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1章

5 特産品 3

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 ガイ達三人は村に帰還した。
 機体――Bダガーハウンドから降りるや、村長達が駆け寄って来る。

「戻られましたかガイ殿! して、成果は?」
 期待に満ちて訊いてくる村長コエトールに、ガイは操縦席を指さした。
「いくつか持ち帰ってみたけど、上手く行くかどうかはわからない。それに今から栽培しても収穫は来年とかだし‥‥」
 ふわりと肩に着地するイム。
「やってみよ?」
 ガイは一度頷くと、改めて村長に訊いた。
「村の側に空いてる畑は無いかな?」
「ありますぞ。先日の魔王軍の襲撃でダメになった物が何カ所か」
 そう言って村長は村の外を指さした。


――郊外の田畑――


 焼け跡になっていた畑を、急ごしらえとはいえ耕して使えるようにはする。
 村人や難民にも手伝って貰い、ガイも作業をしていると‥‥イムに襟を引っ張られた。
「どうしたんだ?」
 訊くガイをイムは引っ張り、どこかへ連れて行こうとする。
 仕方なくガイは村長に断り、イムに案内される先へ向かった。


「なんだ、帰りたかったのか?」
 イムが引っ張ってきたのはガイ達の家だった。
 しかしイムは家に入らず、隣の納屋へ。
「これ、これ!」
「え、これを持って行けって!?」
 驚くガイ。
 イムが促した物、それは――ガイが倒した魔王軍のだった。
 大きく嵩張かさばるので、燻製にして納屋へ保存しておいた怪獣の肉である。


 ガイ達が戻って来ると、畑の整地は終わっていた。
 1ヘクタールにも満たない範囲だが、これはイムの指示である。

「まぁやってはみるか‥‥」
 ガイはイムに促されるまま、耕された畑に肥料を撒き始めた。
 納屋から持ってきた怪獣の肉を、半分ほど。
「が、ガイ殿!? そんなもん肥料になるのですか?」
「実験というか、ダメモトというか」
 驚愕する村長コエトールに、自信なく告げるガイ。

 肥料を撒いて土を被せ、いよいよ山で採取してきた植物の種や実を植えていく。どれもレアリティの高い、アイテムの合成素材に使える物ばかりである。
「これでいいのか?」
 ガイが訊くと、イムは元気に頷いた。


 ふわふわと畑の上空を舞うイム。
(あの時と同じ事を?)
 ガイが思い出したのは山中の隠し畑での事。

 その通り、イムは畑の上を舞うように飛ぶ。輝く鱗粉が舞い散り、畑の上に降り注いだ。
 すると——もこもこと土が蠢き、見る間に植えた植物が発芽し、芽吹く!

「ガイ殿! これは一体!?」
「ああ、イムには不思議な力があるんだ」
 驚く村長に教えるガイ。

 芽は見る間に大きく伸び、成長し――
――

「ガイ殿! 口がありますぞ!」
「どの株も俺の知っている物とちょっと違うな‥‥」
 驚く村長の横で首を傾げるガイ。もちろん内心では驚愕しているのだが‥‥。

 イムがガイの側に降りて来た。
「ごはん、あげて」
 ガイは頷き、怪獣の肉の残りを次々と投げつけた。
 苗達は勢いよくそれにかぶりつく。大きな牙で噛み千切り、咀嚼し、吞み込んだ。

「ガイ殿! 牙が生えていますぞ!」
「よく食うな‥‥」
 驚く村長に構わず肉を全て投げつけるガイ。もちろん内心では驚愕しているのだが‥‥。

 苗達は肉を全て食い尽くすと、むくむくと再び大きくなる。
 それぞれの苗がそれぞれの植物に成長し、草も木も次々と花を咲かせ、実をつけた。
 おののく村人と難民を尻目に、ガイは畑に入ってそれら植物を調べる。

「うーん‥‥実自体は普通の物だな?」
 言いながらガイ自身が半信半疑である。
 しかし畑の周囲、村人と難民からは歓声があがった。
 村長のコエトールも太った体を揺すって大喜びだ。
「おお! さすがガイ殿! さすがガイ殿!」
「いやそこはイムだろ!?」
 ガイは抗議の声をあげたが、それに構わず農夫のタゴサックが満足げに頷く。
「しかしまぁともかくいくつも収穫できたわい。後はこれで色々作って、村の特産品になる物を探せばええ。小豆相場での失敗も取り戻せるかもしれん」
 ガイには色々と言いたい事がないでは無かったが、不承不承ながら納得する事にした。
「それで村が潤って、仕事の口も増えるなら、まぁ‥‥」


 ところがその時。
 若い女の声がガイにかけられた。
「丁度いい。それは我々が貰おうか」
 驚き振り返るガイ。
 その声に聞き覚えがあったのだ。

 見た目は美しい町娘である。髪をヘアバンドで纏め、ディアンドルタイプの服を着ている。武具の類も荷物も持っていない。
 しかし剣呑な微笑みを浮かべるその女は――魔王軍の親衛隊、ワーキマイラ。

 彼女はガイのほんの数メートル先に入り込んでいたのだ‥‥!
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