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ーー
「ちょっと休憩でもしますか。」
残業開始から2時間半。フロアに残るのはいつの間にやら私達2人だけ。
作業はまだ少しあるけれど、労働意欲も途切れ始めたところで有り難い提案が鬼上官から頂けた。
席を外した佐久間君を確認して、そっと携帯に手を伸ばす。
やっぱり、デートはキャンセルしよう。
洋服も買いに行けなくなったし、それになにより色々考えていたら急激にやる気が削げてしまった。
ちょっとしたことで気持ちが変わってしまうような状態で婚活アプリを使って出会いを探すのは、何かが違うような気がする。
そう思いデートの予定をしていた相手にキャンセルの連絡をした後、そのままアンインストールしようとアイコンをタッチしようとしたその時。
「……先輩、婚活アプリなんてやってるんですか?」
背後から佐久間君が携帯の画面を覗き込んで、そんなことを言うのだった。
「俺が先輩の為に、休憩だからコーヒーでも一緒に飲もうなんて優しさを見せたら、先輩はその隙にそんなアプリを見てたんですね。」
残業中に携帯を見ていた私に酷くご立腹の様子の鬼上官は、底冷えするような寒々しい声で責めたてる。
「なんでそんなアプリなんか見てるんですか?」
「ご、ごめん。今休憩時間だからちょっと見てみただけだよ。サボってないよ。」
サボりではないと慌てて謝るも、
「休憩時間だから見ていいって話はないですよね?俺っていう存在がいる以上は、仕事中も休憩時間もプライベートの時間だってそんなものは見る必要なんてないですよね?」
この鬼上官は、業務中だけでなく、私のプライベートまでも管理干渉しようとしてくる様子。
業務中もプライベートも、清く正しい社畜であれ、ってことなのか。
……なんでそんな事、言われなければならないのか。
「そんなの佐久間君に関係ないじゃない!プライベートにまで口出さないで!」
思わずカッとなりそう怒鳴ってしまうと、彼は一瞬たじろぎの表情をみせた。
鬼上官が珍しくそんな表情をしたことに、私も少々キツく言い過ぎたのかと動揺していると、彼はふうっと息を吐く。
そしていつもと違った、少し緊張したような、切羽詰まったような顔をして私の目を見つめてこう言うのだった。
「関係ありますよ。だって俺、先輩のことが好きなんですから。」
……え?
ええ?
えええええ????
鬼上官、もとい、佐久間君が、私を、好き?
混乱して思わず思考も体も固まってしまう私を佐久間君はグイと引き寄せる。何が何やらさっぱり分からずされるがままに、すっぽり彼の腕の中で抱きしめられてしまう。
「そんな婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。……俺じゃダメですか?」
佐久間君はいつもと違って切なそうな声色でそう言うと、空いた机に私を押し倒し、そのまま首筋に顔を埋めてキスをする。
「だ、ダメも何も私達は職場の同僚だし、仕事上の相手をそんな目で見れないし……」
しどろもどろになりながらそう言うと、佐久間君は私の肩を手で押さえつけながら一旦起き上がり、「俺のこと、じゃあ、嫌いですか?」と首を傾げて上目遣いで聞いてくる。
うっわ、かわいい!!
柔らかそうな栗色の髪をふわふわ揺らし、同じく色素の薄い栗色の大きな瞳で縋るような目つきで見つめられれば、こちらまでなんだか胸がドキドキ、おかしな気持ちになってしまう。
するとそんな様子を見た佐久間君は表情を一変させると悪い笑顔でニヤリと笑って、「その様子では、俺が嫌いって訳ではなさそうですよね」と、再び私の上に伸し掛かる。
「そういう目で見れないんだったら、これからそんな目で見ちゃうようなことをしてあげますよ。そしたらもう先輩は俺のこと意識して、異性としてしか見られなくなっちゃいますよね?」
そう言って、私の唇を無理やり奪うのだった。
「ちょっと休憩でもしますか。」
残業開始から2時間半。フロアに残るのはいつの間にやら私達2人だけ。
作業はまだ少しあるけれど、労働意欲も途切れ始めたところで有り難い提案が鬼上官から頂けた。
席を外した佐久間君を確認して、そっと携帯に手を伸ばす。
やっぱり、デートはキャンセルしよう。
洋服も買いに行けなくなったし、それになにより色々考えていたら急激にやる気が削げてしまった。
ちょっとしたことで気持ちが変わってしまうような状態で婚活アプリを使って出会いを探すのは、何かが違うような気がする。
そう思いデートの予定をしていた相手にキャンセルの連絡をした後、そのままアンインストールしようとアイコンをタッチしようとしたその時。
「……先輩、婚活アプリなんてやってるんですか?」
背後から佐久間君が携帯の画面を覗き込んで、そんなことを言うのだった。
「俺が先輩の為に、休憩だからコーヒーでも一緒に飲もうなんて優しさを見せたら、先輩はその隙にそんなアプリを見てたんですね。」
残業中に携帯を見ていた私に酷くご立腹の様子の鬼上官は、底冷えするような寒々しい声で責めたてる。
「なんでそんなアプリなんか見てるんですか?」
「ご、ごめん。今休憩時間だからちょっと見てみただけだよ。サボってないよ。」
サボりではないと慌てて謝るも、
「休憩時間だから見ていいって話はないですよね?俺っていう存在がいる以上は、仕事中も休憩時間もプライベートの時間だってそんなものは見る必要なんてないですよね?」
この鬼上官は、業務中だけでなく、私のプライベートまでも管理干渉しようとしてくる様子。
業務中もプライベートも、清く正しい社畜であれ、ってことなのか。
……なんでそんな事、言われなければならないのか。
「そんなの佐久間君に関係ないじゃない!プライベートにまで口出さないで!」
思わずカッとなりそう怒鳴ってしまうと、彼は一瞬たじろぎの表情をみせた。
鬼上官が珍しくそんな表情をしたことに、私も少々キツく言い過ぎたのかと動揺していると、彼はふうっと息を吐く。
そしていつもと違った、少し緊張したような、切羽詰まったような顔をして私の目を見つめてこう言うのだった。
「関係ありますよ。だって俺、先輩のことが好きなんですから。」
……え?
ええ?
えええええ????
鬼上官、もとい、佐久間君が、私を、好き?
混乱して思わず思考も体も固まってしまう私を佐久間君はグイと引き寄せる。何が何やらさっぱり分からずされるがままに、すっぽり彼の腕の中で抱きしめられてしまう。
「そんな婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。……俺じゃダメですか?」
佐久間君はいつもと違って切なそうな声色でそう言うと、空いた机に私を押し倒し、そのまま首筋に顔を埋めてキスをする。
「だ、ダメも何も私達は職場の同僚だし、仕事上の相手をそんな目で見れないし……」
しどろもどろになりながらそう言うと、佐久間君は私の肩を手で押さえつけながら一旦起き上がり、「俺のこと、じゃあ、嫌いですか?」と首を傾げて上目遣いで聞いてくる。
うっわ、かわいい!!
柔らかそうな栗色の髪をふわふわ揺らし、同じく色素の薄い栗色の大きな瞳で縋るような目つきで見つめられれば、こちらまでなんだか胸がドキドキ、おかしな気持ちになってしまう。
するとそんな様子を見た佐久間君は表情を一変させると悪い笑顔でニヤリと笑って、「その様子では、俺が嫌いって訳ではなさそうですよね」と、再び私の上に伸し掛かる。
「そういう目で見れないんだったら、これからそんな目で見ちゃうようなことをしてあげますよ。そしたらもう先輩は俺のこと意識して、異性としてしか見られなくなっちゃいますよね?」
そう言って、私の唇を無理やり奪うのだった。
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