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2巻
2-3
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「私が言えたことではないが……あまり無理をしないでくれ。君が苦しい思いをするくらいなら――」
無意識に手が伸びた。目の下をなぞるように触れる。
驚いたのか、マグノリアが持っていたハサミを取り落とす。カシャンッと音が鳴った。
「――べ、別に無理なんてしてないわ! もともと勉強はしなければならないんだもの。苦しいなんて思ったこともないわ!」
マグノリアは頬を赤くし、パッと顔を背けた。
「!」
その反応で私は我に返った。慌てて手を引っ込める。
やってしまった。また断りもなく勝手に触ってしまった。
ついこの間、気を付けようと戒めたばかりだというのに……私は何をしているんだ!? いよいよ理性というものを失ってしまったのか?
――ただ、時折無性にマグノリアに触れたくなるのだ。
年頃の女性に勝手に触れてはいけないことぐらいわかっているのに、手を伸ばしたくなる。その髪に、頬に、耳に。触れたい、反応が見たい。私だけがずっと……
「すまない、マグノリア」
一体私はどうしてしまったんだ……いろいろな意味を込めて、マグノリアに謝罪する。
そもそも先の発言は、頑張ってくれている彼女に対して失礼だったかもしれない。
「君が苦しい思いをするくらいなら、やめてもらってもいいんだ」などと……望んでもいないくせに。マグノリアとて、快く思わないだろう。
顔を真っ赤にさせるほど怒らせてしまった。きちんと謝りたい。
「不愉快にさせたのなら謝る。失言だった」
「えっ? いや、そんなに謝ることじゃ……」
頭を下げると、マグノリアが私の両肩を押した。弾みで顔を上げると、マグノリアの困惑が滲んだ瞳とぶつかる。
「怒らせるつもりはなかったんだ。ただ、私は君の身体が心配で……」
「ええ、それは十分わかっているわ。というか、私は怒ってないのだけど……」
「ん?」
首を捻れば、マグノリアは顔を横に振る。どうやら本当に怒っていないらしい。私の早合点だったのだろうか。
「そうか……君が顔を真っ赤にするものだから、てっきり私の発言が相当頭に来たのだと……」
「う……それは確かにレイのせいだわ!」
「では、やはり謝罪を――」
「ああ、待って! そういうことじゃないんだってば! やめにしましょう。この話、終わりが見えないわ!」
「何してんだ、お前ら」
呆れるような声が、私たちの会話を斬り捨てた。
「フィル」
今日の訓練を終えて直行してきたようだ。
フィルが身につけているのは、訓練生が着るシンプルなシルバーのコートだ。腕にカルヴァンセイル国の紋章が刻まれており、黒いパンツとブーツが印象を引きしめる。
こいつのこの格好を見るのは久しい。
初めてフィルの制服姿を見たマグノリアは、興味津々といった様子だ。上から下までじろじろと遠慮なく眺めている。
「……わ、本当にちゃんと騎士なのね」
フィルが腰に手を当てて、鼻で笑う。
「当たり前だろ。まさか騎士団に入るっての、嘘だと思ってたのかよ?」
「見栄を張って話を盛ったと思ってたわ」
「ふざけんなよ」
マグノリアが冗談を言うと、フィルは目を吊り上げた。
無遠慮に手を伸ばし、彼女の両頬を引っ張る。
「いひゃい、いひゃい!」と叫び、マグノリアはフィルをポカポカと叩いた……相変わらず仲がいいな。
「それで、お前はどうしてここに来たんだ? 紅茶か? メアお手製のクッキーか?」
どうせお菓子目的だろうと踏んで問うが、フィルからは意外な答えが返ってきた。
「それはあとでいただくとして……レイに手紙を預かってきたんだよ。差出人的に、早いとこ報告した方がいいと思って」
「手紙?」
フィルから白い封筒を受け取り、裏返す。バーネット侯爵家の封蝋だ。
「ロッティ嬢からか」
さっそく封を開けて中身を確認する。彼女らしい美しい文字が並んでいた。
文章に目を通していく。
「……ロッティ様、なんて?」
フィルに引っ張られて赤くなった両頬を手で擦り、マグノリアが尋ねてきた。
「要約すると、『デビュタントの件について内密に話をしたい。今度会えないか』だそうだ。私だけではなく、マグノリアとフィルにも指名が入っている」
「待て。マグノリアはわかるけど、俺関係ねえだろ」
フィルが睨んでくるが、そう書かれているのだから私に文句を言われても困る。
「侯爵令嬢の誘いを無下にするのか? 別に構わないが、私は協力しないぞ」
行きたくないなら自力で断れと暗に伝えたら、チッと舌打ちが飛んできた。
「くそ、やってらんねえ。マグノリア、大量の菓子をここへ用意しろ!」
強制参加が決まったフィルは、ヤケ食いに走ることにしたようだ。
マグノリアがクスクスと笑う。そしてフィルを慰めるべく、控えていたメイドを呼んだのだった。
❖ ◇ ❖
数日後。
私とフィル、マグノリア、ロッティはキャリントン伯爵家の応接室に集まった。
ロッティが内密に、と言うのであれば王城で会うわけにいかない。バーネット侯爵家なんてもっての外だ。侯爵の耳に入れば一大事だから。
こうして消去法で残された場所……キャリントン伯爵家に白羽の矢が立ったのだった。
いつもなら『リトル・ティーガーデン』で会話を楽しむところだが、誰が聞き耳を立てているかわからない。マグノリアに頼んで応接室を借りた。
人払いを済ませているから、この部屋には私たち以外に誰もいない。
テーブルを挟んだ向かい側には、キャラメル色の髪をまっすぐに流した令嬢――ロッティ・バーネットが座っている。
世間を巡る噂から、ロッティは私とマグノリアが恋仲だと誤解しているらしい。マグノリアと共に婚約者候補に選ばれた彼女は、すでにアピールの場で手を抜き、わざと負けることを宣言していた。
内密の話とは、おそらくその打ち合わせだろう。
こうして秘密の会議が幕を開けた。
「本日はお集まりいただき、感謝いたします。さっそくですが……五年後のデビュタント、マグノリアさんは何をなさるか決めましたか?」
名指しされたマグノリアは顔色が冴えない。何度か口をもごもごとさせたあと、ようやく答えた。
「それが……ずっと考えてはいるけど、これといっていい案がないの」
「だろうな」
間髪容れずに同意するフィルを、マグノリアがキッと睨む。
それを横目で見ながら、私はロッティに尋ねた。
「ロッティ嬢は何をするんだ?」
「わたくしはお父様のご提案で剣の舞を披露いたします。女性の剣舞は珍しいですし、印象に残るだろうとお考えのようですわ」
「剣舞か……ちょっと興味をそそられるな」
剣技には目がないフィルが反応する。自らも剣を学んでいるからこそ、好奇心をくすぐられたのだろう。
ロッティの剣舞か……手を抜いてもらったところで、どのくらいのハンデになるのか。あまり想像したくないな。
「ロッティ嬢の舞ならレベルが高そうだ。それを超えるには、強烈なインパクトが必要かもしれないな」
フィルも「だよなあ……」と同意し、考え込んでいた。やがて、彼はロッティに向かって尋ねる。
「というか、もうちょっと地味な演目に変更できないのか? 剣舞じゃなくて、もっと――」
「お父様がお選びになった演目を変えるだなんて許されることではありませんわ」
遮るように……いや、捲し立てるようにロッティが答えた。キャロットオレンジの瞳が無機質に開く。
奇妙な迫力があった。
ロッティの異質な雰囲気に、寸の間、場が沈黙に包まれる。
私たちの顔を見て、彼女はハッとしたように一瞬だけ固まった。すぐに切り替え、目を細めて柔和な笑みを浮かべる。
「……わたくしのお父様を説得するのは難しいですわ。申し訳ないのですが」
今のは一体……ロッティは何事もなかったかのように振る舞っているが、明らかに様子がおかしかった。
以前から彼女は、父親であるバーネット侯爵の前で異常なほど丁寧な振る舞いをしている。実の父親に対して、畏怖の念でも抱いているのか?
バーネット侯爵家の名誉を何よりも重んじる彼のことだ。ご息女にも、王家に匹敵するほど厳しい教育を施していそうだとは思う。もしそうであれば、ロッティの必要以上に従順な態度も頷ける。
ロッティに演目を変えてもらうのが無理なら……と、フィルは別案を思いついたらしい。
「インパクトが残ることか……あ、なら大食いとかどうだ? マグノリア、甘いもん好きだろ? 陛下がドン引くほど食べれば、記憶にも記録にも残せるんじゃねえか?」
「そんな記憶残されたくないわよ!」
ふざけた提案に、マグノリアが両手の拳を握って怒る。
ロッティは人差し指を頬にあてて、ゆっくりと小首を傾げた。
「マグノリアさんは何か得意なことはありませんの? 楽器の演奏や歌唱、あるいは絵画を描くだとか……芸術に限っても、いろいろありそうですが」
ロッティの問いかけに、マグノリアはうっと言葉を詰まらせる。
「……どれも、へ、平均くらいなら……で、できるけど……」
「俺の知らない間に平均はずいぶんと落ち込んだみてえだな」
「フィルッ‼」
憎まれ口を叩くフィルに、マグノリアはソファに置いてあったクッションを投げるふりをする……いや、実際に投げた。フィルは軽々とキャッチし、べっと舌を出す。
マグノリアはそちらを思い切り睨みつけ、唇を尖らせた。
「……正直に言うわ。いくらロッティ様に手を抜いてもらったとしても、とても敵うような特技がないの。打つ手なしよ」
「こうなりゃ、侯爵令嬢サマを攫って会場に行かせないって手段が一番よさそうだな」
肩をすくめるフィルに対して、ロッティは口元を手で隠して微笑んだ。
「ふふ、それは困りますわ。フィルさんを犯罪者にするわけにはいきませんもの」
「まあ、そこは王太子殿下になんとか……」
「な?」とフィルが目配せしてくる。こちらに押しつけるつもりのようだが……私は首を横に振った。
「父上のことだ。デビュタントを後日に延期するだけだと思う」
享楽主義の父上が、不戦勝なんてつまらない結末で納得するはずがない。
マグノリアたちが姿を消そうが怪我をしようが、何がなんでも勝負させようとするだろう。
「力技もダメか。為す術なしだな」
フィルも本気で言ったわけではないのだろう。あっさりと諦める。
どうしたものか……と悩んでいると、ふと花瓶に活けられた花が目に留まった。
「……いや、マグノリアにもアピールできるものが一つある」
「えっ?」
思いついたまま、ほとんど反射的に口にする。マグノリアが目を見張った。
「誰にも負けない君の特技があるだろう?」
「え、えっ? そんなもの、私にあったかしら……」
マグノリアはピンと来てないようだ。
どうして私も今の今まで気付かなかったのか。ある素晴らしい才能が、マグノリアにはあったというのに。
「キャリントン伯爵家といえば美しい庭園が有名だろう? あれほど多種多様な花々……それを管理しているのは誰だ?」
「え? あ……」
マグノリアはようやく私の言いたいことを理解したようだ。
「そっか……お花の世話なら誰にも負けないわ!」
「そうだ。幸運なことに、デビュタントまで五年もの月日がある。そこで提案なんだが……」
「うん!」
ロッティに勝てるかもしれないという希望を抱いたのか、マグノリアの目に輝きが宿る。早く聞きたいと言わんばかりに、彼女はテーブルに手をついて前のめりになった。
「城の庭園を君に任せたい。造ってくれると、いつか言っていただろう?」
今から五年ほど前……まだ出会って間もない頃、幼いマグノリアと交わした約束。彼女は、覚えていてくれただろうか?
期待と少しの緊張を抱く。
「ティーガーデン……私が造るって約束した……」
「よかった。忘れられていなくて」
「嬉しい。まさかそんな昔のことを、レイが覚えていてくれたなんて……」
マグノリアが懐かしむように目を細める。私もつられて口元が緩んだ。
フィルもいい案だと思ったらしい。軽く頷く。
「五年も準備期間がありゃ、結構いいのが作れるんじゃねえの? 城の庭園を使うんならお披露目も楽だし、いいことずくめだな」
ロッティは両手の手のひらを唇の前で合わせ、笑みを浮かべていた。
「素晴らしい案ですわ。剣舞よりスケールが大きいでしょうし、キャリントン伯爵家のイメージにもぴったりですわね」
「ええ……! なんだか希望が見えてきたわ。私、最高に素敵なティーガーデンを造って、ロッティ様に勝つわ!」
マグノリアがやる気に燃える。私たちに向かって高らかに宣言すると、ぐっと拳を握って突き上げたのだった。
第八章 裏切りと蘇る悪女の記憶
【マグノリアの手記】
悪女になる夢を見る頻度は、年を重ねるごとに増えている。
月に一度、週に一度……今では毎日のように。途中で目覚めることさえ許されず、強制的に見続けている。
夢を見始めてからもう十年……私はもうすぐ十六になるわ。
もう一人の私は、こちらの私と同じような嫌がらせを受けているみたい。
もし、レイとフィルが守ってくれていなかったら……私も、悪意に対して悪意で返す人生を歩んでいたのかしら。
そんなことを考えてしまうくらい、とても現実じみた夢。
……今日初めて見た夢は、今まで見てきた中でも最低の悪夢だった。今もまだ、震えが止まらないくらい恐ろしいもの。
レイとフィルが、私を断罪する。そんな、ありえない……夢よ。
王太子の婚約披露パーティー。観衆の視線を浴びながら、もう一人の私はレイたちの前で跪いていた。
ロッティ様を殺害しようとしたなんて、あらぬ疑いをかけられて。
「マグノリア・キャリントン。君は殺人未遂の罪に問われている」
夢の中で、レイはロッティ様と婚約していた。底から冷えるような氷の眼差しを、彼が私に向けてくる。
あたたかくて、優しい。包み込んでくれるみたいな、いつもの瞳はどこにもなくて……まるで知らない人のよう。
レイの隣に立つフィルは、出会った時と同じくらい怖い顔をしていた――私を心の底から軽蔑するような、敵意を感じる。
二人の視線が、痛い。針の筵に座らされているみたい。
レイの言葉を受けて、もう一人の私が叫んだ。
「待ちなさいよ! 私はそんなこと知らないわ!」
「知らないと言っても、君が、私の婚約者であるロッティ・バーネット嬢を階段から突き落とそうとするのを目撃した者が複数いる。それをどう説明する?」
その一言だけで、私の反駁はあっけなく潰されてしまう。
ただ普通にパーティーに参加していただけだった。
それなのに……夢の中の私は、階段からロッティ様を突き落とそうとしたのだという。ナイフを持って、逃げる彼女に迫ったのですって。
「そいつらが嘘をついているのよ! 私は神に誓ってやっていないわ!」
夢の中の私は必死に訴える。
でも『悪女マグノリア』の言うことなんて、誰一人信じてくれない。
私を見る周りの眼差しは、忌々しそうなものばかり。蔑みに満ちている。
「私、そんなことはしてないわよ! 大体ね、やるとしてもこんな人目があるところで堂々と行うはずないでしょ!?
どいつもこいつも、少しはおかしいと思いなさいよ!」
レイも、フィルも、まったく私の話を聞いてくれない。
どれだけ「違う」と叫んでも、稀代の悪女の醜い抵抗だと取られるだけ。
私がどこにいたか、何をしていたか伝えても、戯言だと流される。
どうして、レイ。どうして私の話を聞いてくれないの?
こちらの私の声は、夢の中には届かない。
もう一人の私は確かに褒められるような人物じゃなかった。だけど、これは冤罪よ。
ロッティ様がレイの隣に並ぶ。怯えたように私を見る。
どうしてこんなことをしたのですか? そうロッティ様が目で語る。
レイは彼女を守るように自分の背に庇った。
「マグノリア・キャリントン。君を処刑する」
もう一人の私の焦りと混乱が、私の中にも流れ込んでくる。
ナイフを持ってロッティ様に迫った? いいえ……刃を突き立てられたのは、私の方だわ。
レイの断罪が、心に突き刺さる。
なんで、どうして。
夢の中の私の声は、誰にも届くことはない。
俯瞰してその様子を見ている私も、彼女と同じように傷ついていく。
これは悪い夢。ただの……悪い夢なのに、どうしてこんなにも胸が痛むのかしら。
本当に過去に言われたことがあるみたいに、レイの言葉が鮮明に思い出せる。
「君を処刑する」……そんなこと、レイが言うはずがないのに。
❖ ◇ ❖
あれからまもなく五年が経つ。
私とフィルは十八になり、マグノリアももうじき十六になる。
デビュタントでのアピールに向けて、マグノリアは毎日王城へ通っている。着実に庭園を造り上げていた。
この数年間、新たな『悪女化の芽』が生まれることはなかった。てっきりデビュタントへの準備を妨害してくるかと思ったのだが……今のところその兆候はない。
気休めではあるものの、キャリントン伯爵家に加えて、王城の庭園にも監視を付けている。とはいえ、城で堂々と悪事を働く命知らずがいるとは思いたくないが……
デビュタントの日まで、あと半年。
奇しくもそれは、逆行前にマグノリアを断罪しようとした日とまったく同じ日付だった……これも、何かの運命なのだろうか。
時を巻き戻されたあの日に、着々と近づきつつある。
「――レイ、何ぼけっとしてんだよ。心配事でもあんのか?」
私室で本を読んでいたのだが、いつの間にか思考に意識を取られていた。
放心しているのを見抜いたフィルが、私の額にデコピンをする。
「ん、ああ……悪い」
フィルは時が巻き戻る前と同じ、私の護衛騎士になっていた。
剣の腕が際立っていたおかげで、逆行前よりかなり早く専属護衛に任命されたのだ。
立派な黒いサーコートを着用するフィルは、様になっている。私が白い軍服を着ているから、対になる色で仕立てたのだと聞いていた。
見目は悪くないのに……相変わらず髪がはねているのが残念だ。手入れをすれば完璧だろうに。
とはいえ、こいつの素材のよさに気付いている令嬢は意外と多い。私と同行している時に熱い視線を送られているのをよく見かける。
当の本人はわかっているのかいないのか、興味はなさそうだが。
「なんだよ、人のことじろじろ見て。言いたいことでもあんのか?」
勝手な感想を抱いていたら、怪しまれてしまった。片眉を上げてフィルが私を睨む。
「いや、特にない。庭園の様子でも見に行こうか」
本人に告げたところで、余計なお世話だと一蹴されるだけだろう。
話を切り上げて、マグノリアの庭園へ行くことにした。
無意識に手が伸びた。目の下をなぞるように触れる。
驚いたのか、マグノリアが持っていたハサミを取り落とす。カシャンッと音が鳴った。
「――べ、別に無理なんてしてないわ! もともと勉強はしなければならないんだもの。苦しいなんて思ったこともないわ!」
マグノリアは頬を赤くし、パッと顔を背けた。
「!」
その反応で私は我に返った。慌てて手を引っ込める。
やってしまった。また断りもなく勝手に触ってしまった。
ついこの間、気を付けようと戒めたばかりだというのに……私は何をしているんだ!? いよいよ理性というものを失ってしまったのか?
――ただ、時折無性にマグノリアに触れたくなるのだ。
年頃の女性に勝手に触れてはいけないことぐらいわかっているのに、手を伸ばしたくなる。その髪に、頬に、耳に。触れたい、反応が見たい。私だけがずっと……
「すまない、マグノリア」
一体私はどうしてしまったんだ……いろいろな意味を込めて、マグノリアに謝罪する。
そもそも先の発言は、頑張ってくれている彼女に対して失礼だったかもしれない。
「君が苦しい思いをするくらいなら、やめてもらってもいいんだ」などと……望んでもいないくせに。マグノリアとて、快く思わないだろう。
顔を真っ赤にさせるほど怒らせてしまった。きちんと謝りたい。
「不愉快にさせたのなら謝る。失言だった」
「えっ? いや、そんなに謝ることじゃ……」
頭を下げると、マグノリアが私の両肩を押した。弾みで顔を上げると、マグノリアの困惑が滲んだ瞳とぶつかる。
「怒らせるつもりはなかったんだ。ただ、私は君の身体が心配で……」
「ええ、それは十分わかっているわ。というか、私は怒ってないのだけど……」
「ん?」
首を捻れば、マグノリアは顔を横に振る。どうやら本当に怒っていないらしい。私の早合点だったのだろうか。
「そうか……君が顔を真っ赤にするものだから、てっきり私の発言が相当頭に来たのだと……」
「う……それは確かにレイのせいだわ!」
「では、やはり謝罪を――」
「ああ、待って! そういうことじゃないんだってば! やめにしましょう。この話、終わりが見えないわ!」
「何してんだ、お前ら」
呆れるような声が、私たちの会話を斬り捨てた。
「フィル」
今日の訓練を終えて直行してきたようだ。
フィルが身につけているのは、訓練生が着るシンプルなシルバーのコートだ。腕にカルヴァンセイル国の紋章が刻まれており、黒いパンツとブーツが印象を引きしめる。
こいつのこの格好を見るのは久しい。
初めてフィルの制服姿を見たマグノリアは、興味津々といった様子だ。上から下までじろじろと遠慮なく眺めている。
「……わ、本当にちゃんと騎士なのね」
フィルが腰に手を当てて、鼻で笑う。
「当たり前だろ。まさか騎士団に入るっての、嘘だと思ってたのかよ?」
「見栄を張って話を盛ったと思ってたわ」
「ふざけんなよ」
マグノリアが冗談を言うと、フィルは目を吊り上げた。
無遠慮に手を伸ばし、彼女の両頬を引っ張る。
「いひゃい、いひゃい!」と叫び、マグノリアはフィルをポカポカと叩いた……相変わらず仲がいいな。
「それで、お前はどうしてここに来たんだ? 紅茶か? メアお手製のクッキーか?」
どうせお菓子目的だろうと踏んで問うが、フィルからは意外な答えが返ってきた。
「それはあとでいただくとして……レイに手紙を預かってきたんだよ。差出人的に、早いとこ報告した方がいいと思って」
「手紙?」
フィルから白い封筒を受け取り、裏返す。バーネット侯爵家の封蝋だ。
「ロッティ嬢からか」
さっそく封を開けて中身を確認する。彼女らしい美しい文字が並んでいた。
文章に目を通していく。
「……ロッティ様、なんて?」
フィルに引っ張られて赤くなった両頬を手で擦り、マグノリアが尋ねてきた。
「要約すると、『デビュタントの件について内密に話をしたい。今度会えないか』だそうだ。私だけではなく、マグノリアとフィルにも指名が入っている」
「待て。マグノリアはわかるけど、俺関係ねえだろ」
フィルが睨んでくるが、そう書かれているのだから私に文句を言われても困る。
「侯爵令嬢の誘いを無下にするのか? 別に構わないが、私は協力しないぞ」
行きたくないなら自力で断れと暗に伝えたら、チッと舌打ちが飛んできた。
「くそ、やってらんねえ。マグノリア、大量の菓子をここへ用意しろ!」
強制参加が決まったフィルは、ヤケ食いに走ることにしたようだ。
マグノリアがクスクスと笑う。そしてフィルを慰めるべく、控えていたメイドを呼んだのだった。
❖ ◇ ❖
数日後。
私とフィル、マグノリア、ロッティはキャリントン伯爵家の応接室に集まった。
ロッティが内密に、と言うのであれば王城で会うわけにいかない。バーネット侯爵家なんてもっての外だ。侯爵の耳に入れば一大事だから。
こうして消去法で残された場所……キャリントン伯爵家に白羽の矢が立ったのだった。
いつもなら『リトル・ティーガーデン』で会話を楽しむところだが、誰が聞き耳を立てているかわからない。マグノリアに頼んで応接室を借りた。
人払いを済ませているから、この部屋には私たち以外に誰もいない。
テーブルを挟んだ向かい側には、キャラメル色の髪をまっすぐに流した令嬢――ロッティ・バーネットが座っている。
世間を巡る噂から、ロッティは私とマグノリアが恋仲だと誤解しているらしい。マグノリアと共に婚約者候補に選ばれた彼女は、すでにアピールの場で手を抜き、わざと負けることを宣言していた。
内密の話とは、おそらくその打ち合わせだろう。
こうして秘密の会議が幕を開けた。
「本日はお集まりいただき、感謝いたします。さっそくですが……五年後のデビュタント、マグノリアさんは何をなさるか決めましたか?」
名指しされたマグノリアは顔色が冴えない。何度か口をもごもごとさせたあと、ようやく答えた。
「それが……ずっと考えてはいるけど、これといっていい案がないの」
「だろうな」
間髪容れずに同意するフィルを、マグノリアがキッと睨む。
それを横目で見ながら、私はロッティに尋ねた。
「ロッティ嬢は何をするんだ?」
「わたくしはお父様のご提案で剣の舞を披露いたします。女性の剣舞は珍しいですし、印象に残るだろうとお考えのようですわ」
「剣舞か……ちょっと興味をそそられるな」
剣技には目がないフィルが反応する。自らも剣を学んでいるからこそ、好奇心をくすぐられたのだろう。
ロッティの剣舞か……手を抜いてもらったところで、どのくらいのハンデになるのか。あまり想像したくないな。
「ロッティ嬢の舞ならレベルが高そうだ。それを超えるには、強烈なインパクトが必要かもしれないな」
フィルも「だよなあ……」と同意し、考え込んでいた。やがて、彼はロッティに向かって尋ねる。
「というか、もうちょっと地味な演目に変更できないのか? 剣舞じゃなくて、もっと――」
「お父様がお選びになった演目を変えるだなんて許されることではありませんわ」
遮るように……いや、捲し立てるようにロッティが答えた。キャロットオレンジの瞳が無機質に開く。
奇妙な迫力があった。
ロッティの異質な雰囲気に、寸の間、場が沈黙に包まれる。
私たちの顔を見て、彼女はハッとしたように一瞬だけ固まった。すぐに切り替え、目を細めて柔和な笑みを浮かべる。
「……わたくしのお父様を説得するのは難しいですわ。申し訳ないのですが」
今のは一体……ロッティは何事もなかったかのように振る舞っているが、明らかに様子がおかしかった。
以前から彼女は、父親であるバーネット侯爵の前で異常なほど丁寧な振る舞いをしている。実の父親に対して、畏怖の念でも抱いているのか?
バーネット侯爵家の名誉を何よりも重んじる彼のことだ。ご息女にも、王家に匹敵するほど厳しい教育を施していそうだとは思う。もしそうであれば、ロッティの必要以上に従順な態度も頷ける。
ロッティに演目を変えてもらうのが無理なら……と、フィルは別案を思いついたらしい。
「インパクトが残ることか……あ、なら大食いとかどうだ? マグノリア、甘いもん好きだろ? 陛下がドン引くほど食べれば、記憶にも記録にも残せるんじゃねえか?」
「そんな記憶残されたくないわよ!」
ふざけた提案に、マグノリアが両手の拳を握って怒る。
ロッティは人差し指を頬にあてて、ゆっくりと小首を傾げた。
「マグノリアさんは何か得意なことはありませんの? 楽器の演奏や歌唱、あるいは絵画を描くだとか……芸術に限っても、いろいろありそうですが」
ロッティの問いかけに、マグノリアはうっと言葉を詰まらせる。
「……どれも、へ、平均くらいなら……で、できるけど……」
「俺の知らない間に平均はずいぶんと落ち込んだみてえだな」
「フィルッ‼」
憎まれ口を叩くフィルに、マグノリアはソファに置いてあったクッションを投げるふりをする……いや、実際に投げた。フィルは軽々とキャッチし、べっと舌を出す。
マグノリアはそちらを思い切り睨みつけ、唇を尖らせた。
「……正直に言うわ。いくらロッティ様に手を抜いてもらったとしても、とても敵うような特技がないの。打つ手なしよ」
「こうなりゃ、侯爵令嬢サマを攫って会場に行かせないって手段が一番よさそうだな」
肩をすくめるフィルに対して、ロッティは口元を手で隠して微笑んだ。
「ふふ、それは困りますわ。フィルさんを犯罪者にするわけにはいきませんもの」
「まあ、そこは王太子殿下になんとか……」
「な?」とフィルが目配せしてくる。こちらに押しつけるつもりのようだが……私は首を横に振った。
「父上のことだ。デビュタントを後日に延期するだけだと思う」
享楽主義の父上が、不戦勝なんてつまらない結末で納得するはずがない。
マグノリアたちが姿を消そうが怪我をしようが、何がなんでも勝負させようとするだろう。
「力技もダメか。為す術なしだな」
フィルも本気で言ったわけではないのだろう。あっさりと諦める。
どうしたものか……と悩んでいると、ふと花瓶に活けられた花が目に留まった。
「……いや、マグノリアにもアピールできるものが一つある」
「えっ?」
思いついたまま、ほとんど反射的に口にする。マグノリアが目を見張った。
「誰にも負けない君の特技があるだろう?」
「え、えっ? そんなもの、私にあったかしら……」
マグノリアはピンと来てないようだ。
どうして私も今の今まで気付かなかったのか。ある素晴らしい才能が、マグノリアにはあったというのに。
「キャリントン伯爵家といえば美しい庭園が有名だろう? あれほど多種多様な花々……それを管理しているのは誰だ?」
「え? あ……」
マグノリアはようやく私の言いたいことを理解したようだ。
「そっか……お花の世話なら誰にも負けないわ!」
「そうだ。幸運なことに、デビュタントまで五年もの月日がある。そこで提案なんだが……」
「うん!」
ロッティに勝てるかもしれないという希望を抱いたのか、マグノリアの目に輝きが宿る。早く聞きたいと言わんばかりに、彼女はテーブルに手をついて前のめりになった。
「城の庭園を君に任せたい。造ってくれると、いつか言っていただろう?」
今から五年ほど前……まだ出会って間もない頃、幼いマグノリアと交わした約束。彼女は、覚えていてくれただろうか?
期待と少しの緊張を抱く。
「ティーガーデン……私が造るって約束した……」
「よかった。忘れられていなくて」
「嬉しい。まさかそんな昔のことを、レイが覚えていてくれたなんて……」
マグノリアが懐かしむように目を細める。私もつられて口元が緩んだ。
フィルもいい案だと思ったらしい。軽く頷く。
「五年も準備期間がありゃ、結構いいのが作れるんじゃねえの? 城の庭園を使うんならお披露目も楽だし、いいことずくめだな」
ロッティは両手の手のひらを唇の前で合わせ、笑みを浮かべていた。
「素晴らしい案ですわ。剣舞よりスケールが大きいでしょうし、キャリントン伯爵家のイメージにもぴったりですわね」
「ええ……! なんだか希望が見えてきたわ。私、最高に素敵なティーガーデンを造って、ロッティ様に勝つわ!」
マグノリアがやる気に燃える。私たちに向かって高らかに宣言すると、ぐっと拳を握って突き上げたのだった。
第八章 裏切りと蘇る悪女の記憶
【マグノリアの手記】
悪女になる夢を見る頻度は、年を重ねるごとに増えている。
月に一度、週に一度……今では毎日のように。途中で目覚めることさえ許されず、強制的に見続けている。
夢を見始めてからもう十年……私はもうすぐ十六になるわ。
もう一人の私は、こちらの私と同じような嫌がらせを受けているみたい。
もし、レイとフィルが守ってくれていなかったら……私も、悪意に対して悪意で返す人生を歩んでいたのかしら。
そんなことを考えてしまうくらい、とても現実じみた夢。
……今日初めて見た夢は、今まで見てきた中でも最低の悪夢だった。今もまだ、震えが止まらないくらい恐ろしいもの。
レイとフィルが、私を断罪する。そんな、ありえない……夢よ。
王太子の婚約披露パーティー。観衆の視線を浴びながら、もう一人の私はレイたちの前で跪いていた。
ロッティ様を殺害しようとしたなんて、あらぬ疑いをかけられて。
「マグノリア・キャリントン。君は殺人未遂の罪に問われている」
夢の中で、レイはロッティ様と婚約していた。底から冷えるような氷の眼差しを、彼が私に向けてくる。
あたたかくて、優しい。包み込んでくれるみたいな、いつもの瞳はどこにもなくて……まるで知らない人のよう。
レイの隣に立つフィルは、出会った時と同じくらい怖い顔をしていた――私を心の底から軽蔑するような、敵意を感じる。
二人の視線が、痛い。針の筵に座らされているみたい。
レイの言葉を受けて、もう一人の私が叫んだ。
「待ちなさいよ! 私はそんなこと知らないわ!」
「知らないと言っても、君が、私の婚約者であるロッティ・バーネット嬢を階段から突き落とそうとするのを目撃した者が複数いる。それをどう説明する?」
その一言だけで、私の反駁はあっけなく潰されてしまう。
ただ普通にパーティーに参加していただけだった。
それなのに……夢の中の私は、階段からロッティ様を突き落とそうとしたのだという。ナイフを持って、逃げる彼女に迫ったのですって。
「そいつらが嘘をついているのよ! 私は神に誓ってやっていないわ!」
夢の中の私は必死に訴える。
でも『悪女マグノリア』の言うことなんて、誰一人信じてくれない。
私を見る周りの眼差しは、忌々しそうなものばかり。蔑みに満ちている。
「私、そんなことはしてないわよ! 大体ね、やるとしてもこんな人目があるところで堂々と行うはずないでしょ!?
どいつもこいつも、少しはおかしいと思いなさいよ!」
レイも、フィルも、まったく私の話を聞いてくれない。
どれだけ「違う」と叫んでも、稀代の悪女の醜い抵抗だと取られるだけ。
私がどこにいたか、何をしていたか伝えても、戯言だと流される。
どうして、レイ。どうして私の話を聞いてくれないの?
こちらの私の声は、夢の中には届かない。
もう一人の私は確かに褒められるような人物じゃなかった。だけど、これは冤罪よ。
ロッティ様がレイの隣に並ぶ。怯えたように私を見る。
どうしてこんなことをしたのですか? そうロッティ様が目で語る。
レイは彼女を守るように自分の背に庇った。
「マグノリア・キャリントン。君を処刑する」
もう一人の私の焦りと混乱が、私の中にも流れ込んでくる。
ナイフを持ってロッティ様に迫った? いいえ……刃を突き立てられたのは、私の方だわ。
レイの断罪が、心に突き刺さる。
なんで、どうして。
夢の中の私の声は、誰にも届くことはない。
俯瞰してその様子を見ている私も、彼女と同じように傷ついていく。
これは悪い夢。ただの……悪い夢なのに、どうしてこんなにも胸が痛むのかしら。
本当に過去に言われたことがあるみたいに、レイの言葉が鮮明に思い出せる。
「君を処刑する」……そんなこと、レイが言うはずがないのに。
❖ ◇ ❖
あれからまもなく五年が経つ。
私とフィルは十八になり、マグノリアももうじき十六になる。
デビュタントでのアピールに向けて、マグノリアは毎日王城へ通っている。着実に庭園を造り上げていた。
この数年間、新たな『悪女化の芽』が生まれることはなかった。てっきりデビュタントへの準備を妨害してくるかと思ったのだが……今のところその兆候はない。
気休めではあるものの、キャリントン伯爵家に加えて、王城の庭園にも監視を付けている。とはいえ、城で堂々と悪事を働く命知らずがいるとは思いたくないが……
デビュタントの日まで、あと半年。
奇しくもそれは、逆行前にマグノリアを断罪しようとした日とまったく同じ日付だった……これも、何かの運命なのだろうか。
時を巻き戻されたあの日に、着々と近づきつつある。
「――レイ、何ぼけっとしてんだよ。心配事でもあんのか?」
私室で本を読んでいたのだが、いつの間にか思考に意識を取られていた。
放心しているのを見抜いたフィルが、私の額にデコピンをする。
「ん、ああ……悪い」
フィルは時が巻き戻る前と同じ、私の護衛騎士になっていた。
剣の腕が際立っていたおかげで、逆行前よりかなり早く専属護衛に任命されたのだ。
立派な黒いサーコートを着用するフィルは、様になっている。私が白い軍服を着ているから、対になる色で仕立てたのだと聞いていた。
見目は悪くないのに……相変わらず髪がはねているのが残念だ。手入れをすれば完璧だろうに。
とはいえ、こいつの素材のよさに気付いている令嬢は意外と多い。私と同行している時に熱い視線を送られているのをよく見かける。
当の本人はわかっているのかいないのか、興味はなさそうだが。
「なんだよ、人のことじろじろ見て。言いたいことでもあんのか?」
勝手な感想を抱いていたら、怪しまれてしまった。片眉を上げてフィルが私を睨む。
「いや、特にない。庭園の様子でも見に行こうか」
本人に告げたところで、余計なお世話だと一蹴されるだけだろう。
話を切り上げて、マグノリアの庭園へ行くことにした。
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