身代わり男装騎士ですが、副騎士団長様に甘く暴かれました

卯月ミント

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番外編

【番外編】ロジェのクマ4(ユビナティオ視点)

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 その日、帰ってきた姉はユビナティオに言った。

「もう大丈夫よ」

 そして、こう続けた。

「あなたを嫌っている人なんて最初からいなかったわよ。だから安心してお仕事頑張るのよ」

「姉上……! ありがとうございます、姉上!」

 姉が悩みを解決してくれた! それは嬉しいのだが、その方法が気になるところではある。

 入れ替わることでロジェを探る、ということは知っているのだが、それ以上のことは教えてはくれなかった。

 結局、二人の間に何があったのだろうか。

「あの、姉上……?」

「うん?」

 それに、気になることはまだあった。

 帰ってきたユベルティナが妙につやつやしているように見えて……。

「いったい、ロジェ様と何をなされたのですか?」

 だから、そんなことを聞いていた。

「別に、なにも。まぁ、強いていうならすっごく幸せだったかな」

「はぁ……?」




 翌日。

 ユビナティオは不安な面持ちで副団長執務室のドアを開け――

 そこにはいつも通り、先に来て執務机にて書類に目を通しているロジェがいた。

「……ロジェ様、おはようございます」

「ああ」

 ユビナティオが挨拶すると、ロジェは短く返事をして顔を上げた。
 そしてふっと微笑み、

「今日はユベルティナではないのだな」

「えっ……」

 それが、分かるのか?
 というか、昨日、入れ替わったことはバレているのか……!

「……いや、すまない。君は君だ」

 と言って首を振り、ユビナティオに軽く頭を下げた。

「……心配を掛けて、すまなかった」

「えっ、そんな」

 いきなり上司に頭を下げられ、ユビナティオは慌てて首を振る。

「あの、僕の方こそすみませんでした。昨日はその、姉に入れ替わってもらって、その。こんな歳にもなって姉に頼るなんて情けないっていうか……」

「君は何も悪くない。私が弱かったんだ。……きのう、ユベルティナに怒られたよ。私らしくない、と」

「姉上が……」

 ユベルティナは、昨日、ロジェに説教でもしたのだろうか。

「……僕、ほんと自分が情けないです。いつまでも姉上に頼りっぱなしで……」

「仕方がない、これはユベルティナでなければ解決できないことだから」

「……え?」

「ユベルティナにしかできないことだ」

「いったい、あの。何があったんですか?」

「さぁ」

 とぼけるロジェに、ユビナティオは首を傾げる。
 ユベルティナにできて、自分にはできない解決方法――。

「っ!?」

 ボッ、とユビナティオの顔が一気に赤くなる。

 ……まさか。

 そういえば、ロジェの顔からクマが消えている。

 しかし、まさか。ここで!?

「私も強くならねばな。君の姉上に似合う男になれるように」

「……………っ」

「さ、仕事だユビナティオ」

 そう言いつつ書類の束を渡してくるロジェに、ユビナティオは……

「ま、また姉上と替わったほうがいいですか?」

「……大丈夫だ。少なくとも一週間はな」

 珍しいほどにっこり笑うロジェの顔を、ユビナティオは正視することができなかった……。



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