紅月に産まれる獣達~Vendetta ed espiazione~

ィアーリス

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影と人狼

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 そうこうしてる内に、逢莉が気配に気づいた二人が部屋に入ってきた。
 ストリート系ファッションに、前髪を長めにした銀色の髪。
 大人っぽさの中に、まだ幼さを残した顔立ちの少年・黒崖くろがけ 銀次ぎんじ
 苗字と服装から、皆からは〈クロ〉と呼ばれている19歳の彼は、その身に人狼の能力を宿していた。

 そして銀次の隣で、彼とそう変わらない身長の青年。
 頭のてっぺんから足の先っぽまで、黒一色でまとめた彼・林原はやしばら わたる
 左目を長い黒髪で隠し、寡黙な雰囲気を醸し出した彼は、由と同じ25歳だ。
 そしてその能力は、全ての影を操る影使い。

「弥くん!」
「知華」
 自分を呼ぶ知華に気づいた弥が、漆黒のロングコートを翻し、彼女の傍らへやって来る。
「潜入捜査お疲れ様。上手くいった?」
 スマイル全開の知華に、にやけた夏美が冷やかす。
「あ~らら~~。知ー華ちゃんってば弥くんに対しての顔は、気合入っとるねぇ~。やっぱり彼氏には違うんやなぁ」
「なっ、や、やめてくださいよ、夏美さん。冷やかすのはっ!!」
 赤くなり慌てる知華とは反対に、冷静な弥が、冷やかす夏美を打ち返す。
「落ち着け知華。馬鹿を相手にするのは疲れるだけだ」
「むっかー!! 弥くん、随分な言い草やなぁ。そんな事言って、ホンマはも―っとラブラブな事したいんやろ~!?」
「夏美さんっ!!」
 年下をからかって遊ぶ夏美に、知華は良いように弄られるが、弥は呆れ顔でため息を吐いてしまう。
 確かにこの二人は『朔夜』内では公認カップルなので、弄られてしまうのも仕方ない。そんな知華の困り果てた様子に、苦笑した逢莉は助け舟を出してやる。

 知華の反応を楽しむ夏美の肩を叩いた逢莉が、仕方なさそうに宥める。
「そのくらいにしてあげましょう、夏美さん。弥くんたち、今帰って来たばかりなんだから、休ませてあげないと」
 これじゃあ、どちらが年上か分からないなと、弥と知華は、逢莉と夏美を見ながら内心思った。
「ま、それもそやな。弥くんとクロには、うち達には出来ひん潜入捜査してもらっとるしねぇ」
 逢莉に促され、夏美は少々、真面目な顔で言った。
 弥と銀次は、『朔夜』では潜入捜査員としても働いている。弥の影使いの能力や、銀次の人狼の能力を駆使し、捜査対象やアジトなどに潜入・いわゆるスパイ行動を行っていた。
 ちなみに、弥と知華は1年来の恋人同士であるが、もう一人『朔夜』には、彼とは長~い付き合いの人物がいる。
「あら、弥いたの~? あんた、影が薄いから気付かなったわ」
 ほくそ笑んだ由が弥をからかうが、今度はこいつかと、逢莉が秘かにため息を吐いた。
「勝手に言ってろ。変態オカマ野郎」
 由の嫌味にも動じず、弥はさらりと返すが、変態呼ばわりされた由が、青筋を浮かべ弥に詰め寄る。
「あんったって本っ当、昔から変わらないわよね!! いつだって一人スカしてて、格好つけてるつもり!?」
「お前が変わり過ぎなんだよ。その気色悪い口調をなんとかしろ、ボケ」
 呆れ顔であしらう弥に、由はさらにムキになる。
「なんですってーっ!? 気色悪いとは何よっ! それが18年来の付き合いの親友に対する言動なわけ!?」
「腐れ縁の間違いだろ、ボケ。お前との縁なんて今すぐハサミで切って焼き捨ててやりたいぜ」
 歯に衣着せぬ弥の反応に、由がさらに激しく青筋を引っ立てる。
「うーわー、むかつくわね。まったく知華もこいつの何処が良いんだか」
「はぁっ?!」
 弥を馬鹿にされた知華が、間髪入れずにピンヒールの踵で由の足の甲を、踏み付けグリグリする。
「あだだだっ!! もう、どいつのこいつも~~!!」
「お生憎様!! 弥くんは、あんたなんかと違って、変態でオカマじゃないから」
 悶絶する由の足を、知華は眉間にぶっとい皺を寄せながら、執拗に踏み付けまくる。
 昔馴染み二人から散々に言われ、由が乱心する。

「なによー、あんたらみたいな薄情者知らないんだから~~~っ!! 良いわよっ!! あたしには逢莉ちゃんさえいてくれれば……」
 すかさず逢莉に抱き着こうとしたが、番犬のように立ち塞がった銀次が、抱き着こうとした由を蹴り飛ばす。
「いちいち逢莉に抱き着くな」
 害虫の如く、由を逢莉から追い払う彼に、再びこめかみを引くつかせた由が詰め寄る。
「ク~ロ~っ、あんたねぇ。逢莉ちゃんを独り占めしようなんて100年早いのよ!!」
 逢莉を自分の元に引っ張り寄せた由に、銀次も多少眉を寄せ、彼から再び逢莉を引き離すと見下すように言い返す。
「馬鹿かよ。お前こそ逢莉に近づくな。馬鹿菌がうつる」
 無表情で口が悪い銀次は、知華と同い年だが、年齢の割に弥並みにクールな性格だ。あまり周りと打ち解けようとしないが、逢莉にだけは何故か懐いている。
 その様の例えるなら、飼い主に懐く犬といったところだ。
 それ故に、由とは逢莉を巡り熾烈なバトルが日夜繰り広げているのだ。
「失礼な奴ねぇっ、ちょっとクロ!! 今日こそハッキリさせようじゃないっ!! どっちが逢莉ちゃんに相応しい男か!!」
「勝手に言ってろ、馬鹿が」
「ちょっと二人とも煩いから……」
 逢莉を互いに譲らず、引っ張り合う由と銀次、逢莉の声など、すっかり耳に入っていない。
「すかしてんじゃないわよっ! クロ、ちょっと表出なさいよっ!!」
「いいぜ。その喧しい馬鹿口、閉じさせてやるよ」

「……ブチッ」

 人を挟んでごちゃごちゃ煩い二人に、逢莉が不吉な音を立てた。
「っ熱ぃ~~!?」
 突然、由が奇声を上げ飛び上がったと思うと、彼の綺麗な金髪が焦げ始めていた。
「いぃぃ~やぁぁ~~!! 髪っ、あたしの髪がぁぁ!!……あああ逢莉ちゃん、なんて恐ろしいことを~~~~っ!?」
 悲鳴を上げた由が恐ろしい事をしてくれた逢莉を見遣るが、恐ろしい形相をした彼女が眼を据わらせていた。
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