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1.お姉様と国王暗殺未遂事件

14.お姉様、城へ

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「ふう、えらい目にあったぜ」

 馬車の中を見回すと、中にはヒイロだけでなく、レオ兄さんとアビゲイル姉さんもいる。

「レオ兄さんまで!? 大丈夫なのか?」

「ああ。お前の案はグンジ叔父さんの家に忍び込み証拠を手に入れるというものだったが、どうせなら直接乗り込んでやろうと思ってな」

 ヘラヘラした顔で笑うレオ兄さん。大丈夫なのか?

「のこのこ殺しに来たところを現行犯逮捕するつもりよ」

 アビゲイル姉さんまで楽しそうに笑う。

「マジか。そんな危険な提案、よく爺やが承諾したなあ」
 
 俺が呆れ顔で言うと、レオ兄さんは軽くウインクしながらこう言った。

「誰かさんが上手いこと爺やを引き付けてくれたからな」

 それってもしかして、もしかしなくても……俺のことか!? くそ!

「そういえば、アオイの姿が見えないが」

 俺はキョロキョロと馬車の中を見渡した。
 馬車の中にいるのはヒイロとレオ兄さん、アビゲイル姉さん、それとお伴の兵士二人だけだ。

「アオイには先にグンジ叔父さんの城に忍び込んで家探ししてもらっているわ」

 アビゲイル姉さんが答える。

 確かにアオイは、どこかに忍び込んだりとかそういうのが得意そうだ。くの一みたいだもんな、あの子。

 ヒイロがため息をつく。

「いいですか、ついてくるのは勝手ですけれども、くれぐれも我々の足を引っ張らないように」

 な、なんだとー!? 俺はその言いぐさを聞き、ムッとしながらヒイロを見つめた。

「ミアでいいよ。脚は引っ張らない。そっちこそヘマするんじゃねえぞ」

「当然だ」

 ヒイロはぷい、とそっぽを向く。

「お姫様らしく、せいぜい部屋でおとなしくしていてるんだな」

 もー!なんなんだよこの子は! あれか? 貧乳と呼ばれたことが気にくわないのか!? 可愛くねぇなあ、ホント! 

 そんなこんなで馬車は街を抜け、郊外の暗い森の中へと入っていく。グンジ叔父さんの城までもう少しだ。

 尖った鉄製の門が、錆びた音をたてて開く。馬車が門をくぐると、バタン! と大きな音をたてて背後で門が閉まる。


「ようこそいらっしゃいました。レオ王子御一行さま」

 頭を下げて出迎えてくれたのは、銀色の長い髪をツインテールにした、小柄の可愛らしいメイドさんだった。

 目の周りが黒くてちょっとゴスロリっぽい派手なメイクだが、それでも可愛い。
 俺は家事をするのには不向きそうなフリフリの短いスカートとガーターベルトを凝視した。なんてセクシーな! まさかグンジ叔父さんの趣味か?

「ああ。命を狙われてるみたいなんで、しばらくこの城に避難させてもらうぞ! よろしく! 可愛い子リスちゃん☆」

 レオ兄さんがヘラヘラした笑顔で笑い、メイドの手に口付けする。

 ケッ、このメイドが好みなのは分かるけどさあ。

 ちったあ緊張感を持て!

「こちらへどうぞ」

 メイドは表情も崩さず無表情に案内を続ける。

「どうぞ、ごゆっくりご滞在下さいね」

 扉が閉まる瞬間、メイドは口元に微かな笑みを浮かべたのであった。

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