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ラブレター回収(珍)戦線
だいじょばないラブレター枚数と転校生
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「えーっと、状況を整理するとこういうこと?」
中庭に集まった五人は、中央にいる朱雀を静かに見つめる。
生徒会長こと白虎は、恋を不審げに凝視している。
生徒会副会長こと朱雀は、脱走したウサギのぴょんちゃんを抱えて一同の中央に佇んでいる。
生徒会会計ことしづきは、擦りむいた頬に絆創膏を貼り、朱雀を見つめている。
生徒会庶務こと新兎は、外傷こそないものの、心は満身創痍といった疲れ切った顔をしている。
新入生(仮)こと恋は、血走った目で隣に立つ新兎を見ている。
朱雀は抱えているぴょんちゃんを見下ろし、ニコッと微笑む。
「まず、ぴょんちゃんがラブレターを持って中庭方向に逃げた」
次に、しづきと目を合わせる。
「ラブレターを追いかけていたしづちゃんが、ぴょんちゃんを避けようとして低木に突っ込む」
朱雀は何度もため息を吐く新兎を見る。
「新兎くんはラブレターばら撒きをごまかすために『好きな子がいる』と嘘を吐いた」
茶髪を揺らし、新兎を凝視している恋を振り返る。
「で、それを聞きつけた恋くんが捜索場所を飛び出す」
恋を凝視している白虎の前で手を振り、笑う。
「恋くんが持ってる駒込ピペットの先を、倒れているしづちゃんの内臓と間違える」
「……む、そういうことか」
白虎はすべての謎が解けたというように納得顔をする。
一つの誤解が解けた中、一番重要なことを思い出す。
「みんな、ラブレターどんくらい集まったー?」
一番重要なラブレターの数はというと──。
「俺は二枚だ」
「四十枚~」
「ワタクシは五十枚ほど」
「ざっと数えて二百枚くらいですかね……」
「……僕は十枚くらいです」
全員でラブレターを掲げる。
しばしの沈黙が続いた後、白虎が口を開いた。
「……大丈夫そうだな」
「いや全然大丈夫じゃないですよ?」
謎の計算をする白虎に新兎が食い気味にツッコむ。
そのとき、キーンコーン……とチャイムが鳴る。
新兎がおそるおそる時計を見ると、針が指しているのは八時三十分。
……残念ながら、時間切れである。
(終わった……)
今にでも白目を向いて倒れそうな新兎の視界に、走ってくる教師が映った。
◇
「で? どういうこと」
職員室に連行された五人は、腕を組んだ教師に睨まれていた。
「……」
もう十分も沈黙を貫いている一同は、どう説明しようかと悩んでいた。
正直に話せば生徒会のポンコツぶりが職員室内に響いてしまう。
ではそうならないためにどうしたら良いか、と考えると口は開かない。
「あの」
十分間の沈黙を破ったのは恋。
新兎の方をちらりと見てから堂々と教師に言う。
「──ぴょんちゃんです」
「……え?」
教師は困惑の声を漏らす。
新兎も同じように目を丸くする。
「どういうことだ?」
「ウサギのぴょんちゃんが脱走したという放送はお聞きになりましたね?」
「ああ……聞いたが」
いぶかしげに眉をひそめる教師に、恋は淡々と続ける。
「密かに誰かに届けられるはずだったラブレターは、ぴょんちゃんによって大量製造されました」
恋は、印刷室を指さした後、朱雀の腕の中であたりを見回しているぴょんちゃんを見る。
「ぴょんちゃんは小屋から脱走し、誰かの下駄箱に入っていたラブレターをくわえてここに来ました」
初耳の情報をペラペラと話す恋に困惑しながら、新兎はぴょんちゃんを振り返る。
「そして、五百枚を印刷してしまったというわけです」
「……そうなのか?」
教師は真偽を確かめるように残りの四人に視線を送った。
四人は無言で何回も頷き──特に新兎は首がもげんばかりに頷き──恋を肯定した。
「そう、なのか。疑って悪かったな」
教師はまだ困惑したような顔だが、納得したようだった。
◇
「恋くん、さっきのほんと?」
職員室から解放されて教室に戻る途中、新兎は恋に尋ねた。
白虎と朱雀は教室が別なので、新兎と恋としづきで二階の廊下を歩いている。
さっきの、というのはぴょんちゃんがラブレターを大量製造したという話である。
「え、嘘ですよ」
「えぇ!?」
けろっとした顔で答える恋に、新兎はつい大きな声を漏らした。
「だって、普通に考えて時系列的におかしいですよ?」
続けて、「先生たちは職員会議中だったので多少嘘吐いても気付きませんから」と恋はカラカラ笑う。
「なんで嘘なんか……」
「気付きませんか? 先輩のためですよ?」
確かに、あの場で正直に話していれば報告書と反省文は山積みに違いなかった。
「……うーん……ありがと、う?」
救われたが、結果的に嘘を吐かせてしまった罪悪感で微妙な気持ちになる。
「──さ、着きましたよ」
静かに歩いていたしづきが教室の前で足を止める。
「如月さんは転校生でしたね」
しづきは礼儀正しく扉をノックする。
サッと開けた扉の前に、恋を誘導する。
恋は教室に入ると、ホームルーム中のクラスはざわついた。
「──はじめまして。転校生の如月恋です」
中庭に集まった五人は、中央にいる朱雀を静かに見つめる。
生徒会長こと白虎は、恋を不審げに凝視している。
生徒会副会長こと朱雀は、脱走したウサギのぴょんちゃんを抱えて一同の中央に佇んでいる。
生徒会会計ことしづきは、擦りむいた頬に絆創膏を貼り、朱雀を見つめている。
生徒会庶務こと新兎は、外傷こそないものの、心は満身創痍といった疲れ切った顔をしている。
新入生(仮)こと恋は、血走った目で隣に立つ新兎を見ている。
朱雀は抱えているぴょんちゃんを見下ろし、ニコッと微笑む。
「まず、ぴょんちゃんがラブレターを持って中庭方向に逃げた」
次に、しづきと目を合わせる。
「ラブレターを追いかけていたしづちゃんが、ぴょんちゃんを避けようとして低木に突っ込む」
朱雀は何度もため息を吐く新兎を見る。
「新兎くんはラブレターばら撒きをごまかすために『好きな子がいる』と嘘を吐いた」
茶髪を揺らし、新兎を凝視している恋を振り返る。
「で、それを聞きつけた恋くんが捜索場所を飛び出す」
恋を凝視している白虎の前で手を振り、笑う。
「恋くんが持ってる駒込ピペットの先を、倒れているしづちゃんの内臓と間違える」
「……む、そういうことか」
白虎はすべての謎が解けたというように納得顔をする。
一つの誤解が解けた中、一番重要なことを思い出す。
「みんな、ラブレターどんくらい集まったー?」
一番重要なラブレターの数はというと──。
「俺は二枚だ」
「四十枚~」
「ワタクシは五十枚ほど」
「ざっと数えて二百枚くらいですかね……」
「……僕は十枚くらいです」
全員でラブレターを掲げる。
しばしの沈黙が続いた後、白虎が口を開いた。
「……大丈夫そうだな」
「いや全然大丈夫じゃないですよ?」
謎の計算をする白虎に新兎が食い気味にツッコむ。
そのとき、キーンコーン……とチャイムが鳴る。
新兎がおそるおそる時計を見ると、針が指しているのは八時三十分。
……残念ながら、時間切れである。
(終わった……)
今にでも白目を向いて倒れそうな新兎の視界に、走ってくる教師が映った。
◇
「で? どういうこと」
職員室に連行された五人は、腕を組んだ教師に睨まれていた。
「……」
もう十分も沈黙を貫いている一同は、どう説明しようかと悩んでいた。
正直に話せば生徒会のポンコツぶりが職員室内に響いてしまう。
ではそうならないためにどうしたら良いか、と考えると口は開かない。
「あの」
十分間の沈黙を破ったのは恋。
新兎の方をちらりと見てから堂々と教師に言う。
「──ぴょんちゃんです」
「……え?」
教師は困惑の声を漏らす。
新兎も同じように目を丸くする。
「どういうことだ?」
「ウサギのぴょんちゃんが脱走したという放送はお聞きになりましたね?」
「ああ……聞いたが」
いぶかしげに眉をひそめる教師に、恋は淡々と続ける。
「密かに誰かに届けられるはずだったラブレターは、ぴょんちゃんによって大量製造されました」
恋は、印刷室を指さした後、朱雀の腕の中であたりを見回しているぴょんちゃんを見る。
「ぴょんちゃんは小屋から脱走し、誰かの下駄箱に入っていたラブレターをくわえてここに来ました」
初耳の情報をペラペラと話す恋に困惑しながら、新兎はぴょんちゃんを振り返る。
「そして、五百枚を印刷してしまったというわけです」
「……そうなのか?」
教師は真偽を確かめるように残りの四人に視線を送った。
四人は無言で何回も頷き──特に新兎は首がもげんばかりに頷き──恋を肯定した。
「そう、なのか。疑って悪かったな」
教師はまだ困惑したような顔だが、納得したようだった。
◇
「恋くん、さっきのほんと?」
職員室から解放されて教室に戻る途中、新兎は恋に尋ねた。
白虎と朱雀は教室が別なので、新兎と恋としづきで二階の廊下を歩いている。
さっきの、というのはぴょんちゃんがラブレターを大量製造したという話である。
「え、嘘ですよ」
「えぇ!?」
けろっとした顔で答える恋に、新兎はつい大きな声を漏らした。
「だって、普通に考えて時系列的におかしいですよ?」
続けて、「先生たちは職員会議中だったので多少嘘吐いても気付きませんから」と恋はカラカラ笑う。
「なんで嘘なんか……」
「気付きませんか? 先輩のためですよ?」
確かに、あの場で正直に話していれば報告書と反省文は山積みに違いなかった。
「……うーん……ありがと、う?」
救われたが、結果的に嘘を吐かせてしまった罪悪感で微妙な気持ちになる。
「──さ、着きましたよ」
静かに歩いていたしづきが教室の前で足を止める。
「如月さんは転校生でしたね」
しづきは礼儀正しく扉をノックする。
サッと開けた扉の前に、恋を誘導する。
恋は教室に入ると、ホームルーム中のクラスはざわついた。
「──はじめまして。転校生の如月恋です」
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