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レンとヒナタ、その後の話。
#6 あいつの宝物【ヒナタSide】
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「あ、あ、ぁ、ぁぅ……」
レンは泣きそうな声をあげてぱたりと倒れてしまった。
(俺を見て倒れた……)
まあ無理もないのだが。
小学五年生のころ、レンの恋情を無下にして不登校状態にさせたのは紛れもない自分自身だ。
その時、教室近くの階段から男子生徒たちの声が聞こえた。
この状況で鉢合わせてしまうと説明が面倒だ。
あれこれと言い逃れを考えるが、いいものは浮かばない。
こうなったら男子たちが教室に到着する前に身を隠すしか方法はないようだ。
「あぁくそ……っ」
窓にもたれかかるようにして意識を失ったレンを横抱きにする。
「落ちんなよ……!」
慣れない姿勢ながらも廊下を全力で駆け抜ける。
♧
「はぁ…………」
保健室に辿り着き、レンをベッドに寝かせたはいいものの。
「あなたお友だちでしょ? 横にいてあげて」
まさかの教師の一言である。
半ば強制的に椅子へ座らされる。
「えーと……あの、そろそろ始業で……」
恐る恐る教師に訊くと、「いいのいいの」と笑顔で告げる。
「私から担任の先生に言っとくから。元気になるまで側にいてあげて」
心の中で「いいお節介だ!」と頭を抱える。
「いや俺は……」
口を開きかけて、ふと教室での出来事を思い出す。
『側に居てやるよ……』
(そういや、言ったばっかだったっけ……)
開きかけた口をを閉じ、目を伏せる。
やがて、保健室にいた教師は報告のために職員室へと向かう。
レンは落ち着いたのか、気持ち良さそうに寝息を立てる。
(にしても、どうすりゃいいんだ……)
このままこんな至近距離に居続けたら、彼が起きた瞬間また卒倒してしまうだろう。
腕組みをしてレンのことを観察していると、彼が寝返りを打つ。
その拍子に、彼のポケットに入っていたであろう何かが転げ落ちる。
(あ、この前の……)
マーガレットのしおり。
「いつも持ってんな……」
ほぼ無意識に呟く。
あの日も、宝物のように、御守のように握りしめていた。
ふと、気になったことがある。
(そういえば、花言葉って……)
ポケットからスマホを取り出し、「マーガレット 花言葉」と検索する。
(………………………………)
検索結果を静かに眺めて、長いため息を吐く。
「…………そういうことねぇ……………………」
俺に勝ち目はなさそう と呟き、天を仰いだ。
レンは泣きそうな声をあげてぱたりと倒れてしまった。
(俺を見て倒れた……)
まあ無理もないのだが。
小学五年生のころ、レンの恋情を無下にして不登校状態にさせたのは紛れもない自分自身だ。
その時、教室近くの階段から男子生徒たちの声が聞こえた。
この状況で鉢合わせてしまうと説明が面倒だ。
あれこれと言い逃れを考えるが、いいものは浮かばない。
こうなったら男子たちが教室に到着する前に身を隠すしか方法はないようだ。
「あぁくそ……っ」
窓にもたれかかるようにして意識を失ったレンを横抱きにする。
「落ちんなよ……!」
慣れない姿勢ながらも廊下を全力で駆け抜ける。
♧
「はぁ…………」
保健室に辿り着き、レンをベッドに寝かせたはいいものの。
「あなたお友だちでしょ? 横にいてあげて」
まさかの教師の一言である。
半ば強制的に椅子へ座らされる。
「えーと……あの、そろそろ始業で……」
恐る恐る教師に訊くと、「いいのいいの」と笑顔で告げる。
「私から担任の先生に言っとくから。元気になるまで側にいてあげて」
心の中で「いいお節介だ!」と頭を抱える。
「いや俺は……」
口を開きかけて、ふと教室での出来事を思い出す。
『側に居てやるよ……』
(そういや、言ったばっかだったっけ……)
開きかけた口をを閉じ、目を伏せる。
やがて、保健室にいた教師は報告のために職員室へと向かう。
レンは落ち着いたのか、気持ち良さそうに寝息を立てる。
(にしても、どうすりゃいいんだ……)
このままこんな至近距離に居続けたら、彼が起きた瞬間また卒倒してしまうだろう。
腕組みをしてレンのことを観察していると、彼が寝返りを打つ。
その拍子に、彼のポケットに入っていたであろう何かが転げ落ちる。
(あ、この前の……)
マーガレットのしおり。
「いつも持ってんな……」
ほぼ無意識に呟く。
あの日も、宝物のように、御守のように握りしめていた。
ふと、気になったことがある。
(そういえば、花言葉って……)
ポケットからスマホを取り出し、「マーガレット 花言葉」と検索する。
(………………………………)
検索結果を静かに眺めて、長いため息を吐く。
「…………そういうことねぇ……………………」
俺に勝ち目はなさそう と呟き、天を仰いだ。
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