魔法少女、派遣します!

椎茸大使

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第4話

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やって来たのは警察の人。
別に誰かを捕まえに来たわけではない。
れっきとした仕事のお話だ。
警察では子供向けの防犯講座を定期的に行なっているようで、その手伝いをお願いしたいとの事。
普段ならば、いつも頼んでいるヒーローに依頼をしていてたのであろうが、今回は先方が断りの電話を入れて来たのでその代役として声をかけられたとの事。

「話は分かりました。それで、具体的な依頼内容は?」

仕事モードの日小夜は警察の人とお話をしている。
しかしその内面では問題がないかどうかとビックビクだ。

「はい。あなた方にはエネミー襲撃によるヒーロー戦での避難の仕方の訓練におけるヒーロー役と、ヒーロー講座をお願いしたいと考えています。」
「ヒーロー講座とはどのようなものでしょうか?」
「ヒーローとしての仕事の説明を。後は能力を持つ子供達への簡単な指導をお願いします。」

防犯講座はヒーローにとって特別な仕事である。
それは国を護るという同じ志を持つ者同士が連絡を密にすることで迅速に対応できるようにする……ということではない。
勿論そういう意味もある仕事だ。
しかし、新人ヒーローにとってはそうではない。
今回の依頼だが、相手をするのは子供である。
子供はヒーローに憧れ、夢を抱く。
そのヒーローが目の前に現れ、実際に超常の力を行使するのだ。
それはつまり子供の人気を集めることに他ならず、そこから子供達の友人、そして親へとその情報を伝える事になる。
つまり、子供達から親へと情報が渡され、子供が好きなヒーローだからと依頼をする可能性があるということだ。
新人ヒーローがまずしなければならないことはエネミー退治でも、暴漢の捕縛でもなく、知名度の向上である。
人々を護る英雄であっても世知辛いものである。

「話は分かりました。ではこの依頼は彼女達にお願いしたいと思いますがよろしいですか?」
「それで構いません。」
「分かりました。ではこの依頼、受けさせてもらいます。」
「ありがとうございます。では、早速ですがより詳しい説明をさせていただきますね。まず、日時ですが次の日曜日の10時からを予定しておりますので、皆様にはそれまでに警察署の方までお越し願いますね。それとは別に段取りの打ち合わせとリハーサルを行いたいのでその前日である土曜日にも来ていただけたらと思っておりますが、大丈夫でしょうか?」
「問題ないです。」
「では、次に防犯講座の対象者についてですが……」

防犯講座についての細かな説明や報酬についてのやり取りを済ませた警察の人は挨拶をし、署へと依頼成立の報告をしに戻っていった。
そして事務所に残った面々は、それぞれ顔を喜色に染めていく。
何せ、チーム結成以来初めてのバイト以外の仕事なのだ。
その報酬はこれまでのバイトと違い、事務所に幾らか引かれたとしてもメンバーの手元には1人5万程残るのだから、それも仕方ないことだろう。
事務所としても稼ぎ頭であるもう1人に任せっきりというのも問題なので、今回のような依頼は喜ばしいのだ。

そんな4人の元に、さらに電話が鳴る。
これはもしかして依頼の電話か!?  と、期待に胸膨らませる4人。
確かにその電話は依頼の電話だった。
しかし、喜べるのも最初のうちだけだった。
度重なる電話。
連続して訪れる依頼主達。
それは由那達が自宅に帰る頃になっても変わらず、最終的に仕事の依頼が16件に登った。
翌日、学校を終えて事務所に寄った3人はそのことを知る。
一月の間にであれば問題ないが、2週間の間だけの仕事だ。
1日に2つ以上の依頼がある日もあった。
更に日小夜によって衝撃の事実を突きつけられる。

「あのね、あんまりにも多いから気になって聞いてみたの。そしたら……『本来頼む相手が試験期間中ということで断られてしまったんですよ。』って。」

それを聞いた瞬間、3人は戦慄した。
仕事の多さに?  いいや違う。
試験が近いことを思い出したから?  それも違う。
3人は理解したのだ。
上の事務所の人達が休んだから自分達に仕事が来たことを……そして、そのしわ寄せが全部自分達の試験に向いていることを。

湊と火乃香はまだいい。
普段から真面目に授業を受けたり家庭教師や予習復習で勉強して来たから。
しかし、由那は違う。
普段から勉強はおろそか、宿題も2日に1回のペースで忘れ、授業前ギリギリに湊や火乃香に写させて貰っているレベル。
当然試験も赤いラインを上へ下へと行ったり来たり。

真っ青な顔をしている由那に、どうしたものかと由那を見る湊と火乃香。
普段の授業をちゃんと受けて休み時間にも勉強をする他にないのだが、いかんせん、基礎知識が抜けている。
授業をちゃんと理解できるかどうか不安が残る。
しかし、賽は投げられたのだ。
頑張るしかない。
赤点になれば補習とたっぷり課題が待っているのだから。



それからの『トライエレメンツ』は忙しい日々を送る事になる。
エネミーが現れて居ないかどうか、能力を悪用する者が居ないかなどを見回ったりするパトロールが多いが、それ以外の仕事もある。
迷い猫や迷い犬、迷いヘビなどを探したり、エネミーとの戦闘で荒らされた場所の清掃と整備など様々だ。

「つっ、かまえ、ましたわーー!」
「流石お嬢!」
「お嬢と呼ばないでください!」

今も迷いイグアナ捜索の依頼を受けている。
というか、迷いイグアナて……。
一体どうやったらそんなのが迷う事になるのか理解出来ないところだが、実際に逃げ出してしまっているのだから、しょうがない。

「ふぅ。これで今日の依頼は終了かな。」
「そうだね~。あー、疲れた~。」
「由那、まだ依頼人にイグアナを引き渡しておりませんよ。それを終えて日小夜さんに報告して初めて終わりですのよ。」
「そうだけどもう終わったようなものでしょ。」
「だとしてもですわ。」
「はいはーい。」

ぎらぎらテカテカでっぷりとした現実にいるのかと言いたくなる如何にもなマダムに迷いイグアナを引き渡して報酬を受け取る。
そこまでは良かった。
そしてマダムは周りがドン引きする程の溺愛っぷりを見せる。
なんという定番キャラなんだろうか。
その溺愛がイグアナが迷うことになったという事には思い至らないのか気になるところ。
とはいえ、あんまり長居するのもという事で、というか、アレな光景をあんまり見ていたくもないので一言言ってからこの場を後にし、3人は事務所に寄った後そのまま帰路につく。



この日はこれでお仕事はおしまいだが、日によってはこの後パトロールなんかがあったりして帰るのが10時を過ぎる事も。
なので、こうして夕食前に帰れるのは貴重なのだが……

~由那サイド~

「あははははは!  やっぱりモ◯タリングは面白いなー!」
「由那~。さっさとお風呂入っちゃいなさい。」
「はーい。」

全く勉強していなかった。
由那の頭の中では最後の方に湊と火乃香に助けてもらう事に決まっているのかもしれない。
だが、果たしてそんな時間があるのだろうか……。

~湊サイド~

「この時の五平の気持ちを答えよ……か。えーと、有姫がここで気持ちを伝えてるけど、五平には既に想い人がいるからここの文を使って……。」
「湊~、お風呂空いたわよ~。」
「はーい。」
「お姉ちゃん。一緒に入ろう!」
「お、渚。うん。一緒に入ろうか。」
「うん!」

由那と全く時間の使い方が違っていた。
そんな湊は妹の手を引いてお風呂へと向かった。

~火乃香サイド~

「ねぇねぇ、火乃香~、パパと一緒にお風呂入ろうよ~。」
「構いませんよ。」
「え、マジで!?  本当に!?」

お髭のナイスミドルは随分と若い感性をお持ちのようだ。
もしくは、マジで、と言ってしまうくらい嬉しかったのだろう。

「はい。」
「やったぜ、キャッホーイ!  こうしちゃおれん!  火凛と火月ひづきも誘わねば!」

片手を突き上げ、飛び跳ねながら一回転する髭のおっさん。
世の娘さんは小学校高学年くらいになるとお風呂に入らなくなるであろうからこの反応も仕方ないのかもしれない。
しかし、光島グループ総裁としてはどうかと思う。

「ですが……。」
「ん?  どうしたのかな、火乃香?」
「後ろの人を納得させることができたらの話ですよ。」
「後ろ?」
「謙蔵様!  まだ終わっていない仕事は沢山あるんですよ!  家族との団欒も結構ですが、それはきちんとやることをやってからして下さい!」
「げえっ!?  樺島!?」
「げえっ!?  じゃありません!  さ、行きますよ!  まだまだお仕事はたっぷり残っているんですから!」
「ほ、火乃香ー!  パパは必ず戻ってくるからなーー!」

樺島鏡花。
日本が世界に誇る光島グループ総裁の筆頭秘書。
彼女によって今日も光島グループに平和がもたらされた。

「火乃香様。湯浴みの準備が整いました。」
「ありがとう、美咲。では行きましょうか。」
「はい。」

お風呂へと向かう火乃香。
その側には専属メイドの美咲さんが侍っている。
彼女はメイド。
家政婦ではなくメイドさんなのだ。
ここは譲ってはいけないポイント。
家政婦と呼ぶと凍えるような笑顔を貼り付けて、発言者が訂正するまで静かに笑うので注意が必要だ。

こんな感じで『トライエレメンツ』の日常は過ぎていった。
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