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*WEB連載版
第51話 悪だくみ不発
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殿下と私がイリーナのしたことがなんなのか話し合うなか、疑惑のイリーナは顔を洗い終えた。
ひったくるようにしてロゼッタさんからタオルを奪い取り、顔をゴシゴシふいている。
「ちょっと、お水足りませんわよ! おかわりをくださいな!」
それでもまだ痛いらしく、ロゼッタさんに水のおかわりを命令するイリーナ。
「かしこまりました」
ロゼッタさんが一礼して桶を持って去ると、さてイリーナはキッと私たちを睨み付けたのだった。
ただ、顔がものすごい真っ赤だ。
「私の……お料理……、とっても塩が効いてましたわ!」
「は? 塩効かせたのお前だろ?」
「わ、わたくしのお料理にだけ塩が足されていたのです!」
「え? あのねイリーナ。お料理に追い塩したのはイリーナでしょう。マイ塩を持ち歩くくらいお塩が好きだったなんて知らなかったけど」
「わたくしのっお皿だけにだけっ塩が多かったのです! これってわたくしを嫌っている人の犯行ですわよ! この館からわたくしを追い出すつもりなんですわ! わたくしは犯人を絶対に許しませんことよ!」
「さっきからなに言ってるの、イリーナ?」
要領を得ないことを言い続けるイリーナに、私は困惑した。
もしかしたらこの子は本当にどうにかなってしまったのかもしれない。
目からお塩が入って、体内の塩分濃度が上がってしまったからなの……? って、塩にそんな効果もあるなんて聞いたことないけど。でもイリーナなら不可能を斜め上に可能にしそうだし……。
「ルベルド殿下! わたくし! 館の使用人にいじめられてるんですの!!!」
「イリーナ? なにを言って――」
「はっはーん、そういうことか。自分を哀れに見せて俺に味方させるために自分の料理に塩を盛ろうとしたんだな。で、失敗してぶちまけて目に入ったと」
「え!? そんなことをしようとしたの、イリーナ!?」
「う、うるさいですわよ!」
耳まで真っ赤なイリーナである。これは、図星か……。
「あー、もう! やめやめ! やめですわ! 痛い思いもしたからとりあえず計画だけは最後まで遂行しようと思ったけど! もうやめですわよ!」
「あっはっはっはっはっはっは!!」
顔を真っ赤にして声を荒げるイリーナに、ルベルド殿下が突然大笑いをしだしたのだった。
「お前本当にアホだな! なにが計画だよ、子供かよお前、しかもグダグダじゃねえかグダグダ。なに塩の瓶逆に持って振ってんの。あはははは」
「う……」
「イリーナ? とりあえず食堂に戻りましょう、お食事の続きをしないといけないわ」
「こいつの料理なんか塩だらけで食べられたもんじゃないだろ! 目に塩が入るくらい瓶でバッサー振りまいんだからな、バッサー! あはははは」
「くっ……」
「私のでよければ分けるわよ。まだ手を付けていないお皿もあるし。ううん、シェフに頼んで新しいのを作ってもらったらいいのよ……」
「お姉さまの情けなどいりません!」
イリーナは私の提案をぴしゃりと拒否したのだった。
「失礼しますわ!」
「おいどこいくんだよ銀髪ラフレシアの塩漬け!」
「お部屋に帰らせていただきます!! あとその呼び方やめてくださいます!?」
「我ながらいいアダ名だと思うぜ、銀髪ラフレシアの塩漬け。部屋に帰るついでにこの館から出て行けばいいけば? 俺は止めないぞ。ほら、さっさと出て行けよ銀髪ラフレシアの塩漬け」
「うるさいですの! 今にみておれですわ、お義兄さま!」
「ちょっ、イリーナ! あなた殿下になんていう口の利き方を……殿下もちょっと言い過ぎです!」
「あはははははは……」
腹を抱えて笑うルベルド殿下、真っ赤な目で肩をいからせドスンドスンとキッチンを出て行くイリーナ。
ちょうどそこにロゼッタさんが桶を持ってやってきた。
「イリーナ様、お水はいいのでしょうか?」
「水持って部屋について来なさい!」
「かしこまりました」
そのまま水を持ってイリーナのあとをついていくロゼッタさん。
「なんだよロゼッタ、そんなもんミレナ婆さんに任せとけよ」
「わたくしのことをそんなもん呼ばわりしないでいただけるかしら!」
「老人にこの重さは酷ですので」
と片手で水が満々と入った桶を軽々と持つロゼッタさんが答える。
確かにあれは……重そうだわ。
そんなこんなで二人が行ってしまうと、私は必死にルベルド殿下に頭を下げた。
「殿下、申し訳ありません。お食事中なのにとんだ騒ぎを……」
「気にすんなって。あいつのことは嫌いだけど、嫌がらせしようと必死になってる姿だけは滑稽だったぜ」
「……それは確かに」
「見てるだけなら面白いやつだよ、ほんと。見てるだけならな」
それからまたルベルド殿下は笑い出した。
「しかし、いくらなんでも面白すぎるだろ。悪知恵働こうとしたら塩の瓶逆に持ってて振ったら目にドバーって入るってて……、ほんと笑える。俺もやってみようかな、目薬代わりに。あはは!」
「おやめください、ルベルド殿下……」
私はため息をついた。
「まぁ、あんたもそろそろ覚悟決めた方がいいけどな」
「え?」
「いや。こっちの話」
殿下はそういってニヤニヤしていた。
ひったくるようにしてロゼッタさんからタオルを奪い取り、顔をゴシゴシふいている。
「ちょっと、お水足りませんわよ! おかわりをくださいな!」
それでもまだ痛いらしく、ロゼッタさんに水のおかわりを命令するイリーナ。
「かしこまりました」
ロゼッタさんが一礼して桶を持って去ると、さてイリーナはキッと私たちを睨み付けたのだった。
ただ、顔がものすごい真っ赤だ。
「私の……お料理……、とっても塩が効いてましたわ!」
「は? 塩効かせたのお前だろ?」
「わ、わたくしのお料理にだけ塩が足されていたのです!」
「え? あのねイリーナ。お料理に追い塩したのはイリーナでしょう。マイ塩を持ち歩くくらいお塩が好きだったなんて知らなかったけど」
「わたくしのっお皿だけにだけっ塩が多かったのです! これってわたくしを嫌っている人の犯行ですわよ! この館からわたくしを追い出すつもりなんですわ! わたくしは犯人を絶対に許しませんことよ!」
「さっきからなに言ってるの、イリーナ?」
要領を得ないことを言い続けるイリーナに、私は困惑した。
もしかしたらこの子は本当にどうにかなってしまったのかもしれない。
目からお塩が入って、体内の塩分濃度が上がってしまったからなの……? って、塩にそんな効果もあるなんて聞いたことないけど。でもイリーナなら不可能を斜め上に可能にしそうだし……。
「ルベルド殿下! わたくし! 館の使用人にいじめられてるんですの!!!」
「イリーナ? なにを言って――」
「はっはーん、そういうことか。自分を哀れに見せて俺に味方させるために自分の料理に塩を盛ろうとしたんだな。で、失敗してぶちまけて目に入ったと」
「え!? そんなことをしようとしたの、イリーナ!?」
「う、うるさいですわよ!」
耳まで真っ赤なイリーナである。これは、図星か……。
「あー、もう! やめやめ! やめですわ! 痛い思いもしたからとりあえず計画だけは最後まで遂行しようと思ったけど! もうやめですわよ!」
「あっはっはっはっはっはっは!!」
顔を真っ赤にして声を荒げるイリーナに、ルベルド殿下が突然大笑いをしだしたのだった。
「お前本当にアホだな! なにが計画だよ、子供かよお前、しかもグダグダじゃねえかグダグダ。なに塩の瓶逆に持って振ってんの。あはははは」
「う……」
「イリーナ? とりあえず食堂に戻りましょう、お食事の続きをしないといけないわ」
「こいつの料理なんか塩だらけで食べられたもんじゃないだろ! 目に塩が入るくらい瓶でバッサー振りまいんだからな、バッサー! あはははは」
「くっ……」
「私のでよければ分けるわよ。まだ手を付けていないお皿もあるし。ううん、シェフに頼んで新しいのを作ってもらったらいいのよ……」
「お姉さまの情けなどいりません!」
イリーナは私の提案をぴしゃりと拒否したのだった。
「失礼しますわ!」
「おいどこいくんだよ銀髪ラフレシアの塩漬け!」
「お部屋に帰らせていただきます!! あとその呼び方やめてくださいます!?」
「我ながらいいアダ名だと思うぜ、銀髪ラフレシアの塩漬け。部屋に帰るついでにこの館から出て行けばいいけば? 俺は止めないぞ。ほら、さっさと出て行けよ銀髪ラフレシアの塩漬け」
「うるさいですの! 今にみておれですわ、お義兄さま!」
「ちょっ、イリーナ! あなた殿下になんていう口の利き方を……殿下もちょっと言い過ぎです!」
「あはははははは……」
腹を抱えて笑うルベルド殿下、真っ赤な目で肩をいからせドスンドスンとキッチンを出て行くイリーナ。
ちょうどそこにロゼッタさんが桶を持ってやってきた。
「イリーナ様、お水はいいのでしょうか?」
「水持って部屋について来なさい!」
「かしこまりました」
そのまま水を持ってイリーナのあとをついていくロゼッタさん。
「なんだよロゼッタ、そんなもんミレナ婆さんに任せとけよ」
「わたくしのことをそんなもん呼ばわりしないでいただけるかしら!」
「老人にこの重さは酷ですので」
と片手で水が満々と入った桶を軽々と持つロゼッタさんが答える。
確かにあれは……重そうだわ。
そんなこんなで二人が行ってしまうと、私は必死にルベルド殿下に頭を下げた。
「殿下、申し訳ありません。お食事中なのにとんだ騒ぎを……」
「気にすんなって。あいつのことは嫌いだけど、嫌がらせしようと必死になってる姿だけは滑稽だったぜ」
「……それは確かに」
「見てるだけなら面白いやつだよ、ほんと。見てるだけならな」
それからまたルベルド殿下は笑い出した。
「しかし、いくらなんでも面白すぎるだろ。悪知恵働こうとしたら塩の瓶逆に持ってて振ったら目にドバーって入るってて……、ほんと笑える。俺もやってみようかな、目薬代わりに。あはは!」
「おやめください、ルベルド殿下……」
私はため息をついた。
「まぁ、あんたもそろそろ覚悟決めた方がいいけどな」
「え?」
「いや。こっちの話」
殿下はそういってニヤニヤしていた。
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