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第5話
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それから数日が経った。新しい家に引っ越して以来だ。
この場所は街から離れた、建物に囲まれた世界の最も外縁に位置している。
人々が安らげる小さな村、その名は「春の風」。
私は安堵すべきなのだろう。ここでは、リアはぼんやりとした記憶に過ぎないはずだ。しかし、風が強く吹き、窓を叩くたびに、私の胸はざわつく。
この村と文明をつなぐ唯一の道路を見つめながら、距離だけで痕跡を消せるものなのかと自問する。
アシュラバはすぐに順応したようで、残りの箱を整理しながらキッチンで口ずさみながら作業している。でも私は…
『何か理解できないことがあるのか、ここ数日で状況が変わったのか、でもこんなことをしたことに悪い予感がする』と、私はノートをめくりながら思った。
リビングに座って、やるべきことを書き出している。
これまでの経緯を経て、家のすぐ近くに学校を見つけることができた。これで勉強を続けることができる。
有名なコスプレイヤーになる夢を追うべきか、それともすべてを捨てるべきか。実はまだ決めていない。
「アオイ!テレビの横にある箱を倉庫に持って行ってくれる?」アシュラバが台所から声をかけてきた。
「はい」
私は立ち上がり、箱を持って物置部屋へ向かった。それは廊下の真ん中にある、家の主人の命令で閉ざされたドアだった。
家を借りる前に、この部屋には今よく使われるものが保管されていると彼女は言っていた。
正直、その意味がわからなかった。
箱を部屋に下ろすと、中は真っ暗で何も見えなかった。部屋を出ようと振り返った瞬間、何かを踏んでしまい、戸惑った。
それはハサミだった。
かがんで拾い上げると、少し錆びているのがわかった。開けてみようとしたが、固く閉じていた。
数秒間、しつこく試みた後、葵は眉をひそめ、はさみを部屋の奥へ投げ込んだ。突然、金属とプラスチックの音が聞こえた。
『この部屋には何があるの?』
ドアに向かって歩き、ライターを押すと、最初に目に入ったのは、ほこりに覆われたテーブルの上に投げ出されたマダムの衣装だった。その瞬間、ここは物置ではなく、閉鎖された工房だと気づいた。
中央には、油汚れや油染みで覆われたミシンが毛布で覆われており、誰かが急いで隠そうとしたかのようだった。
歩いていると、錆びたハサミや部品でいっぱいの金属製の箱につまずいた。
壁に目をやると、その場しのぎのフックに重いカーテンが掛けられ、光が入るのを遮っていた。
部屋中に散らばって、布のロールが積み上げられ、互いに押し付け合うように、まるでその狭い空間に囚われているかのように見えた。
突然、私は身震いした。
「ここで何が起こったんだ?全部ボロボロだ!奥さんが私たちに見せたくないと思ったのは、これだったんだ!アシュラバはこれを知ってるのか?」
「さっき呼んだでしょ」とアシュラバが部屋に入ってきて言った。
「ああ、これ全部見て、どう思う?奥様は何か理由があってこれを秘密にしているんだと思う」
「それはとても疑わしいね。隠すなんてばかげている。いつかは明るみに出るだろう。誰も知らないということは、奥様が安全に守りたいほど重要なことなんだ」
「それは私が言ったこととは違うよ」
「私の結論は違うよ。これを見て、確かにこれは他の人の目から隠すためにこうされていることを示唆している。それに、それらの機械はとても古そうだ」
「アシュラバ、君の言っていることはまったく理解できない」
「ただ、最初に思いついたことを言っているだけだ」
「そんな意味のないこと言うなら、黙ってろ!」
「うーん、うーん。さあ、ご飯の出来上がりだよ」
「なんで私の気分を台無しにするの?」
部屋を出る時、電気を消す前にまた中を覗いた。
その女性はコスプレの大ファンだったのだろうか、と私は思ったが、古い機械を見て、彼女の作品はそうはならなかったのだろう、結局はそのような状態になってしまったのだろう、と何かが私に告げた。
私たちは食堂に戻った。数分後、アシュラバは私たちが見たものについて一言も口にしなかった。
* * * * *
その日、午後5時46分。
人の変化は突然のものだ。そうだろう。
家路を歩きながら通りを見渡すと、どの家もとても静かな人々に包まれているのがわかる。
空は暗くなり、風は弱まり、街灯のわずかな光が路地を照らしている。
光と影の間で何かが動くのが見えたが、それが何なのかはわからなかった。
「誰だ!」私は呟き、路地の入り口に入ろうとした。
ちょうどその時、背後で物音がした。それは、待っていた乗客に注意を促す車の音に過ぎなかった。
再び路地の方を見返したが、その後は何も異常は見られなかった。
「もういない、私の想像だったんだと思う。もう暗くなってきたから、急いで帰ったほうがいい」
私は家に戻ったが、何かがおかしいと感じた。いつも通り家に入り、帰ったことを伝えた。しかし、その返事は返ってこなかった。
近づくと、ひどい臭いが私の鼻を襲い、咳き込んでしまった。
突然、肺に圧迫感を感じると、窓が開く音が聞こえ、ドアの隙間から緑色の煙が漏れているのが見えた。
その煙は、家全体を覆い尽くすほど濃かった。
『な、何だ?息ができない』
そう思った瞬間、奇妙な感覚に襲われ、吐き気がした。それは…
『血…?』
突然、目の前のドアが開いた。
「あらあら。そんな姿、可愛いじゃない。アオイ」
私の前に立っていたのは、ミズリだった。彼女の手と顔は血でまみれていた。
この場所は街から離れた、建物に囲まれた世界の最も外縁に位置している。
人々が安らげる小さな村、その名は「春の風」。
私は安堵すべきなのだろう。ここでは、リアはぼんやりとした記憶に過ぎないはずだ。しかし、風が強く吹き、窓を叩くたびに、私の胸はざわつく。
この村と文明をつなぐ唯一の道路を見つめながら、距離だけで痕跡を消せるものなのかと自問する。
アシュラバはすぐに順応したようで、残りの箱を整理しながらキッチンで口ずさみながら作業している。でも私は…
『何か理解できないことがあるのか、ここ数日で状況が変わったのか、でもこんなことをしたことに悪い予感がする』と、私はノートをめくりながら思った。
リビングに座って、やるべきことを書き出している。
これまでの経緯を経て、家のすぐ近くに学校を見つけることができた。これで勉強を続けることができる。
有名なコスプレイヤーになる夢を追うべきか、それともすべてを捨てるべきか。実はまだ決めていない。
「アオイ!テレビの横にある箱を倉庫に持って行ってくれる?」アシュラバが台所から声をかけてきた。
「はい」
私は立ち上がり、箱を持って物置部屋へ向かった。それは廊下の真ん中にある、家の主人の命令で閉ざされたドアだった。
家を借りる前に、この部屋には今よく使われるものが保管されていると彼女は言っていた。
正直、その意味がわからなかった。
箱を部屋に下ろすと、中は真っ暗で何も見えなかった。部屋を出ようと振り返った瞬間、何かを踏んでしまい、戸惑った。
それはハサミだった。
かがんで拾い上げると、少し錆びているのがわかった。開けてみようとしたが、固く閉じていた。
数秒間、しつこく試みた後、葵は眉をひそめ、はさみを部屋の奥へ投げ込んだ。突然、金属とプラスチックの音が聞こえた。
『この部屋には何があるの?』
ドアに向かって歩き、ライターを押すと、最初に目に入ったのは、ほこりに覆われたテーブルの上に投げ出されたマダムの衣装だった。その瞬間、ここは物置ではなく、閉鎖された工房だと気づいた。
中央には、油汚れや油染みで覆われたミシンが毛布で覆われており、誰かが急いで隠そうとしたかのようだった。
歩いていると、錆びたハサミや部品でいっぱいの金属製の箱につまずいた。
壁に目をやると、その場しのぎのフックに重いカーテンが掛けられ、光が入るのを遮っていた。
部屋中に散らばって、布のロールが積み上げられ、互いに押し付け合うように、まるでその狭い空間に囚われているかのように見えた。
突然、私は身震いした。
「ここで何が起こったんだ?全部ボロボロだ!奥さんが私たちに見せたくないと思ったのは、これだったんだ!アシュラバはこれを知ってるのか?」
「さっき呼んだでしょ」とアシュラバが部屋に入ってきて言った。
「ああ、これ全部見て、どう思う?奥様は何か理由があってこれを秘密にしているんだと思う」
「それはとても疑わしいね。隠すなんてばかげている。いつかは明るみに出るだろう。誰も知らないということは、奥様が安全に守りたいほど重要なことなんだ」
「それは私が言ったこととは違うよ」
「私の結論は違うよ。これを見て、確かにこれは他の人の目から隠すためにこうされていることを示唆している。それに、それらの機械はとても古そうだ」
「アシュラバ、君の言っていることはまったく理解できない」
「ただ、最初に思いついたことを言っているだけだ」
「そんな意味のないこと言うなら、黙ってろ!」
「うーん、うーん。さあ、ご飯の出来上がりだよ」
「なんで私の気分を台無しにするの?」
部屋を出る時、電気を消す前にまた中を覗いた。
その女性はコスプレの大ファンだったのだろうか、と私は思ったが、古い機械を見て、彼女の作品はそうはならなかったのだろう、結局はそのような状態になってしまったのだろう、と何かが私に告げた。
私たちは食堂に戻った。数分後、アシュラバは私たちが見たものについて一言も口にしなかった。
* * * * *
その日、午後5時46分。
人の変化は突然のものだ。そうだろう。
家路を歩きながら通りを見渡すと、どの家もとても静かな人々に包まれているのがわかる。
空は暗くなり、風は弱まり、街灯のわずかな光が路地を照らしている。
光と影の間で何かが動くのが見えたが、それが何なのかはわからなかった。
「誰だ!」私は呟き、路地の入り口に入ろうとした。
ちょうどその時、背後で物音がした。それは、待っていた乗客に注意を促す車の音に過ぎなかった。
再び路地の方を見返したが、その後は何も異常は見られなかった。
「もういない、私の想像だったんだと思う。もう暗くなってきたから、急いで帰ったほうがいい」
私は家に戻ったが、何かがおかしいと感じた。いつも通り家に入り、帰ったことを伝えた。しかし、その返事は返ってこなかった。
近づくと、ひどい臭いが私の鼻を襲い、咳き込んでしまった。
突然、肺に圧迫感を感じると、窓が開く音が聞こえ、ドアの隙間から緑色の煙が漏れているのが見えた。
その煙は、家全体を覆い尽くすほど濃かった。
『な、何だ?息ができない』
そう思った瞬間、奇妙な感覚に襲われ、吐き気がした。それは…
『血…?』
突然、目の前のドアが開いた。
「あらあら。そんな姿、可愛いじゃない。アオイ」
私の前に立っていたのは、ミズリだった。彼女の手と顔は血でまみれていた。
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