50 / 235
第03章 告白
第050話 ずっと……
しおりを挟む
「酷いことを言っていることは分かっております。だって、結婚しておきながらレイに愛されたいなんて勝手すぎますから……。ですが……ですが、レイが他の人を愛するところなど想像するだけで……」
涙も想いも止まることなくどんどんと溢れ出てくる。
「レイ……愛しております……」
「エリー……」
レイは俯くと何かを考えているようだった。それはそうだろう。こんなことを言う女など嫌になるに決まっている。そう思うと悲しくて愚かな自分に対して腹が立ってきた。もう終わりにしよう。そう思った時だった。
「いいよ。約束する。俺はエリーが止めてと言うまではこの気持ちのままでいるよ」
「え……」
思いがけない返事に向かい合ったレイを見上げる。
「こ、この気持ちとは……?」
「……俺はエリーが好きだよ」
初めて耳にする言葉に、急速に胸が高まる。しかし、なんだか現実味を帯びていないように感じ、真意を探るようにレイの瞳を覗き込む。レイの表情はとても真剣なもので、その瞳に吸い込まれるのではないかと思うほどだった。
「もう、どうしようもないくらい好きなんだ。だから、ずっと側でエリーを愛し続けるよ」
「ああ、レイ!」
夢ではない。エリー王女はレイの胸に飛び込むと、むせび泣いた。涙が止まらない。そんなエリー王女をレイは優しく抱きしめ髪を撫でる。その優しさがたまらなく愛おしい。
「エリー」
名前を呼ばれ、涙で濡れた顔を上げると柔らかな唇が降ってきた。触れたところから体中が痺れる。以前した口付けとはどこか違う。触れるか触れないかの距離の唇。瞳を開けるとレイの瞳と交わった。そしてまた触れ合う。優しく触れては離れる……。もっと長く触れていたいのに、レイはそれを繰り返す。食むような口付けに変わる頃には、エリー王女の赤みを帯びた唇が小さく開いた。
するとレイの舌が柔らかな唇をゆっくりとなぞってきた。今にも入ってきそうなそれは、エリー王女の期待感を煽った。なのに……。
エリー王女はつい物欲しそうに見つめ、熱い息を吐いた。それがどういう意味なのかレイには分かったのか、首を傾けゆっくりと侵入してくる。
「ん……」
絡み取られた舌が優しくかき回される。求めていたものだったからか、エリー王女もまた同じように舌に絡みついた。少しずつ激しさが増し、吸い付くように求め合う。頬を撫でられ、髪をかき上げられるとエリー王女の心までもが乱された。体が熱い。
こんなに求め合っても欲求は満たされず、もっとレイが欲しくてたまらなかった。愛する人と行う行為がどういうものかは知っている。それをいつかは知らない誰かと行わなければならない。そう、誰かと……。
エリー王女はレイの胸を僅かに押した。
「レイ……お願いです……」
ダメなことは分かってはいたが止めることが出来なかった。いや、止めたくなかった。せめて最初くらいレイに愛されたいと願うことはいけないことなのだろうか?
「私の全てを愛していただけませんか……?」
熱い息を吐き、潤んだ瞳で見つめてそう伝えた。しかし、レイは何も応えずただじっと視線を返してくるだけだった。
レイに愛されたらどんなに幸せだろう。次々と自分の欲望が増えてくる。エリー王女は、断って欲しくなくて、手を取りゆっくり寝室へと引っ張っていく。
繋いだ手が温かい。
キングサイズのベッドを背後に、エリー王女は手を伸ばしレイの胸に触れる。
「心も体もレイのものだと証明したいのです……」
胸に触れていた手にレイの手が重なり握り締められた。レイは優しくも困った表情で微笑んだ。
「本当にいいの……?」
「……レイじゃなきゃ嫌です。お願い……私と――――」
その瞬間体がふわりと浮かび、柔らかなベッドに深く沈み込む。覆い被さったレイを見つめ、手を伸ばしレイの頬にそっと触れた。
「愛しております……」
「俺も……俺も愛してる……」
レイから受ける数々の刺激は、エリー王女の身体を益々熱くしていく。愛されている感覚が身体中を駆け巡り、全てを受け入れた。
名前を呼ぶ度に……名前を呼ばれる度に……深く……深く愛し合う……。
◇
ドアを叩く音にレイがハッとして起き上がる。隣ではエリー王女がすやすや眠っていた。自分もいつの間にか眠っていたようで外を見るとまだ暗かった。エリー王女に掛け布をかけ直し、自分は脱ぎ捨てた服を素早く着る。
もう一度ドアが叩かれた。
レイはドアの側まで行き、誰なのか尋ねると「俺だ」という答えが返ってくる。その声に自分のしでかしたことに現実味が増した。目をつぶり大きく息を吐いてからドアを開ける。
そこには怖い顔をしたアランが立っていた。
涙も想いも止まることなくどんどんと溢れ出てくる。
「レイ……愛しております……」
「エリー……」
レイは俯くと何かを考えているようだった。それはそうだろう。こんなことを言う女など嫌になるに決まっている。そう思うと悲しくて愚かな自分に対して腹が立ってきた。もう終わりにしよう。そう思った時だった。
「いいよ。約束する。俺はエリーが止めてと言うまではこの気持ちのままでいるよ」
「え……」
思いがけない返事に向かい合ったレイを見上げる。
「こ、この気持ちとは……?」
「……俺はエリーが好きだよ」
初めて耳にする言葉に、急速に胸が高まる。しかし、なんだか現実味を帯びていないように感じ、真意を探るようにレイの瞳を覗き込む。レイの表情はとても真剣なもので、その瞳に吸い込まれるのではないかと思うほどだった。
「もう、どうしようもないくらい好きなんだ。だから、ずっと側でエリーを愛し続けるよ」
「ああ、レイ!」
夢ではない。エリー王女はレイの胸に飛び込むと、むせび泣いた。涙が止まらない。そんなエリー王女をレイは優しく抱きしめ髪を撫でる。その優しさがたまらなく愛おしい。
「エリー」
名前を呼ばれ、涙で濡れた顔を上げると柔らかな唇が降ってきた。触れたところから体中が痺れる。以前した口付けとはどこか違う。触れるか触れないかの距離の唇。瞳を開けるとレイの瞳と交わった。そしてまた触れ合う。優しく触れては離れる……。もっと長く触れていたいのに、レイはそれを繰り返す。食むような口付けに変わる頃には、エリー王女の赤みを帯びた唇が小さく開いた。
するとレイの舌が柔らかな唇をゆっくりとなぞってきた。今にも入ってきそうなそれは、エリー王女の期待感を煽った。なのに……。
エリー王女はつい物欲しそうに見つめ、熱い息を吐いた。それがどういう意味なのかレイには分かったのか、首を傾けゆっくりと侵入してくる。
「ん……」
絡み取られた舌が優しくかき回される。求めていたものだったからか、エリー王女もまた同じように舌に絡みついた。少しずつ激しさが増し、吸い付くように求め合う。頬を撫でられ、髪をかき上げられるとエリー王女の心までもが乱された。体が熱い。
こんなに求め合っても欲求は満たされず、もっとレイが欲しくてたまらなかった。愛する人と行う行為がどういうものかは知っている。それをいつかは知らない誰かと行わなければならない。そう、誰かと……。
エリー王女はレイの胸を僅かに押した。
「レイ……お願いです……」
ダメなことは分かってはいたが止めることが出来なかった。いや、止めたくなかった。せめて最初くらいレイに愛されたいと願うことはいけないことなのだろうか?
「私の全てを愛していただけませんか……?」
熱い息を吐き、潤んだ瞳で見つめてそう伝えた。しかし、レイは何も応えずただじっと視線を返してくるだけだった。
レイに愛されたらどんなに幸せだろう。次々と自分の欲望が増えてくる。エリー王女は、断って欲しくなくて、手を取りゆっくり寝室へと引っ張っていく。
繋いだ手が温かい。
キングサイズのベッドを背後に、エリー王女は手を伸ばしレイの胸に触れる。
「心も体もレイのものだと証明したいのです……」
胸に触れていた手にレイの手が重なり握り締められた。レイは優しくも困った表情で微笑んだ。
「本当にいいの……?」
「……レイじゃなきゃ嫌です。お願い……私と――――」
その瞬間体がふわりと浮かび、柔らかなベッドに深く沈み込む。覆い被さったレイを見つめ、手を伸ばしレイの頬にそっと触れた。
「愛しております……」
「俺も……俺も愛してる……」
レイから受ける数々の刺激は、エリー王女の身体を益々熱くしていく。愛されている感覚が身体中を駆け巡り、全てを受け入れた。
名前を呼ぶ度に……名前を呼ばれる度に……深く……深く愛し合う……。
◇
ドアを叩く音にレイがハッとして起き上がる。隣ではエリー王女がすやすや眠っていた。自分もいつの間にか眠っていたようで外を見るとまだ暗かった。エリー王女に掛け布をかけ直し、自分は脱ぎ捨てた服を素早く着る。
もう一度ドアが叩かれた。
レイはドアの側まで行き、誰なのか尋ねると「俺だ」という答えが返ってくる。その声に自分のしでかしたことに現実味が増した。目をつぶり大きく息を吐いてからドアを開ける。
そこには怖い顔をしたアランが立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。
雪桜
恋愛
✨ 第6回comicoお題チャレンジ『空』受賞作
阿須加家のお嬢様である結月は、親に虐げられていた。裕福でありながら自由はなく、まるで人形のように生きる日々…
だが、そんな結月の元に、新しく執事がやってくる。背が高く整った顔立ちをした彼は、まさに非の打ち所のない完璧な執事。
だが、その執事の正体は、なんと結月の『恋人』だった。レオが執事になって戻ってきたのは、結月を救うため。だけど、そんなレオの記憶を、結月は全て失っていた。
これは、記憶をなくしたお嬢様と、恋人に忘れられてしまった執事が、二度目の恋を始める話。
「お嬢様、私を愛してください」
「……え?」
好きだとバレたら即刻解雇の屋敷の中、レオの愛は、再び、結月に届くのか?
一度結ばれたはずの二人が、今度は立場を変えて恋をする。溺愛執事×箱入りお嬢様の甘く切ない純愛ストーリー。
✣✣✣
カクヨムにて完結済みです。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※第6回comicoお題チャレンジ『空』の受賞作ですが、著作などの権利は全て戻ってきております。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
恋。となり、となり、隣。
雉虎 悠雨
恋愛
友人の部屋にルームシェアすることになった篠崎ゆきは、引っ越してから三ヶ月、家が変わった以外は今まで通りの日常を送っていた。隣は赤ちゃんがいる家族と一人暮らしの背の高いあまり表情のない男。
ある日、マンションに帰ってくると、隣の部屋の前でその部屋の男、目雲周弥が倒れていた。
そして泥酔していたのを介抱する。
その一ヶ月後、またも帰宅すると隣の部屋の前でうずくまっている。また泥酔したのかとゆきが近づくと、前回と様子が違い酷いめまいを起こしているようだった。
ゆきは部屋になんとか運び入れ、また介抱した。
そこからゆきの日常も目雲の日常も変化していく。
小説家になろうにも掲載しています
【完結】初恋の人に嫁ぐお姫様は毎日が幸せです。
くまい
恋愛
王国の姫であるヴェロニカには忘れられない初恋の人がいた。その人は王族に使える騎士の団長で、幼少期に兄たちに剣術を教えていたのを目撃したヴェロニカはその姿に一目惚れをしてしまった。
だが一国の姫の結婚は、国の政治の道具として見知らぬ国の王子に嫁がされるのが当たり前だった。だからヴェロニカは好きな人の元に嫁ぐことは夢物語だと諦めていた。
そしてヴェロニカが成人を迎えた年、王妃である母にこの中から結婚相手を探しなさいと釣書を渡された。あぁ、ついにこの日が来たのだと覚悟を決めて相手を見定めていると、最後の釣書には初恋の人の名前が。
これは最後のチャンスかもしれない。ヴェロニカは息を大きく吸い込んで叫ぶ。
「私、ヴェロニカ・エッフェンベルガーはアーデルヘルム・シュタインベックに婚約を申し込みます!」
(小説家になろう、カクヨミでも掲載中)
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?
ねーさん
恋愛
アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。
何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。
何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。
「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
