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第17章 決戦前
第198話 支配魔法と解除魔法
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滞在所は静かな闇に覆われ、皆が寝静まった中でセイン王子が記憶の旅から戻ってきた。
「大丈夫か?」
リアム国王がテーブルを挟んだソファーから読んでいた書物をテーブルに置き、セイン王子の様子を窺う。
「うん。思い出した……。凄く大切な記憶だった」
「そうか」
「俺は、必ずエリーもアトラスも救ってみせる。そのために、一刻も早くバフォールを倒したい」
「そうだな。で、アトラス城で何かいい手立ては見つかったか?」
セイン王子は首肯をすると、アランから得た情報を伝えた。
「ディーン王子を先に倒した場合、仕えるものがいなくなったバフォールがどうなるかは分からない。ディーン王子を生かした上で、先にバフォールを何とかする必要があると思うんだ。だから先ずはやつの魔力を封じる」
「魔力か……。封じることは出来るが、バフォールの魔力より上回らなければならない。どの程度の魔力があるのか未知数だ」
「そうだよね。だから子供達の魔力も借りて臨むというのはどうかな? ジェルミア様からはバフォールの戦いに役立ててほしいと言われていたわけだし。わかってるよ、実戦を行うには若すぎるし、境遇だって理解している。だけど、悪魔と手を組んだ男が大国に君臨してしまった今、ローンズ王国やデール王国だって危険なんだ。誰も彼も操られてしまったら……」
リアム国王は思案するように眉間に皺を寄せた。
「彼らの意思を尊重したいところだが、今はまだその判断も難しいだろう。一先ずその案は一つの案として置いておこう。それに、魔力を借りるとしても、彼らの訓練は必要だ。また、魔力を封じることに成功させたとしても、操られた者たちがどうなるかが問題だ」
リアム国王の懸念にセイン王子は神妙な面持ちで頷く。
「それについては検証することが出来ると思う。俺、バフォールが人を操る時に側にいたから……」
「出来そうか?」
「多分、出来ると思う。魔力の流れは見えたから」
「では早速試そう。バーミアをここへ」
部屋の外にいる騎士に騎士団隊長のバーミアを連れて来させた。家具が隅に移動され、中央に一脚だけ椅子が置かれている。異様な光景にバーミアは息を飲んだ。
「突然ごめんね。ちょっと試したいことがあって。変なことにはならないから安心して、そこに座ってくれる?」
「はっ! 失礼致します!」
背筋を伸ばし、バーミアはセイン王子に言わるがままに椅子に座った。大きな体が椅子を軋ませる。
「じゃあ、いくね?」
セイン王子がバーミアの目の前に立ち、手をかざした。バフォールがセロードにかけた支配魔法。あの時の状況を思い浮かべ、意識を集中する。魔力で全てを覆い、脳に入り込むとバーミアの気配が変わった。
横に置いておいた剣をセイン王子が持ち、鞘から剣を抜く。
「バーミア、俺に攻撃を」
命令を受けたバーミアが立ち上がり、腰に差した剣を抜きながらセイン王子に向かって素早く振るう。セイン王子の剣とぶつかり、衝撃で火花が光る。
「もういいよ」
その声に、バーミアはスッと剣を鞘に収めた。視線はどこにも合っていない。
「かかったな。魔力がバーミアを覆っている」
「だよね。なんかこれ、めちゃくちゃヤバイ魔法じゃない?」
セイン王子が振り返り、眉間に皺を寄せた。
「ああ、今後はお前も含めて使用を禁止する」
「わかった。じゃあ、兄さん。この状態で俺の魔力を封じて」
リアム国王が両手をセイン王子にかざす。セイン王子の魔力を寄せ集め、自分の魔力で覆いつくす。魔力が漏れないように厚く、強く抑え込む。
「どうだ?」
「あー、うん。魔法が使えない。じゃ、バーミアがどうなっているかだね。バーミア、俺に攻撃を」
バーミアはまた腰に差した剣を素早く抜きながら、セイン王子に攻撃を仕掛けた。魔法は失っていない。セイン王子の剣がバーミアの剣を弾く。
「もういいよ」
バーミアはまた剣を鞘に収めた。
「んー。やっぱり支配されたままか……。ということは、バフォールを完璧に消滅させなければ元に戻らないということだね。だけど、魔力さえ封印してしまえば色んな手は使える」
「……ギルの魔法で解除できるかもしれないな」
「ああ、そっか。出来るか聞いてみよう」
呼ばれたギルは直ぐにやってきた。
「陛下、失礼いたします。セイン様、お帰りなさい。ご無事で何よりです」
ギルが瞳を輝かせてセイン王子に視線を向ける。
「心配させたね。戻ってきたのに直ぐに知らせなくてごめん」
「いえ、様子は他の者から聞いておりましたので」
とは言ったものの、ギルはセイン王子の顔を見るまでは安心することが出来ないでいた。
「そう、良かった。で、ギルにお願いがあるんだけど、今バーミアに掛かっている魔法って解くことが出来たりする?」
「ここに滞在している間、アリスと共に操られた方々の魔法を解除できないかと調べておりました。そちらの魔法の解除について、恐らく出来ると思います」
「え、凄い! じゃ、さっそくお願い!」
ギルは二人に一礼し、バーミアの前に立つ。ギルの手の平から金色の光の玉が飛び出すと、その玉がバーミアの頭上へ移動する。ぽんっと頭の上で跳ねたかと思うと金色の粒子となりキラキラとバーミアの周りで輝いた。あまりにも綺麗だったのでセイン王子が見とれているとバーミアから声が聞こえてきた。
「あれ、ギル殿? ん? たしかセイン様が目の前にいたはずでしたが……?」
「ああ、凄い! ギル凄いよ! ギルがいてくれて良かった!」
セイン王子がギルに飛びついて喜ぶとギルは照れくさそうに笑う。
「その魔法ってどんなのにも効くのかな? ねえ、今俺にも魔法がかかっているんだけど、それも解除できるか試してみてくれる?」
瞳を輝かせてギルにお願いをするセイン王子は、胸を高鳴らせていた。
「はい。ではこの距離にいて頂けますか? あ、はいそこです」
同じように金色の玉を作り出し、セイン王子に解除魔法をかけた。キラキラと光る粒子が消えると、セイン王子がそよ風のような風を起こしてみた。
ギルとの間に優しく風が通り過ぎる。
「わあー! 解除できちゃったよ! 魔法使えるようになった! 兄さん、見た!? ギル凄いよねっ!! 兄さん、微笑んでいないで、おおおお。とか言わないの? 言わないか」
セイン王子は一人で嬉しそうに騒いでいた。
「あ、でもセイン様。この魔法には弱点が……」
※アルファポリスの挿絵は200枚までしか入れられない為、ここから挿絵がなくなります。゚(゚´ω`゚)゚。
「大丈夫か?」
リアム国王がテーブルを挟んだソファーから読んでいた書物をテーブルに置き、セイン王子の様子を窺う。
「うん。思い出した……。凄く大切な記憶だった」
「そうか」
「俺は、必ずエリーもアトラスも救ってみせる。そのために、一刻も早くバフォールを倒したい」
「そうだな。で、アトラス城で何かいい手立ては見つかったか?」
セイン王子は首肯をすると、アランから得た情報を伝えた。
「ディーン王子を先に倒した場合、仕えるものがいなくなったバフォールがどうなるかは分からない。ディーン王子を生かした上で、先にバフォールを何とかする必要があると思うんだ。だから先ずはやつの魔力を封じる」
「魔力か……。封じることは出来るが、バフォールの魔力より上回らなければならない。どの程度の魔力があるのか未知数だ」
「そうだよね。だから子供達の魔力も借りて臨むというのはどうかな? ジェルミア様からはバフォールの戦いに役立ててほしいと言われていたわけだし。わかってるよ、実戦を行うには若すぎるし、境遇だって理解している。だけど、悪魔と手を組んだ男が大国に君臨してしまった今、ローンズ王国やデール王国だって危険なんだ。誰も彼も操られてしまったら……」
リアム国王は思案するように眉間に皺を寄せた。
「彼らの意思を尊重したいところだが、今はまだその判断も難しいだろう。一先ずその案は一つの案として置いておこう。それに、魔力を借りるとしても、彼らの訓練は必要だ。また、魔力を封じることに成功させたとしても、操られた者たちがどうなるかが問題だ」
リアム国王の懸念にセイン王子は神妙な面持ちで頷く。
「それについては検証することが出来ると思う。俺、バフォールが人を操る時に側にいたから……」
「出来そうか?」
「多分、出来ると思う。魔力の流れは見えたから」
「では早速試そう。バーミアをここへ」
部屋の外にいる騎士に騎士団隊長のバーミアを連れて来させた。家具が隅に移動され、中央に一脚だけ椅子が置かれている。異様な光景にバーミアは息を飲んだ。
「突然ごめんね。ちょっと試したいことがあって。変なことにはならないから安心して、そこに座ってくれる?」
「はっ! 失礼致します!」
背筋を伸ばし、バーミアはセイン王子に言わるがままに椅子に座った。大きな体が椅子を軋ませる。
「じゃあ、いくね?」
セイン王子がバーミアの目の前に立ち、手をかざした。バフォールがセロードにかけた支配魔法。あの時の状況を思い浮かべ、意識を集中する。魔力で全てを覆い、脳に入り込むとバーミアの気配が変わった。
横に置いておいた剣をセイン王子が持ち、鞘から剣を抜く。
「バーミア、俺に攻撃を」
命令を受けたバーミアが立ち上がり、腰に差した剣を抜きながらセイン王子に向かって素早く振るう。セイン王子の剣とぶつかり、衝撃で火花が光る。
「もういいよ」
その声に、バーミアはスッと剣を鞘に収めた。視線はどこにも合っていない。
「かかったな。魔力がバーミアを覆っている」
「だよね。なんかこれ、めちゃくちゃヤバイ魔法じゃない?」
セイン王子が振り返り、眉間に皺を寄せた。
「ああ、今後はお前も含めて使用を禁止する」
「わかった。じゃあ、兄さん。この状態で俺の魔力を封じて」
リアム国王が両手をセイン王子にかざす。セイン王子の魔力を寄せ集め、自分の魔力で覆いつくす。魔力が漏れないように厚く、強く抑え込む。
「どうだ?」
「あー、うん。魔法が使えない。じゃ、バーミアがどうなっているかだね。バーミア、俺に攻撃を」
バーミアはまた腰に差した剣を素早く抜きながら、セイン王子に攻撃を仕掛けた。魔法は失っていない。セイン王子の剣がバーミアの剣を弾く。
「もういいよ」
バーミアはまた剣を鞘に収めた。
「んー。やっぱり支配されたままか……。ということは、バフォールを完璧に消滅させなければ元に戻らないということだね。だけど、魔力さえ封印してしまえば色んな手は使える」
「……ギルの魔法で解除できるかもしれないな」
「ああ、そっか。出来るか聞いてみよう」
呼ばれたギルは直ぐにやってきた。
「陛下、失礼いたします。セイン様、お帰りなさい。ご無事で何よりです」
ギルが瞳を輝かせてセイン王子に視線を向ける。
「心配させたね。戻ってきたのに直ぐに知らせなくてごめん」
「いえ、様子は他の者から聞いておりましたので」
とは言ったものの、ギルはセイン王子の顔を見るまでは安心することが出来ないでいた。
「そう、良かった。で、ギルにお願いがあるんだけど、今バーミアに掛かっている魔法って解くことが出来たりする?」
「ここに滞在している間、アリスと共に操られた方々の魔法を解除できないかと調べておりました。そちらの魔法の解除について、恐らく出来ると思います」
「え、凄い! じゃ、さっそくお願い!」
ギルは二人に一礼し、バーミアの前に立つ。ギルの手の平から金色の光の玉が飛び出すと、その玉がバーミアの頭上へ移動する。ぽんっと頭の上で跳ねたかと思うと金色の粒子となりキラキラとバーミアの周りで輝いた。あまりにも綺麗だったのでセイン王子が見とれているとバーミアから声が聞こえてきた。
「あれ、ギル殿? ん? たしかセイン様が目の前にいたはずでしたが……?」
「ああ、凄い! ギル凄いよ! ギルがいてくれて良かった!」
セイン王子がギルに飛びついて喜ぶとギルは照れくさそうに笑う。
「その魔法ってどんなのにも効くのかな? ねえ、今俺にも魔法がかかっているんだけど、それも解除できるか試してみてくれる?」
瞳を輝かせてギルにお願いをするセイン王子は、胸を高鳴らせていた。
「はい。ではこの距離にいて頂けますか? あ、はいそこです」
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セイン王子は一人で嬉しそうに騒いでいた。
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