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懺悔
しおりを挟む四年前の春、彼女と出会ったことは今でも強烈に、鮮明に覚えている。
ピアノに興味が無い人間でも、名前は絶対に聞いたことのある有名なピアニストの娘が、両親と共にドイツから日本へ帰国したと噂で聞いていた。
その娘ももちろんピアノをやっていて、僕と同じように天才だ奇跡だのと言われていた。
でもそれは有名なピアニストの娘だから、単に世間から持ち上げられているだけだ。僕はそう思っていた。
テレビのニュースやネットの露出が多いから鬱陶しくて、彼女の名前は目に入らないように遮断していた。
どうせ『本物』じゃないくせに。親の七光りで珍しがられているだけのくせに。
その時十三歳だった僕は、ちやほやされている彼女が気に食わなくて、変に敵視していたんだ。一つ歳下のその子にね。本当に僕は幼かった。
彼女の演奏は、聴いたことすらなかった。聴く価値などどうせないだろうと思って、絶対に聴かないようにしていた。半分意固地になっていたんだ。
そんな彼女が、僕が参加するコンクールへ出場すると聞いた。
僕か、彼女か。本物の天才はどっちか!?
……なんて世間は騒いで、僕までメディアに取り上げられることが増えた。
元々天才少年として新聞とか雑誌に載ることはあったけど、彼女のせいでテレビとかのオファーも来てね。まあ大抵、彼女のついでみたいな扱いだったから全部蹴ったけど。
……今だったら絶対受けるのにな。
そしてコンクール当日、ネットに掲載された演奏順はまるで嫌がらせみたいだった。
僕の次に弾くのが、彼女。
抽選とか運営側は言ってたけど、間違いなく意図的だろう。
僕のピアノは見世物じゃない。彼女のせいでエンタメ的に見られるなんて堪ったもんじゃない。僕の価値を見誤るな。
腹が立ったが、同時にチャンスだとも思った。彼女を潰せるチャンスだと。
『本物』がどちらか、僕が思い知らせてやる。
そしたら世間だってメディアだって、彼女を天才だと持て囃すことはなくなるだろう。そして本物である僕が、スポットライトを浴びるんだ。
君は所詮、親の名を借りただけの凡才さ。
そんな捨て台詞すら用意して、僕は控え室で彼女を待ち構えていた。
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