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第2章
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しおりを挟む元気な双子を送り出してカフェも薬屋も休みの休日。
デート、します。
「ユーリさん、どこかに行きたいとか、ありますか?」
「う~んそういえば決めていなかったですね。」
「では、私に付き合ってもらえますか?」
「?はい!」
エルヴィスさんは俺を王都を出た森に連れていってくれた。
「ここらへんですかね。」
何もないだだっ広い森の中。
「エルヴィスさん、何もな……!」
振り返ればそこには大きな黒竜がいた。
『街中でこんな姿になることはできないので。』
黒竜からはエルヴィスさんの声が聞こえる。
ロマンだ。ここにロマンが詰まっている。
艶々の鱗も、天に向く翼も、美しい。
『さ、ユーリさんこれを使って、私の手にどうぞ。』
差し出されたのは丈夫そうなロープ。
それを俺の腰とエルヴィスさんの指に繋いでエルヴィスさんの手に飛び乗った。
不思議と怖いとは感じない。
『さ、行きましょう。』
「うわぁ……!」
ふわ、と浮く感覚と共に視界に飛び込んできたのはどこまでも続く地平線。
空気抵抗も寒さも何も感じない。
ただただ綺麗な景色を楽しむことができる。
今までで一番美しいと感じる景色だった。
『さ、着きました。』
降りたところはまた森だった。
「すぐそこに街があります。」
シュルル、とまた人型に戻ったエルヴィスさん。
頭に響いていた声も普通の声に変わる。
2人でゆっくりと街に歩いていくのも楽しい。
次第に見えてきたのは近代日本の江戸時代から大正にかけてのような街並み。
近代ヨーロッパのような街並みや服装なのにどこか現代のような技術もあるチグハグさはどこの街も同じなようだ。
「ここは……?」
「サクラ皇国の皇都です。」
「サ、サクラ皇国ー!?」
「着物、ユーリさん似合っていましたし、久しぶりに着たら動きやすいので薬屋のときの制服にしようかと。」
それは、いい。
着物姿のエルヴィスさんの薬屋。
「なのでユーリさん、着物選ぶの手伝ってくれますか?」
「はいっ!」
呉服屋への道中、お稲荷さんが売っていたので買って2人でつつく。
お稲荷さんの甘じょっぱさと玄米の香ばしさが相まって美味しかった。
そしてやっぱり懐かしさを感じた。
けれど、もう帰りたいとは思わなかった。
本当は食材とかもみたかったけれど一度見始めてしまったら絶対時間がかかって双子が帰ってくるまでに帰れなくなるので、泣く泣くそのまま呉服屋に向かう。
「エルヴィスさんは落ち着いた色が似合いますね。」
エルヴィスさんの身体に生地をあててあぁでもない、こうでもないといいながら決めるのは楽しかった。
エルヴィスさんも俺の薬屋用の制服を決めてくれる。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので。
後ろ髪を大いに引かれつつまた竜体になったエルヴィスさんとともに帰路に着いたのだった。
また次のデートでもここに連れて行ってくれると言ってくれたので、楽しみが増えて、双子の帰りを2人でお茶をしながら待っていたのだった。
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