ボクは名探偵？

六章 夢と現

第26話 デジャブ？

3年2組の教室の前でボクは一瞬、躊躇った。
ボクは一度大きく深呼吸をしてから
思い切ってドアを引いた。

室内は喧噪に包まれていた。

「おはよう、水田。
　どうしたの？
　随分バッサリと髪を切ったんだね」
その声の主は学級委員長の姫島蘭子だった。
彼女は普段通り
その黒い髪を三つ編みに結っていた。
度の強い丸眼鏡の奥の瞳がボクを
興味深そうに見つめていた。
「お、おはよう、委員長。
　う、うん。
　週末に気分転換のつもりで・・」
ボクは小声で挨拶を返してから
窓際の一番後ろにある自分の席に向かった。

しばらくすると
「ジリジリジリジリ」
とベルが鳴って、
担任の菊野夕貴が教室に入ってきた。
彼女は教壇に立つと
空いている席にチラリと目を向けてから
神妙な面持ちで口を開いた。
「皆さんに悲しいお知らせがあります・・」
そこで菊野は一度口を閉じた。
そして「コツンコツン」と小さく咳をすると
教室中をくるりと見回してから続けた。
「・・昨夜。
　・・北条君が亡くなりました」

教室中がどよめいた。
生徒達は好き勝手に
思い思いの言葉を口にしていたが、
それでも皆一様に驚いていた。
そして。
ボクの驚きは彼らの比ではなかった。
その時、
廊下側一番前に座っていた蘭子が手を挙げた。
「先生、北条はどうして亡くなったんですか？」
蘭子の質問を他の生徒達も支持した。
菊野は少しの間考え込んでいたが、
最終的には迷いつつも切り出した。
「・・北条君は
　家の近くの公園の遊具で
　首を吊っていたそうです」
ふたたび室内がどよめいた。
その喧噪の中、
ボクは一人小さく震えていた。

ボクはふと詠夢の小説のことが気になった。
こっそりとスマホを取り出して
小説投稿サイト『虚実の迷宮』にアクセスした。

『夜霧家の一族』（Mr.M）

新たな話が公開されていた。