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第05章 偽装
第066話 王女の愛する人
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エリー王女が寝るまでの支度をすべて終えたレイとマーサはエリー王女の部屋を出た。
「マーサさん。いつも部屋で食事してますよね? 良かったら一緒に食堂行きません?」
呼びかけられたマーサが見上げると、レイの笑顔はいつもマーサに向けられていたものとは違って輝いている。
「はい、喜んで」
マーサはこれもまた恋人のフリの一貫であることを悟り快諾した。
食堂に入ると交代で食事をしている両国の騎士や使用人が何人かいる。六人がけの木のテーブルが6つ並べられ、ほどほどに広い食堂であった。
レイに進められるまま、まだ誰も座っていないテーブルに隣り合って座る。食事をしながらレイは他愛もない話をしてくれた。マーサはそれに優しく耳を傾ける。恋人というより年の離れた弟のようだ。こうやって誰かと食事をするのも悪くないなとマーサは思った。
「おお、レイ。お前も今から食事か? 俺も今から食べるところなんだが一緒にいいか?」
アトラス王国の騎士団長ビルボートがやってきて、向かい側の席にトレーに乗せた食事を置いた。
「もちろん。あ、マーサさんいいですか?」
「はい、構いません」
気遣うようにレイがマーサの顔を覗き込むとマーサは微笑みを返す。
「良かった。マーサさんと食事が出来るなんてラッキーだぜ」
マーサは一般的にも美人な方ではあったが、さらに性格の良さや優しさが顔からにじみ出ており、男性からの評判はかなり良かった。
「あはは。ダメですよ、マーサさんはもう俺のなんですから」
さらっと伝えるレイに、マーサは驚いた。そして少し気恥ずかしい。ビルボートの視線が突き刺さるのを感じながら、マーサは笑みを作ってみる。
「なにっ? え? まさか、ええええ!」
「えー、何ですか? 驚きすぎですよ。あはは」
「だってお前よ、女に興味なんて示したことなかったじゃねーか! いや~、そうか。マーサさんが……。そっか~……。いや! マーサさん! こいつ、めっちゃ良いやつだから、宜しくお願いします」
ビルボードは座りながら丁寧に頭を下げたため、マーサはとても驚いた。
「えっ? 頭を上げてくださいっ。そんな、私っ……」
「あはは、お父さんみたい」
「そうだぞ。俺はお前の親父みたいなもんだからな! お前もちゃんとマーサさんを幸せにしろよっ」
ビルボートは本当に嬉しそうに笑い、レイもまた嬉しそうだった。しかしマーサはレイの笑顔に隠された心境を思うとマーサの胸にちくりと痛みが走る。
こんなに喜んでくれる人を騙すのはきっと辛いに違いない。
好きでもない人を好きだと言い、本当に好きな人を公に好きと言えないのだ。
ビルボートと関わりのない自分でさえ心が痛むのだから、レイの心はもっと複雑で痛いだろう。
マーサはその痛みを悟られぬよう、精一杯微笑んでみせる。
「おっ、おっちゃんとレイじゃん。それにマーサさん。いいね~俺も交ぜて~」
ビルボートの隣にぐいぐい入ってきたのは副隊長のアルバートだった。
「あ、アル先輩! 昨日貸りた本、めっちゃ面白かったです! 続きないんですか? マーサさんも読みます? ギャグ漫画ですけど」
「おいおい、あんなんマーサさんが――」
「読みたいです。お借りしても宜しいですか?」
「まじ? マーサさん、そういうの好きなん?」
「いえ、レイ様が面白いと思ったものは読んでみたいと思いまして」
アルバートは一瞬マーサの顔を見た後、レイの顔を見て、ビルボートを見た。
「まぁ、そういうことらしいぜ」
「まーーーじーーーかーーーよぉーーー!!!」
ビルボートからレイとマーサのことを聞いて、これもまた盛大に喜んだ。
レイがどれだけ愛されているのかがマーサには分かる。
その後も次々と人が集まり、皆がレイを囲い楽しそうに笑っていた。
「マーサさん、大丈夫?」
時々マーサが置いてきぼりにならないように声をかけてくるレイ。
「はい。とても楽しいです」
「そっか、良かった」
マーサがレイに伝えると、レイは嬉しそうに笑った。
このように人が集まってくるのもレイの人柄が大きいのだろう。アトラス王国の騎士だけではなくローンズ王国の騎士達もそれぞれレイに声をかけ楽しそうにやり取りをしていた。
エリー王女の選んだ人物はこんなにも人から愛されている。
それでも相応しくないのだろうか。
マーサは胸に引っ掛かりを感じた。
「マーサさん。いつも部屋で食事してますよね? 良かったら一緒に食堂行きません?」
呼びかけられたマーサが見上げると、レイの笑顔はいつもマーサに向けられていたものとは違って輝いている。
「はい、喜んで」
マーサはこれもまた恋人のフリの一貫であることを悟り快諾した。
食堂に入ると交代で食事をしている両国の騎士や使用人が何人かいる。六人がけの木のテーブルが6つ並べられ、ほどほどに広い食堂であった。
レイに進められるまま、まだ誰も座っていないテーブルに隣り合って座る。食事をしながらレイは他愛もない話をしてくれた。マーサはそれに優しく耳を傾ける。恋人というより年の離れた弟のようだ。こうやって誰かと食事をするのも悪くないなとマーサは思った。
「おお、レイ。お前も今から食事か? 俺も今から食べるところなんだが一緒にいいか?」
アトラス王国の騎士団長ビルボートがやってきて、向かい側の席にトレーに乗せた食事を置いた。
「もちろん。あ、マーサさんいいですか?」
「はい、構いません」
気遣うようにレイがマーサの顔を覗き込むとマーサは微笑みを返す。
「良かった。マーサさんと食事が出来るなんてラッキーだぜ」
マーサは一般的にも美人な方ではあったが、さらに性格の良さや優しさが顔からにじみ出ており、男性からの評判はかなり良かった。
「あはは。ダメですよ、マーサさんはもう俺のなんですから」
さらっと伝えるレイに、マーサは驚いた。そして少し気恥ずかしい。ビルボートの視線が突き刺さるのを感じながら、マーサは笑みを作ってみる。
「なにっ? え? まさか、ええええ!」
「えー、何ですか? 驚きすぎですよ。あはは」
「だってお前よ、女に興味なんて示したことなかったじゃねーか! いや~、そうか。マーサさんが……。そっか~……。いや! マーサさん! こいつ、めっちゃ良いやつだから、宜しくお願いします」
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「えっ? 頭を上げてくださいっ。そんな、私っ……」
「あはは、お父さんみたい」
「そうだぞ。俺はお前の親父みたいなもんだからな! お前もちゃんとマーサさんを幸せにしろよっ」
ビルボートは本当に嬉しそうに笑い、レイもまた嬉しそうだった。しかしマーサはレイの笑顔に隠された心境を思うとマーサの胸にちくりと痛みが走る。
こんなに喜んでくれる人を騙すのはきっと辛いに違いない。
好きでもない人を好きだと言い、本当に好きな人を公に好きと言えないのだ。
ビルボートと関わりのない自分でさえ心が痛むのだから、レイの心はもっと複雑で痛いだろう。
マーサはその痛みを悟られぬよう、精一杯微笑んでみせる。
「おっ、おっちゃんとレイじゃん。それにマーサさん。いいね~俺も交ぜて~」
ビルボートの隣にぐいぐい入ってきたのは副隊長のアルバートだった。
「あ、アル先輩! 昨日貸りた本、めっちゃ面白かったです! 続きないんですか? マーサさんも読みます? ギャグ漫画ですけど」
「おいおい、あんなんマーサさんが――」
「読みたいです。お借りしても宜しいですか?」
「まじ? マーサさん、そういうの好きなん?」
「いえ、レイ様が面白いと思ったものは読んでみたいと思いまして」
アルバートは一瞬マーサの顔を見た後、レイの顔を見て、ビルボートを見た。
「まぁ、そういうことらしいぜ」
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「マーサさん、大丈夫?」
時々マーサが置いてきぼりにならないように声をかけてくるレイ。
「はい。とても楽しいです」
「そっか、良かった」
マーサがレイに伝えると、レイは嬉しそうに笑った。
このように人が集まってくるのもレイの人柄が大きいのだろう。アトラス王国の騎士だけではなくローンズ王国の騎士達もそれぞれレイに声をかけ楽しそうにやり取りをしていた。
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それでも相応しくないのだろうか。
マーサは胸に引っ掛かりを感じた。
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