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第18章 脅かす者
第217話 夢と現実
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燻る林の中、草木の焼けた匂いが鼻孔を刺激する。
リアム国王からの指示を受けた騎士団と子供たちは、まだ残っていた地獄の使者を倒し、傷の手当や体力の回復に努めていた。
副隊長であるラックが立ち上がり、心配そうにリアム国王が向かった先を見つめている。
「副隊長、我々も行った方がよろしいのでは?」
「いや、陛下は次の戦闘準備のためそれぞれ治療と体力回復に努めよと仰った。恐らく我々が側にいては魔法を使った攻撃が上手く出来ないからだろう。次の指示を待たなければ……」
仲間にそうは言ったもののリアム国王の安否を心配していた。暫くすると魔力と魔力がぶつかるような光と音が何度も響き渡る。
「始まった……」
その場にいる者たちは静かに、そして手に力を込めて見守った。
なかなか鳴りやまない攻撃に相手の強さが窺える。心配が大きくなった頃、音が止んだ。
「終わったか?」
ラックが呟くとニーキュを背負ったビルボート、アラン、アリス、サンが歩いてきた。ラックが五人の元へ素早く駆け寄る。
「陛下は?」
「まだバフォールと戦っているはずです。私たちが近づくのも難しいくらいでしたので一旦戻ってきました。ですが、今は音が鳴っていないですね……。どちらの魔力もまだ感じますが……。私が様子を見に行ってきます!」
アリスがリアム国王がいる方向へ視線を移しながらラックに答えた。
「いや、我らには待機しろとのご命令だ。予定ではセイン様が間もなく戻られるため、今は回復に専念した方が良い」
「陛下に何かあったらどうするんですか!?」
ラックの受けの姿勢にアリスが顔色を変え、ラックを睨みつける。
「命令は絶対だ! たとえお前が言うことが正しい行動だったとしてもだ! 大体お前はいつも勝手な行動をする!」
ラックもまたアリスの規律を守らない姿勢に苛立ち、声を荒げた。
「私はいつでも国にとって何が一番重要かを考えて行動しているだけです! ラックこそ……副隊長こそ、いつも言われたことしかしないで、それで本当に――」
「騎士団は団体だ! 全員がそれぞれ自分の好き勝手に動いては規律が乱れ、団結力は皆無になる!」
「それはわかっています! そうではなく、現状で一番良い選択を副隊長にしてほしいだけです!」
二人の衝突はいつものことで、必ず止めに入る隊長であるバーミアがいないため、ラックとアリスの言い合いが続く。
「間を割ってすみません。アリス。今、陛下とバフォールの魔力がどうなっているか分かるか?」
論点がズレてきたころ、アランが止めに入った。
「……魔力? そうね……あれから変わらないわ。何をしているのかしら……。あっ、陛下!!!」
アリスの視界の奥にリアム国王を捉えた。黒い木々の間からゆっくりと歩いてくるが、何か様子がおかしい。剣を鞘に納めることなく、こちらを睨んでいるようだ。皆もその違和感を感じたようで、顔を見合せた。
リアム国王が側までくると、一番近くに立っていたアランをチラリと見てからラックを見据える。
「何故、この場所で集まっている。王太后とセインを何処にやった?」
「え?」
あまりにも突拍子もないことを聞かれ、何と答えて良いか分からないラックは、瞳を大きく揺らした。
「そうか……影でこそこそと集まり、謀反を企てていたと言うわけか。しかも、主力メンバーが顔を揃えているとは……。お前たちはダルスの方が良かったというわけだな」
リアム国王が持つ剣がカチャリと音が鳴る。明らかに握り込む手に力が入っていた。
「陛下! 何を仰っているのですか!? 我らの目的はバフォール討伐。謀反など考えておりません!」
アリスが叫ぶとアランがそれを手で止める。
「バフォールだ。支配魔法で操られている目ではないため、恐らく洗脳。我々を敵と見なすように仕向けたのだろう。どこまでも汚いやつだ」
「何を言っている? 今さら誤魔化しても遅い。王太后とセインを返さないつもりならば、力ずくでいくだけだ」
リアム国王の視線はラックに向けたまま、剣先をアランに向けた。意識を全体に張り巡らせ、様子を探っているようにも見える。その時、女性の悲鳴が響き渡り、この声はアランたちの耳にも届いた。リアム国王が言う、王太后の声なのだろうとアランは思った。
「バフォールめ……手の凝ったことを……」
「王太后に何をした! お前達は何をしているのかわかっているのか? 早く二人を出さなければこの場にいる全員を殺すまで」
アランが奥歯を噛みしめると、リアム国王の冷たい視線が飛んでくる。
「陛下! 我々はこの悲鳴について何も関与しておりません!」
ラックも強く否定をするものの、リアム国王の表情に変化は見られなかった。
普段ならばリアム国王は、冷静に対処することが出来たであろう。しかし、先ほどまで一緒にいたメーヴェル王太后とセイン王子が目の前でいなくなったこと。この場にいるはずのない騎士団が顔を揃えていたこと。それも信頼していた先鋭部隊の裏切りが、リアム国王を惑わし、真実から遠ざけてしまっていた。
「それが答えか?」
リアムはアランに向けていた剣先を素早く翻し、アラン、アリス、ラックの順に流れるように斬りかかる。三人はギリギリのところでそれを受け止めるが、力強く重い攻撃にぐらりと体が傾いた。
「さっさと二人を出せ」
殺気だったその瞳に、全員は竦み上がった。
リアム国王からの指示を受けた騎士団と子供たちは、まだ残っていた地獄の使者を倒し、傷の手当や体力の回復に努めていた。
副隊長であるラックが立ち上がり、心配そうにリアム国王が向かった先を見つめている。
「副隊長、我々も行った方がよろしいのでは?」
「いや、陛下は次の戦闘準備のためそれぞれ治療と体力回復に努めよと仰った。恐らく我々が側にいては魔法を使った攻撃が上手く出来ないからだろう。次の指示を待たなければ……」
仲間にそうは言ったもののリアム国王の安否を心配していた。暫くすると魔力と魔力がぶつかるような光と音が何度も響き渡る。
「始まった……」
その場にいる者たちは静かに、そして手に力を込めて見守った。
なかなか鳴りやまない攻撃に相手の強さが窺える。心配が大きくなった頃、音が止んだ。
「終わったか?」
ラックが呟くとニーキュを背負ったビルボート、アラン、アリス、サンが歩いてきた。ラックが五人の元へ素早く駆け寄る。
「陛下は?」
「まだバフォールと戦っているはずです。私たちが近づくのも難しいくらいでしたので一旦戻ってきました。ですが、今は音が鳴っていないですね……。どちらの魔力もまだ感じますが……。私が様子を見に行ってきます!」
アリスがリアム国王がいる方向へ視線を移しながらラックに答えた。
「いや、我らには待機しろとのご命令だ。予定ではセイン様が間もなく戻られるため、今は回復に専念した方が良い」
「陛下に何かあったらどうするんですか!?」
ラックの受けの姿勢にアリスが顔色を変え、ラックを睨みつける。
「命令は絶対だ! たとえお前が言うことが正しい行動だったとしてもだ! 大体お前はいつも勝手な行動をする!」
ラックもまたアリスの規律を守らない姿勢に苛立ち、声を荒げた。
「私はいつでも国にとって何が一番重要かを考えて行動しているだけです! ラックこそ……副隊長こそ、いつも言われたことしかしないで、それで本当に――」
「騎士団は団体だ! 全員がそれぞれ自分の好き勝手に動いては規律が乱れ、団結力は皆無になる!」
「それはわかっています! そうではなく、現状で一番良い選択を副隊長にしてほしいだけです!」
二人の衝突はいつものことで、必ず止めに入る隊長であるバーミアがいないため、ラックとアリスの言い合いが続く。
「間を割ってすみません。アリス。今、陛下とバフォールの魔力がどうなっているか分かるか?」
論点がズレてきたころ、アランが止めに入った。
「……魔力? そうね……あれから変わらないわ。何をしているのかしら……。あっ、陛下!!!」
アリスの視界の奥にリアム国王を捉えた。黒い木々の間からゆっくりと歩いてくるが、何か様子がおかしい。剣を鞘に納めることなく、こちらを睨んでいるようだ。皆もその違和感を感じたようで、顔を見合せた。
リアム国王が側までくると、一番近くに立っていたアランをチラリと見てからラックを見据える。
「何故、この場所で集まっている。王太后とセインを何処にやった?」
「え?」
あまりにも突拍子もないことを聞かれ、何と答えて良いか分からないラックは、瞳を大きく揺らした。
「そうか……影でこそこそと集まり、謀反を企てていたと言うわけか。しかも、主力メンバーが顔を揃えているとは……。お前たちはダルスの方が良かったというわけだな」
リアム国王が持つ剣がカチャリと音が鳴る。明らかに握り込む手に力が入っていた。
「陛下! 何を仰っているのですか!? 我らの目的はバフォール討伐。謀反など考えておりません!」
アリスが叫ぶとアランがそれを手で止める。
「バフォールだ。支配魔法で操られている目ではないため、恐らく洗脳。我々を敵と見なすように仕向けたのだろう。どこまでも汚いやつだ」
「何を言っている? 今さら誤魔化しても遅い。王太后とセインを返さないつもりならば、力ずくでいくだけだ」
リアム国王の視線はラックに向けたまま、剣先をアランに向けた。意識を全体に張り巡らせ、様子を探っているようにも見える。その時、女性の悲鳴が響き渡り、この声はアランたちの耳にも届いた。リアム国王が言う、王太后の声なのだろうとアランは思った。
「バフォールめ……手の凝ったことを……」
「王太后に何をした! お前達は何をしているのかわかっているのか? 早く二人を出さなければこの場にいる全員を殺すまで」
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「陛下! 我々はこの悲鳴について何も関与しておりません!」
ラックも強く否定をするものの、リアム国王の表情に変化は見られなかった。
普段ならばリアム国王は、冷静に対処することが出来たであろう。しかし、先ほどまで一緒にいたメーヴェル王太后とセイン王子が目の前でいなくなったこと。この場にいるはずのない騎士団が顔を揃えていたこと。それも信頼していた先鋭部隊の裏切りが、リアム国王を惑わし、真実から遠ざけてしまっていた。
「それが答えか?」
リアムはアランに向けていた剣先を素早く翻し、アラン、アリス、ラックの順に流れるように斬りかかる。三人はギリギリのところでそれを受け止めるが、力強く重い攻撃にぐらりと体が傾いた。
「さっさと二人を出せ」
殺気だったその瞳に、全員は竦み上がった。
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