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向き合う
#2 プロポーズ【レンSide】
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「ヒ、ナタ、くん……」
ベッドの横の椅子に腰掛ける少年に思わず声が漏れた。
数秒、唖然として彼を見つめるが、緊張と不安で頭が真っ白になり俯く。
気を失いそうになる。
今までもきっと、そうやって自分を守ってきたんだ。
再び夢の世界へ逃避したくなる気持ちをぐっと押さえ、無意識に閉じていた瞳を開く。
──何からも逃げないで怖いものにも立ち向かう。
それは夢の中だが、トオルが告げた言葉。
その期待に応えたい気持ちが無意識に湧き上がってくる。
(頑張らなきゃ……)
だがその意思に反して身体は小刻みに震え出す。
怖い。
失敗したらどうしよう。
──また笑われたらどうしよう。
フラッシュバックするトラウマに、恐怖が勇気を上回りそうになる。
短い呼吸を繰り返し、隣に座っている彼を見る。
意外な様子に目を見開く。
ヒナタは膝に手を置いてぎゅっと握りしめ、俯いたまま硬直している。
そうか。
(ヒナタくんも、怖いんだ)
きっと僕と同じなんだ。
六年間、ずっと葛藤して。
悩んで、後悔して。
確証はないが、きっと保健室まで運んでくれたのは彼だ。
ベッドの脇に置いてあったマーガレットを綴じたしおりに手を伸ばす。
カサリ、と小さな音を立てて僕の手の中に収まる。
「…………僕、ね……」
しおりを握りしめ、もう会えない大好きな人を脳裏に浮かべる。
「好きな人が、いるんだ」
目を僅かに細めて、トオルとの思い出に浸る。
出会いは急だった。
そして別れも。
「その人は……もう、僕の近くにはいないんだけど」
零れそうになる涙を堪えるように目を伏せる。
「いつも……夢に出てきてくれるんだ」
朝の教室での夢や、今の夢を思い出す。
(僕にとって必要不可欠で、唯一無二の存在)
しおりを握る手に力が入る。
「その人は……トオルは、僕の『怖いものにも立ち向かう』ところが好きって、そう言ってくれたんだ」
夢の中だけどね、と付け足す僕の口角は無意識に上がっていた。
「ヒナタくんのことは、やっぱり今でも怖い」
未だ目を合わせられない彼。
(……ちゃんと、向き合おう)
「……でも、今日は逃げないで話をしたい」
決意を固め、ヒナタの方を向く。
彼は目を見開き、信じられないといった様子でこちらを凝視してくる。
何か言いたげに口を開きかけるが、口から出かけた言葉を飲み込むように口を噤む。
不思議に思ったが、言葉を続けた。
「ヒナタ、くん。あなたと話が、したいです」
自身を奮い立たせて決意と勇気を込め、目の前にいる人物を見据える。
「…………俺は……」
ヒナタが躊躇いの混じる声を発する。
その瞳には僅かな葛藤が生じたが、すぐに消える。
いつのまにかベッドの横に落ちていた黄色いチューリップの造花を彼は手に取り、床に跪く。
何事か、と目を見張る。
彼はチューリップを持った右手を手前に掲げ、迷いのない声で言う。
「────君が、好きだ」
ベッドの横の椅子に腰掛ける少年に思わず声が漏れた。
数秒、唖然として彼を見つめるが、緊張と不安で頭が真っ白になり俯く。
気を失いそうになる。
今までもきっと、そうやって自分を守ってきたんだ。
再び夢の世界へ逃避したくなる気持ちをぐっと押さえ、無意識に閉じていた瞳を開く。
──何からも逃げないで怖いものにも立ち向かう。
それは夢の中だが、トオルが告げた言葉。
その期待に応えたい気持ちが無意識に湧き上がってくる。
(頑張らなきゃ……)
だがその意思に反して身体は小刻みに震え出す。
怖い。
失敗したらどうしよう。
──また笑われたらどうしよう。
フラッシュバックするトラウマに、恐怖が勇気を上回りそうになる。
短い呼吸を繰り返し、隣に座っている彼を見る。
意外な様子に目を見開く。
ヒナタは膝に手を置いてぎゅっと握りしめ、俯いたまま硬直している。
そうか。
(ヒナタくんも、怖いんだ)
きっと僕と同じなんだ。
六年間、ずっと葛藤して。
悩んで、後悔して。
確証はないが、きっと保健室まで運んでくれたのは彼だ。
ベッドの脇に置いてあったマーガレットを綴じたしおりに手を伸ばす。
カサリ、と小さな音を立てて僕の手の中に収まる。
「…………僕、ね……」
しおりを握りしめ、もう会えない大好きな人を脳裏に浮かべる。
「好きな人が、いるんだ」
目を僅かに細めて、トオルとの思い出に浸る。
出会いは急だった。
そして別れも。
「その人は……もう、僕の近くにはいないんだけど」
零れそうになる涙を堪えるように目を伏せる。
「いつも……夢に出てきてくれるんだ」
朝の教室での夢や、今の夢を思い出す。
(僕にとって必要不可欠で、唯一無二の存在)
しおりを握る手に力が入る。
「その人は……トオルは、僕の『怖いものにも立ち向かう』ところが好きって、そう言ってくれたんだ」
夢の中だけどね、と付け足す僕の口角は無意識に上がっていた。
「ヒナタくんのことは、やっぱり今でも怖い」
未だ目を合わせられない彼。
(……ちゃんと、向き合おう)
「……でも、今日は逃げないで話をしたい」
決意を固め、ヒナタの方を向く。
彼は目を見開き、信じられないといった様子でこちらを凝視してくる。
何か言いたげに口を開きかけるが、口から出かけた言葉を飲み込むように口を噤む。
不思議に思ったが、言葉を続けた。
「ヒナタ、くん。あなたと話が、したいです」
自身を奮い立たせて決意と勇気を込め、目の前にいる人物を見据える。
「…………俺は……」
ヒナタが躊躇いの混じる声を発する。
その瞳には僅かな葛藤が生じたが、すぐに消える。
いつのまにかベッドの横に落ちていた黄色いチューリップの造花を彼は手に取り、床に跪く。
何事か、と目を見張る。
彼はチューリップを持った右手を手前に掲げ、迷いのない声で言う。
「────君が、好きだ」
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