フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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2章

24 人の世に外れた物 1

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――ケイト帝国・軍格納庫――


 出撃前、ユーガンはテーブルに地図を広げて皆に行き先を説明した。
 地図は現在の帝国領、首都近郊の山岳地帯のもの。岩山ばかりで採石場ぐらいしか無い場所だが――
「敵軍の移動跡、地形、地質……見込みのある所から順に巡って行く事になる」
 彼が貰った資料だと、この地がまず第一候補となった。無論100%など保証はできない。もし違ったら第二、第三の候補……と順に捜索してゆくだけだ。

 ユーガンの意見にその場の皆が頷く。
 そしてその中の一人が力の籠った声で申し出た。
「ならば先導は我々に任せてもらおう。首都近郊なら一度ぐらいは見回った事がある」
 それは、街道でガイ達に遭ったレジスタンス【リバーサル】の部隊長・ミシェルだった。
 彼女だけではない……格納庫には【リバーサル】の隊員がかなりの数集まっているのだ。

「なんだ、オレらだけで行くんじゃねーのか」
 不満そうなタリンが呟いた。
 それが聞こえてしまい、ミシェルが息巻く。
「我々に指をくわえて見ていろ、とでも? 貴方あなた達の腕は認めるが、だからといっておごるのはやめてもらおうか!」
 その目には明らかに対抗意識が燃えていた。

 タリンがそれに言い返そうとした時……
「そこまでにしな」
 先にミシェルへ声をかける男がいた。
 2メートル近い体躯の角刈りの巨漢だ。無骨な鎧と両手剣で武装しており、若いながらも迫力がある。
 男を見上げ、ミシェルは恐縮した。
「グスタさん……」
 だが男は。そんなミシェルに野太い声で命じる。
「先導はお前に任せるぞ」
「は?……はっ、了解です!」
 一瞬面くらったものの、ミシェルは自分の望み通りの命令が出た事を理解し、背筋を伸ばして敬礼した。


――山間の街道――


 宮殿を、城下町を出て山岳地帯へ向かう一行。
 ゾウムシ型の運搬機の、その操縦席の後部座席で、タリンが不満でいっぱいの顔で「チッ」と舌打ちする。
「出しゃばって身内贔屓までかましやがってよぉ」
 無論、先陣をきるミシェルの部隊とそれを命じたグスタの事だ。タリンは【リバーサル】が自分たちの立てる手柄を横取りするのではないかと疑っていた。
 運搬機を操縦しながら呆れるスティーナ。
「手を貸してくれるなら良い事でしょう」
「手柄をオレらにとられたくねーだけだろ」
 タリンはあくまで【リバーサル】を信用してなかった。


 だがしかし。
『そこまでじゃない。まぁ役立たずだと思われると具合が悪いのは本当だがな』
 野太い男の声が通信機から届いた。皆、その声には聞き覚えがある。
『俺はグスタ。【リバーサル】の団長だ。よろしくな』
 格納庫で会った大男だった。

 スティーナが額に指を当てて考え、この男の情報を思い出す。
「確か……魔王軍を撃破した勇者達の最終決戦に同行した人です」

 それを聞いてタリンの鼻息が荒くなった。
「なんだと!? やっぱオレらを差し置いて全部もっていく気じゃねぇだろうな!」
「この馬鹿の事は詫びますので忘れてください」
 一方的な対抗意識満々の大声を、相手に詫びるスティーナ。
 しかし通信機から返ってきたのは笑い声――気を悪くした様子は無い、おおらかな物だった。
『なんか昔の俺みたいな奴だな。ま、本命の怪獣は任せるから雑魚ぐらいはこっちにやらせてくれ』
 そう言うと相手は通信を終えた。

一角ひとかどの人物だな。崩壊したケイト帝国が頼るだけはある」
 感心するユーガン。
 グスタは部下が不満を持たないよう、またガイ達のメンツを潰さないよう、考えながら調整しているのである。
 レレンも安心したようだ。
「自分達の地位や立場を気にして、こちらにつまらん事をしてくる……なんて事はなさそうだ」
 しかしタリンは「はん!」と鼻を鳴らす。
「部下まで全員できた奴だとは限らんぜ」
「同じ内容の事を言おうかと思いましたが、コイツと意見が合うのはなんか嫌ですね……」
 スティーナは実に複雑だ。


 皆が話し合っている中……ガイだけは黙って窓の外を伺っていた。
「ガイ? どうしたの?」
 疑問に思ったイムが訊く。
 するとガイは腰の鞄から珠紋石じゅもんせきを取り出し、それを握りしめた。
 結晶に籠められた魔法が発動する。

【ディテクト・シークレット】精神領域第2レベルの呪文。魔法の探知能力で、隠れた物があれば「何かがある」事を察知できる。

「……近くに何か潜んでいるな。先行している部隊に通信を入れてくれ」
 険しい目でスティーナへ告げるガイ。
 スティーナは慌てて頷いた。
「わかりました」


 こうして先を行くミシェルへ忠告したのだが……


『それがわかっていれば敵の奇襲を迎え撃てるな。このまま先行する。報告には感謝しておく』
 ミシェルは意気込んでそう答えたのだ。
 通信が切れ、彼女の部隊がどんどん前進していく様が運搬機のレーダーMAPに表示された。
「大丈夫なのか?」
 レレンが不安そうに皆を見渡す。
 腕組みして考え込むユーガン。
「とはいえこっちが勝手な事をすれば、余計に統率が乱れるしな」
「あー面倒くせー。いっそやられてオレらの引き立て役になっちまえ」
 タリンは面倒臭そうに背もたれへ身を預けた。

 直後、前方から爆発音と何かが崩れる音が響く!
 地面が揺れる!

 通信機から複数の怒号が聞こえた。
「本当にトラップに引っかかったようだぞ!」
 たまげるレレン。
 しかも間髪入れず、グスタの声も届く。
『チィ! 後ろからも来やがった!』
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