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乱暴に閉められたドアの音と共に、室内にあった重苦しい空気が消えた。同時に、先程まで馬場に対し、凄まじい闘気を放っていた由が、別人のように逢莉に抱き着く。
「怖かったわ~逢莉ちゃ~ん。馬場ちゃんったら、急に力使うんだもの」
「とか言いつつ、楽しそうだったわよ。由さん……」
抱き着いて来た彼に動じる事なく、逢莉が仕方なさそうに返す。
「あ、バレた?」
「バレバレよ。馬鹿ね」
おどける由とは逆に、クールに返した逢莉が肩を竦める。
「でも」
ふと今までのクールな表情とは打って変わり、暖かい微笑みを見せた逢莉が感謝の気持ちを口にする。
「助けてくれてありがとう」
「ふふ、どう致しまして。愛しの逢莉ちゃんの為なら、あたし火の中でも助けちゃうわよ」
微笑む彼女の髪を撫でた由が、愛しげに逢莉を見遣り。
しかし、涼しく笑った逢莉がそんな彼を離す。
「でも、いい加減離れて、暑苦しいから」
「あら、つれないわねぇ」
寂しげに彼女から離れた由が呟くが、涼しい笑顔を浮かべたまま、逢莉が一掃する。
「お生憎様。あたし達、そんなベタベタする関係じゃないでしょ」
「あら、結構お似合いだと思うけどねぇ。年齢的にも3歳差で丁度良いし……」
由が何やらぼやいているが、そうである。この二人、相棒であるが、決して恋仲でない。
むしろ、由の100%片想いだ。
「逢莉ちゃん」
不意に一人になった逢莉を、空知が気遣わしげに呼ぶ。気付いた逢莉が、先程の礼を口にし頭を下げる。
「空知さんも、さっきはありがとうございます」
「そんなん別にええ。それより馬場の言うた事、気にする事ないで」
あの男たちも、馬場が言うほど大袈裟な事態にはなっていない事を、空知は既に知っていた。
逢莉の紅蓮刹那は、精神攻撃技だが、幻は幻。
なにより、後々に後遺症が残ることはないよう、逢莉は制御していた。
気遣ってくれる彼に、逢莉は静かに笑みを返し、空知も穏やかに笑みを見せると言葉を続けた。
「あの男たちは能力者になる前から札付きのチンピラやったし、少しは良い薬になったやろ」
そう告げる優しい彼の気遣いに感謝しつつ、逢莉は小さく笑みを浮かべると言った。
「大丈夫です、気にしてなんていませんから」
本当は、あの時の馬場の言葉が胸に突き刺さったけれど。
「……馬場さんの言い分も、100%間違ってるわけじゃないですから」
馬場とて同じ〈朔夜〉の一員。
自分と同じく、能力に怯える人々を救いたいと言う、志しは一緒。
だけど、馬場と自分の間には埋まらない確執があった。
「逢莉ちゃん……」
「……それじゃ、失礼します」
空知が諫めるように呼んだ為、逢莉は手短に挨拶し自分のデスクに戻る。
窓からは丁度、紅月が夜の街を不気味に照らしていた。
「紅月……。血のように紅い月、ね。年々赤みが増していく感じね」
紅月を見上げ呟いた逢莉に、隣のデスクに座る、まだ幼さが残る女の子が話しかけてきた。
「災難でしたね。馬場さんの八つ当たり場所にされて」
「知華ちゃん、そんな言い方……」
苦笑混じりに、逢莉がその女の子を宥めるが、知華ちかと呼ばれた彼女は、不満げに頬を膨らます。
フランス人形のような、クリーム色の長い巻き髪をポニーテールにした、可憐な顔立ちの少女・前田まえだ 知華ちか。
まだ19歳の彼女は、『朔夜』最年少メンバーの一人で、式髪使いの能力者だ。
眉を寄せた知華が、馬場への不満を漏らす。
「だって、ここ最近の馬場さん。前にも増して周りに当たり散らしてるじゃないですか~」
「まぁまぁ、知華ちゃん落ち着きや」
そんな知華を宥めたのは、空知と同じ大阪弁が特徴の中学生ぐらいに見える女の子。
「夏美さん」
「やっほー」
子供みたいな無邪気な笑顔を見せた彼女は、志村 夏美。
「相変わらず年齢無視な恰好ねぇ。なっちゃんは」
「どうゆう意味じゃっ!!」
通り過ぎざまに言い逃げして言った由に、夏美が中指を立てるが、事実なので仕方ない。
シャギーを入れた胸元までの髪、中学生にしか見えない童顔に、小柄な子供体系だが、彼女は正真正銘27歳。
それも空知の奥さんであり、子持ちであるから驚きだ。
一方、夏美をからかって言った由に、眼を据わらせた知華がぼやく。
「夏美さん、あんな変態オカマ野郎の言う事なんて気にしなくて良いですよ」
可愛い顔して毒舌な彼女は、実は由とは昔馴染みである。
好き勝手言われた由が、離れたところにある自分のデスクでくしゃみを連発していた。
「あぁら、誰かあたしの噂してるのかしらねぇ~」
わざとらしく言う知華に、逢莉と夏美は笑顔を引き攣らせた。
前田 知華。
可愛い顔して、とんでもないじゃじゃ馬である。
「あ……」
ふと逢莉が声を上げたので、二人に注目する。
「どないしたん、逢莉ちゃん」
「クロと弥くんが戻ってきたみたいです」
仲間の気配に気づいた彼女に、知華は尊敬の眼差しを向ける。
「よく解りますね、逢莉さん。能力の気配とかって、全然解りませんよ?!」
「うーん。逢莉ちゃんは紅月の能力だけやなく、第六感の方も強いみたいやなぁ。うちは能力の気配なんて解らへんわ」
そう腕を組み感心した夏美は、逢莉より早く能力に目覚めており、その能力は、念力(PK)だ。
「怖かったわ~逢莉ちゃ~ん。馬場ちゃんったら、急に力使うんだもの」
「とか言いつつ、楽しそうだったわよ。由さん……」
抱き着いて来た彼に動じる事なく、逢莉が仕方なさそうに返す。
「あ、バレた?」
「バレバレよ。馬鹿ね」
おどける由とは逆に、クールに返した逢莉が肩を竦める。
「でも」
ふと今までのクールな表情とは打って変わり、暖かい微笑みを見せた逢莉が感謝の気持ちを口にする。
「助けてくれてありがとう」
「ふふ、どう致しまして。愛しの逢莉ちゃんの為なら、あたし火の中でも助けちゃうわよ」
微笑む彼女の髪を撫でた由が、愛しげに逢莉を見遣り。
しかし、涼しく笑った逢莉がそんな彼を離す。
「でも、いい加減離れて、暑苦しいから」
「あら、つれないわねぇ」
寂しげに彼女から離れた由が呟くが、涼しい笑顔を浮かべたまま、逢莉が一掃する。
「お生憎様。あたし達、そんなベタベタする関係じゃないでしょ」
「あら、結構お似合いだと思うけどねぇ。年齢的にも3歳差で丁度良いし……」
由が何やらぼやいているが、そうである。この二人、相棒であるが、決して恋仲でない。
むしろ、由の100%片想いだ。
「逢莉ちゃん」
不意に一人になった逢莉を、空知が気遣わしげに呼ぶ。気付いた逢莉が、先程の礼を口にし頭を下げる。
「空知さんも、さっきはありがとうございます」
「そんなん別にええ。それより馬場の言うた事、気にする事ないで」
あの男たちも、馬場が言うほど大袈裟な事態にはなっていない事を、空知は既に知っていた。
逢莉の紅蓮刹那は、精神攻撃技だが、幻は幻。
なにより、後々に後遺症が残ることはないよう、逢莉は制御していた。
気遣ってくれる彼に、逢莉は静かに笑みを返し、空知も穏やかに笑みを見せると言葉を続けた。
「あの男たちは能力者になる前から札付きのチンピラやったし、少しは良い薬になったやろ」
そう告げる優しい彼の気遣いに感謝しつつ、逢莉は小さく笑みを浮かべると言った。
「大丈夫です、気にしてなんていませんから」
本当は、あの時の馬場の言葉が胸に突き刺さったけれど。
「……馬場さんの言い分も、100%間違ってるわけじゃないですから」
馬場とて同じ〈朔夜〉の一員。
自分と同じく、能力に怯える人々を救いたいと言う、志しは一緒。
だけど、馬場と自分の間には埋まらない確執があった。
「逢莉ちゃん……」
「……それじゃ、失礼します」
空知が諫めるように呼んだ為、逢莉は手短に挨拶し自分のデスクに戻る。
窓からは丁度、紅月が夜の街を不気味に照らしていた。
「紅月……。血のように紅い月、ね。年々赤みが増していく感じね」
紅月を見上げ呟いた逢莉に、隣のデスクに座る、まだ幼さが残る女の子が話しかけてきた。
「災難でしたね。馬場さんの八つ当たり場所にされて」
「知華ちゃん、そんな言い方……」
苦笑混じりに、逢莉がその女の子を宥めるが、知華ちかと呼ばれた彼女は、不満げに頬を膨らます。
フランス人形のような、クリーム色の長い巻き髪をポニーテールにした、可憐な顔立ちの少女・前田まえだ 知華ちか。
まだ19歳の彼女は、『朔夜』最年少メンバーの一人で、式髪使いの能力者だ。
眉を寄せた知華が、馬場への不満を漏らす。
「だって、ここ最近の馬場さん。前にも増して周りに当たり散らしてるじゃないですか~」
「まぁまぁ、知華ちゃん落ち着きや」
そんな知華を宥めたのは、空知と同じ大阪弁が特徴の中学生ぐらいに見える女の子。
「夏美さん」
「やっほー」
子供みたいな無邪気な笑顔を見せた彼女は、志村 夏美。
「相変わらず年齢無視な恰好ねぇ。なっちゃんは」
「どうゆう意味じゃっ!!」
通り過ぎざまに言い逃げして言った由に、夏美が中指を立てるが、事実なので仕方ない。
シャギーを入れた胸元までの髪、中学生にしか見えない童顔に、小柄な子供体系だが、彼女は正真正銘27歳。
それも空知の奥さんであり、子持ちであるから驚きだ。
一方、夏美をからかって言った由に、眼を据わらせた知華がぼやく。
「夏美さん、あんな変態オカマ野郎の言う事なんて気にしなくて良いですよ」
可愛い顔して毒舌な彼女は、実は由とは昔馴染みである。
好き勝手言われた由が、離れたところにある自分のデスクでくしゃみを連発していた。
「あぁら、誰かあたしの噂してるのかしらねぇ~」
わざとらしく言う知華に、逢莉と夏美は笑顔を引き攣らせた。
前田 知華。
可愛い顔して、とんでもないじゃじゃ馬である。
「あ……」
ふと逢莉が声を上げたので、二人に注目する。
「どないしたん、逢莉ちゃん」
「クロと弥くんが戻ってきたみたいです」
仲間の気配に気づいた彼女に、知華は尊敬の眼差しを向ける。
「よく解りますね、逢莉さん。能力の気配とかって、全然解りませんよ?!」
「うーん。逢莉ちゃんは紅月の能力だけやなく、第六感の方も強いみたいやなぁ。うちは能力の気配なんて解らへんわ」
そう腕を組み感心した夏美は、逢莉より早く能力に目覚めており、その能力は、念力(PK)だ。
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