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8話 嫌がらせ
しおりを挟む「学内コンクールの開催日まであとわずかですが、今日は推薦枠を決めようと思います」
ホームルームの時間、教師がダンボールで作った箱を教壇の上に置いてそう告げる。
学内コンクールは三日間行われ、うち二日間を予選、最終日を本選として日程が組まれている。
推薦枠は予選の結果に関わらず必ず本選に参加できるという、いわゆるシード枠だ。
生徒の意思で決められるが、基本的にはそのクラスの最優秀者が選ばれることが多い。
投票用の小さな紙が配られる。
このクラスの奴の名前なんて一人も覚えてない。『三つ編みの女子』とだけ書いて投票の箱に入れた。
教師が集計している間、雑談するクラスメイトたちが何やらチラチラとこちらに視線を送ってくる。……ああ、ウザい。
「結果が出ました、が……このクラスの推薦枠は、春若杏梨さんです」
「……は?」
我ながら何とも間抜けな声が出る。
教師も私が選ばれるとは思っていなかったのか、困ったように私を見てくる。
何かの間違いじゃないの?
そう思ってクラスの奴らの顔を見たら、クスクスと笑いあっている。
……ああ、そういうことね。こいつら、マジで性格悪い。
示し合わせて私に投票したんだ。私が人前でピアノ弾けないの知ってるくせに。
「あの。私元々コンクール参加する気ないから。別の人選び直して、枠もったいないから」
教師も当然、私が弾けないことを知っている。断れば、助け舟だと思ったのか教師は何度も頷いた。
「そ、そうね。じゃあもう一度──」
「すいませーん。いくらなんでも特別扱いしすぎじゃありませんか?」
三つ編みの女子が、手を挙げて意見する。ハイエナ女子のうちの一人だ。
「学内コンクールは生徒全員参加ですよね。春若さんだけどうして免除が認められてるんですかあ?」
「そ、それはね……」
「ここは音楽科です。人前で演奏できないとか、そんなの認められないでしょ」
ハイエナ女子が非難すれば、同調の拍手がクラスの一部で起きる。集団になれば気が大きくなる心理、マジで滅せよ。
私に反感持つのはわかるけど、言われっぱなしは性にあわない。
「……あのさ、言っとくけど。弾けなくてもいいからこの学校に来てくれって言ったの、校長だから」
「え?」
「文句あんなら校長に言いなよ。あとさあ」
三つ編みの女子は面食らった顔してるけど、それは事実。
私がピアノを人前で弾けなくなった事情をわかっていてもなお、校長は私に来て欲しいと頭を下げて来たんだ。
特別扱いを許したのは校長なんだから、私に文句を言われても困る。
「私がコンクールで弾けずに情けない姿晒して恥かくの期待したんだろうけど、それで貴重な推薦枠削ってどうすんの? いくら学内のコンクールだからって、今後のこと考えたら意地でも本選行くべきでしょ」
音楽で食べていけるのなんてほんの一握り。学内コンクールなんて、実力をアピール出来る格好の場なのに。
学校推薦で大学狙うなら、評定平均上げたい奴は推薦枠全力で取るべき。それを捨ててまで私の醜態見たいとか、頭が足りなさすぎる。
しん……と教室が静まり返る。
多分、中には私に投票したくない人もいたんだろう。何人か俯いてる子がいる。でも同情はしない。
結託だかなんだか知らないけど、それで自分の可能性潰してたんじゃワケないわ。
「……まあいいや。アンタたちが自ら放棄したんだもんね。余計なお世話か」
一度は選び直しのチャンスを与えたのに、蹴ったのはそっちだ。慈悲なんていらないか。
「いいよ、撤回する。選び直ししなくていいよ。推薦枠は私ね」
反対の声は出なかった。今更『やっぱり選び直ししてください!』なんて恥ずかしくて言えないんだろう。
くだらない。なんで私のこと放っておいてくれないんだろう。
私はアンタたちに興味ないし、放っておいてくれたらお互いこんな無駄な争いしなくて済むじゃん。
はあ……と、うんざりしたため息が出てしまう。
教師も窘めやしないし、もうどうでもいいやと思いながら、鞄を持って勝手に教室から出た。
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