【二日に一度更新】とある学校の珍事件簿〜奇人:常人=3:1〜

華凛

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生徒会庶務女装(珍)騒動

女装庶務狂は床ドンされる

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パシャリ、パシャリと何度もシャッターを切る音が響く。
メイド役を恋に押し付けることができなかった新兎は、うろたえていた。

「あのーそろそろ」

パシャリ

「恋く」

パシャリ

「あのぉ」

パシャリ

「もういいので」

パシャリ


新兎が声を張り上げても、恋は一定のタイミングでシャッターを切り続ける。

新兎からは聞こえないが、何かをブツブツ呟きながら機械のように撮影している。

「いやもう大丈夫だから!」
「……ぃぃ…」

新兎の必死の制止に、恋は少しだけ動きを止め、ファインダーを凝視している。
シャッターの音が止まったので、恋の声が大きくなくとも聞こえるようになった。

「可愛い……可愛すぎます……一生涯推します……いえ、生涯と言わず、この命が尽きても推しています……」

すごく怖い。
行き止まりでゾンビに襲われるくらい怖い。

「先輩と同じ校舎に通いたい……同じクラスに……同じ席に……なりたいぃ……」

同じ席とはなんだろう。
自身の上に座ってくる恋とその下で気絶している自分の図が鮮明に浮かんでくる。

「あまりにも可愛すぎる……似合います、似合います、ずっとこの姿でいてください」
「俺周りの視線で死ぬけどいい?」
「そのときは僕も……」
「やっぱ話通じねぇ……!」

新兎は対話の限界に気づき始めるが、恋はそんな新兎の心情を無視して一気に詰め寄ってくる。
顔面にカメラを近づけすぎて、もう何も見えないのではないかという位置で連写している。

「呼吸、瞬き、視線、角度、表情──すべてが狂おしいほど愛おしいです」

きっとフォルダには後で見返して「これ何撮ったんだっけ……」となるような写真が溜まっているに違いない。

(こ、怖い……誰かこの怪物を止めて……)

新兎が白目を向いて気絶しそうになる寸前、パンと乾いた音が響いた。

「これで終わり! 恋くんありがとね~」

それまでクスクスと笑っていたであろう朱雀がいつの間にか恋の真後ろに立っていた。

「……今いいところなんですけど」

恋は朱雀をジトリと睨み、不満そうに漏らす。
新兎はこの勝機を逃がすまいと恋を引き剥がそうと奮闘する。

「恋くん、今日はもういいから……って、うわ!」

もう少しで彼を引き剥がせそうだったそのとき、足が引っかかりバランスを崩してしまう。
そして、倒れ込む──恋の方向へ。

「ったぁ……」

新兎が思わず閉じた目をゆっくり開けると──

「せん、ぱい?」

間近に恋の顔面があった。
最悪の状況である。

「……」
「……」

新兎のカツラの毛先が恋の頬に垂れる。
倒れたことで露わになった恋の瞳に、新兎が映り込む。
二人はしばらく状況を飲み込めずに見つめ合っていたが、やがて恋の顔がみるみる赤く染まり、目の焦点が合わなくなった。

「新兎く~ん、後輩くん押し倒しちゃダメだよ~♡」
「いや事故ですっ!」
「…………せんぱいかわぃぃ……」

恋は「せんぱいかわいい」と壊れた機械のように呟き続ける。
朱雀は状況を面白がるように新兎をからかう。
新兎は光の如くのけ反り、ブルブルと身体を震わせる。


こうして、波乱の広報誌捏造撮影は幕を閉じたのであった。
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