プリマヴェーラ・ストラトス―転生したらヒロイン全員病んでいて修羅場な件―

浜風ざくろ

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第四章 私のものにしたいな

第六十話 温もりが欲しくて

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 自室のベッドで、俺は本を読んでいた。

 カフカの「変身」だ。

 なんとなく眠れなくて、備え付けの本棚を探っているときに見つけた作品だった。この世界に前世の作家の作品が置いてあることに疑念を抱いたが、カフカは高校生のときに好きだった作家でもあったので、久しぶりに読んでみることにした。

「……」

 紙をめくる音は好きだ。

 ただ静寂に溶けていくから。

 カフカの「変身」は、主人公グレゴール・ザムザが醜い毒虫にある日突然変わってしまったところから始まる。突然の不条理に襲われたグレゴールの悲哀と、毒虫と変わり果てた彼をだんだん疎ましく思うようになる家族の心理の動きが絶妙に表現されている風刺的な作品だ。介護の問題と重なるところもあり、無知な学生の時分でも多くのことを考えさせられた。

 自分が突然、自分じゃないものに、それも嫌悪を避けられないほどの存在に変わり果てたなら。俺は、正気を保っていられるのだろうか?

 きっと難しいだろう。俺は気を狂わせて、どうにかして自らの命を絶とうとするに違いない。変わり果てることもそうだが、家族や大切な人から疎まれるようになっていくことに耐えられる気がしない。

 ネコヤナギは、これと似たような恐怖を抱え続けてきたのだ。彼女の場合は、自分の姿を隠すことができていたから、グレゴールの場合とは事情が少し違う。だが、隠せてしまうからこその不都合というものが、彼女にはあった。

 いつかバレて拒絶されるかもしれないという恐怖が。消されてしまうかもしれないという不安が。周りに嘘をつき続けなければいけない罪悪感が。見た目が変らないからこそ、本質が変わってしまったことを受け入れられない気持ちが、混乱が。そして、誰にも話せない孤独が。彼女には付き纏った。

 ネコヤナギはそうした苦悩に耐えられず狂い、人を傷つけて、廃棄拠点と呼ばれるこの場所へ流れ着いた。

「……」

 悲劇だ。

 ネコヤナギは、この悲劇の中で当たり前の普通を諦め、仮初の「普通」であることにこだわるようになり、「ネコヤナギ」という役を演じ続けようとした。

 それは、悲しいほどの歪な再現だった。本人が、かつての普通だったころの本人を演じるのだから。そうせざるをえないのだから。

「……」

 俺は、ページをめくる。

 この小説の最後には色々な意見があるだろうが、俺はあまりの救いのなさに愕然としたし、納得がいかなかった。毒虫となったグレゴールは、父親に暴行された傷がもとで亡くなってしまう。だが、彼の家族はまるで何事もなかったかのように過ごし、毒虫から解放されたことを祝福するかのごとく、明るい未来へ向かっていくのだ。

 そんな未来は、あまりにも悲しすぎた。救いがなさすぎて。報われたものたちの報われ方があまりにも酷すぎて――。

 だが、ここにはネコヤナギの抱えてきた恐怖の本質が、残酷なほどに潜んでいて。

 俺は、彼女をそんな目に合わせなくて本当によかったと思った。

 そして、今後もこうした辛い目にあわせないように守らなければならない。

 本を閉じた。

「……」

 結末までは見終わっていない。もう知っているし、改めて見たいとも思わなかった。

 結末は、幸せなものの方がいいに決まっている。

 みんなが、みんな幸せでいられるかは分からないが。誰も取りこぼすことのない明るい未来を、俺は可能なかぎり作りたいと思う。

 この世界のシナリオが、誰のものかはわからないが。俺には意思があるのだから、前へ前へ進み続けなければならない。

 俺は、息をついて枕元のランプに手を伸ばした。闇に飲まれる。久しぶりに活字を追ったおかげか、少しだけ眠気が来てくれた。時間は22時32分。

 明日はどんな一日になるだろうか。

 そう思いながら、目を閉じたときだった。

 ノックが鳴った。

「……誰だ?」

 扉がゆっくりと開いた。

 






「……ばか」

 私は、天井を見つめながら小さくつぶやいた。

 猫耳がピコピコと揺れる。勝手に揺れる。闇の中でも明るく見える天井には、さきからずっと、ずっとあの人の顔が浮かんでいた。まるで、プロジェクターでアルバムを映し出しているかのように、彼の色々な表情が浮かんでは入れ替わる。

 私を見つめる優しい笑顔、頭を撫でてくれるときの微笑み、からかわれて困りきった情けない顔、一人でいるときの寂しそうな表情、やけになった私に向けられた泣き顔――。

 次から次へと浮かんでくる。

 顔が熱かった。耳の先まで熱かった。頭がのぼせたようになって、あの人のことばかり考えて止まらない。

「……ばか」

 つぶやく。

 ばかばかばかばか。

 私のばか。イケメンターのばか。これ以上勘違いしないようにしていたのに、これ以上好きにならないようにしようとしていたのに。こんなの無理だ。あんな、あんなことを言われたら、もう、気持ちが溢れて止まらなくなるに決まっているじゃないか。

 ――お前は、誇り高いシールダーだ。

 私の頭は「わあああ」となっていた。ぐちゃぐちゃで、彼以外の何も考えられないくらい熱くて、嬉しくて、優しくて、温かくて、ちょっと寂しくて。彼に抱きとめられたときの温もりを思い出すように、私は布団を丸めて抱きしめた。

「……だいすき」

 だいすき。

 だいすきだいすきだいすきだいすき――。

 はじめてなんだ。はじめて、本当の私を、何も誤魔化さない裸の私を、私のすべてを受け止めてくれた人なんだ。すきだ。すきすぎてどうにかなりそうなくらいすき。無理だ。もう無理。この溢れかえりそうになる気持ちを止めることなんかできない。たがが外れた。だいすき。頭の中をすきで埋め尽くさないと、どうにかなる。

 私はなにを考えているんだろ? きっと、俯瞰してみたら、あまりにも馬鹿馬鹿しくて痛々しく見えるに違いない。でも、無理なんだもん。布団を抱きしめて、ごろごろ転がって、足をバタバタしたって止められない。

「……すき……だいすき……だいすきだよ、イケメンター」

 布団に顔を埋めて、私は言った。

 すきすぎて泣きそう。今まで誰にもこんな感情を抱いたことがないから、わからないんだ。初めてだからかな。自分の気持ちに歯止めが利かない。

「……さみしい」

 すごく寂しかった。

 イケメンターに会いたい。あの温もりをもう一度与えてほしい。もう一度、抱きしめてほしい。

 でも――。

 私のこころが、きゅっと縮まったかのように胸が痛くなる。

 イケメンターの左手。その薬指には証がはめられていて。彼にはもう別の女の子がいて。その子だけを特別に愛する覚悟をしてしまっていて。椿姉という存在がいるんだ。

 なんで私じゃないの?

 どうしても、そんな暗い思いに苛まれてしまう。あの人は、私よりも先に好きになっただけなのに。それだけで、ずっとアドバンテージを握ってきたのだからズルいよ。私だって、今は負けないくらい好きなんだから。私だって。私だって……。

 あの人はたしかに綺麗だ。「清楚」という言葉を体現したかのような楚々とした美しさがあって、スノーちゃんに引けを取らないくらい容姿が整っている。あの人の方が私よりもはるかに綺麗で、大人っぽくて、たしかに見た目だけならイケメンターと釣り合っていると思うんだ。悔しいけど、そこは認めざるをえない。

 でも――あの人は、駄目だ。

 あの人は、イケメンターには相応しくない。

 嫉妬にかられてそう思っているわけじゃない。本当に、相応しくないんだ。だって、あの人は人を殺している。殺人鬼だ。私にはわかる。虫となってから、私はそうしたドス黒い気配が不思議と察知できるようになっていた。

 あの人は、イカれていると思う。人を殺してここに来ているのに、涼しい顔をしてお姉さんぶって、イケメンターにすり寄っているのだから。

「……」

 でも、それをイケメンターやスノーちゃんに伝えるわけにはいかない。確たる証拠なんてないし、そんなことを言ったら私の心証が悪くなってしまう恐れもある。それに、聞かれてしまった場合、最悪目をつけられる。リスクはなるべく避けないといけない。

 それに……あんな人でもイケメンターが選んだ人なんだ。彼が自分のを圧し殺してまで、大切にすると誓った相手なんだ。イケメンターは私たちのためにそうしてくれた。その思いは尊重しないといけない。だから、私も殺せる気持ちはなるべく圧し殺して、彼のために過ごしていこうと思っていた。

 だけどそれはすごく寂しくて、すごく辛い。

 だって、こんなにも彼を愛しているのだから。

「……私のものにしたいな」

 危ない本音が溢れた。

 でも、それは叶わない。叶わないんだ。

 ――あの人が、イケメンターのそばにいる限り。

 浮かび上がりそうになったドス黒い感情を、布団に顔を埋めて圧し殺す。だめだ。それだけは駄目だ。イケメンターも、スノーちゃんも、なによりも仲間を大切に思っている。だから、そうした邪な思いを持つことは許されない。せっかく居場所を得たのに、それを失うようなことになるのだけは御免だ。

 でも、寂しい。

 どうしようもなく、寂しくて辛い。

 だから、せめて。

 せめて少しでもいいから温もりが欲しい。

 私は起き上がる。

 迷惑なのはわかっている。こんな時間なんだもん。23時58分。ほぼ日付が変わる時間。こんなときに訪れたら、もしかすると起こしてしまうかもしれない。

 でも、それでも……我慢できない。

 ほんのちょっと。手に触れるだけでもいいんだ。私はあの人の温もりに触れたい。そうじゃないと焼けそうな恋煩いと嫉妬で、眠ることさえできそうもないから。

 私は鏡の前で髪を整えて、部屋を出た。





 
「……椿?」

 部屋の前に現れたのは椿だった。白い長襦袢を着込んだ彼女は、俺を見て穏やかに微笑む。赤い瞳が、眠そうな俺の間抜け面を映していた。

「メンター」

 椿は、ゆったりとした声で言った。

「一緒に寝てください」

「え?」

「一緒に寝てください」

 俺は瞬きをしながら椿を見たが、彼女の微笑はまったく揺らがなかった。嫌な予感がした。こういうときの椿は、だいたい「浮気」を追及してくるときだから。

 そして案の定、それは間違っていなかった。

「ネコヤナギと抱き合ってましたよね? お話するとだけ言っていたのに。だから、寝てください。いいですね?」

「……」

 俺は溜息をこらえて、頷くしかなかった。
 


 
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