲労困憊やら何やらで,まともな思考が働かなかった。
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