2 / 31
第壱譚
0002:月の魔法使い
しおりを挟む
「ごめんくださいー‼ 誰かいますかー?」
皆様、どうも、お一人様を存分に楽しんでいる灰かぶりです。
日が暮れる数刻前、洗濯物を取り込んでいた私は、勝手口のドア付近でガサゴソしている男性を見つけてしまいました。
「ふんふふっふふーん♪(鼻歌)」
カチャカチャ
陽気にドアの鍵をカチャカチャしている泥棒さん(?)には悪いですが、この状況を放っておくわけにはいきません。私は足音を潜め、常備しておいた木刀を手に取り、泥棒さんの背後へとまわりました。
「あっれれー、おかしいなーー、なんで開かないのー?」
「……あの、すみません、この家の者ですが、一体何をしているのでしょうか?」
「えっとねー、このお屋敷の中に入ろうとしているんだけど、鍵が開かないんだ♪」
「はい、不法侵入ですね。逮捕です‼」
ブンッ
バキッ
すかさず木刀を振りかぶり、彼の顔側面を狙って振り落とすと、勝手口のドアへ木刀が突き刺さりました。
ガバッと振り向いた男性(?)の顔は長い黒髪で隠されており、表情はわかりません。そして、全身を覆う黒いローブを身に纏っていらっしゃいます。
……とても怪しいですね。早めに警察へ連行してもらいましょう。
「や、やあ僕は月の魔法使いのツクヨミ。『ツクヨミ』って呼んでね!(ウインク) 今日は灰かぶり姫に会いに来たんだ! 君が、灰かぶり姫かい?」
「……巷では、そう言われていますが。(怪訝)」
「僕は君を迎えに来たんだ‼」
ガバッと立ち上がったツクヨミ(?)さんは木刀を持つ私の手を取り、ブンブンと握手しました。
「君をここから解放してあげる‼」
パクパク
カチャカチャ
モグモグ
ズズーー
質素な作りの私の部屋に、ツクヨミさんの咀嚼音が響き渡ります。
とても美味しそうにクッキーを頬張っているツクヨミさんに対して、私はふと思いました。
――なぜ、このツクヨミさんとやらは、私のお部屋まで上がることができたのでしょうか?
今までも不法侵入しようとして来られた人達は沢山いました。しかし、自衛のために木刀をブンブン振りまわしますと、皆さん、私を恐れてすぐ逃げていかれますのに。……ツクヨミさんに手を取られた瞬間、力が抜けていつの間にかここでお茶会をしているのです。
――不思議ですね。
――これが、魔法使いの力なのでしょうか。
私はやや険しい目で、ツクヨミさんを直視しました。
「……んもう、灰かぶり姫、そんなに見つめられると照れちゃうよー‼(嬉)」
「照れないでください!(怒)」
……ツクヨミさんが、かぶりついているそのクッキーは、私が大事に取っておいた、とっておきのものなのですよ!
継母様達にバレないよう、戸棚の奥の奥の奥に隠していましたのに……。
【回想 始】
「まずはお茶だよね‼ 灰かぶり姫秘蔵のクッキーでも食べようかなー。(ガサゴソ)」
ガチャガチャガチャ
「おー、あったあった‼ ……灰かぶり姫、紅茶用意してよー!(笑)」
【回想 終】
――許しません。ツクヨミさん、絶対に許しませんからね‼
食べ物の恨みは恐ろしいのです。
「あはは、さては灰かぶり姫、僕に惚れちゃった? ……一目惚れってやつなのかな?」
少し黙っていただけませんか、変態ツクヨミさん。熱々のティーポットが貴方の御手々に掛かってしまいますわよ‼
「……まさかそんなに僕のことが。(神妙な顔)」
やめてください! 変な誤解をしないでください、ツクヨミさん‼
「でも、ダメなんだ。君は、……隣国の第一王子様のお嫁さんになるんだからね……。(小声)」
ボソッと呟いたツクヨミさんの表情は見えません。声が小さ過ぎて私には聞こえませんでしたが、その代わりに、謎の悪寒に包まれたのでした。
皆様、どうも、お一人様を存分に楽しんでいる灰かぶりです。
日が暮れる数刻前、洗濯物を取り込んでいた私は、勝手口のドア付近でガサゴソしている男性を見つけてしまいました。
「ふんふふっふふーん♪(鼻歌)」
カチャカチャ
陽気にドアの鍵をカチャカチャしている泥棒さん(?)には悪いですが、この状況を放っておくわけにはいきません。私は足音を潜め、常備しておいた木刀を手に取り、泥棒さんの背後へとまわりました。
「あっれれー、おかしいなーー、なんで開かないのー?」
「……あの、すみません、この家の者ですが、一体何をしているのでしょうか?」
「えっとねー、このお屋敷の中に入ろうとしているんだけど、鍵が開かないんだ♪」
「はい、不法侵入ですね。逮捕です‼」
ブンッ
バキッ
すかさず木刀を振りかぶり、彼の顔側面を狙って振り落とすと、勝手口のドアへ木刀が突き刺さりました。
ガバッと振り向いた男性(?)の顔は長い黒髪で隠されており、表情はわかりません。そして、全身を覆う黒いローブを身に纏っていらっしゃいます。
……とても怪しいですね。早めに警察へ連行してもらいましょう。
「や、やあ僕は月の魔法使いのツクヨミ。『ツクヨミ』って呼んでね!(ウインク) 今日は灰かぶり姫に会いに来たんだ! 君が、灰かぶり姫かい?」
「……巷では、そう言われていますが。(怪訝)」
「僕は君を迎えに来たんだ‼」
ガバッと立ち上がったツクヨミ(?)さんは木刀を持つ私の手を取り、ブンブンと握手しました。
「君をここから解放してあげる‼」
パクパク
カチャカチャ
モグモグ
ズズーー
質素な作りの私の部屋に、ツクヨミさんの咀嚼音が響き渡ります。
とても美味しそうにクッキーを頬張っているツクヨミさんに対して、私はふと思いました。
――なぜ、このツクヨミさんとやらは、私のお部屋まで上がることができたのでしょうか?
今までも不法侵入しようとして来られた人達は沢山いました。しかし、自衛のために木刀をブンブン振りまわしますと、皆さん、私を恐れてすぐ逃げていかれますのに。……ツクヨミさんに手を取られた瞬間、力が抜けていつの間にかここでお茶会をしているのです。
――不思議ですね。
――これが、魔法使いの力なのでしょうか。
私はやや険しい目で、ツクヨミさんを直視しました。
「……んもう、灰かぶり姫、そんなに見つめられると照れちゃうよー‼(嬉)」
「照れないでください!(怒)」
……ツクヨミさんが、かぶりついているそのクッキーは、私が大事に取っておいた、とっておきのものなのですよ!
継母様達にバレないよう、戸棚の奥の奥の奥に隠していましたのに……。
【回想 始】
「まずはお茶だよね‼ 灰かぶり姫秘蔵のクッキーでも食べようかなー。(ガサゴソ)」
ガチャガチャガチャ
「おー、あったあった‼ ……灰かぶり姫、紅茶用意してよー!(笑)」
【回想 終】
――許しません。ツクヨミさん、絶対に許しませんからね‼
食べ物の恨みは恐ろしいのです。
「あはは、さては灰かぶり姫、僕に惚れちゃった? ……一目惚れってやつなのかな?」
少し黙っていただけませんか、変態ツクヨミさん。熱々のティーポットが貴方の御手々に掛かってしまいますわよ‼
「……まさかそんなに僕のことが。(神妙な顔)」
やめてください! 変な誤解をしないでください、ツクヨミさん‼
「でも、ダメなんだ。君は、……隣国の第一王子様のお嫁さんになるんだからね……。(小声)」
ボソッと呟いたツクヨミさんの表情は見えません。声が小さ過ぎて私には聞こえませんでしたが、その代わりに、謎の悪寒に包まれたのでした。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
大金で買われた少女、狂愛の王子の檻で宝石になる ―無自覚な天才調合師は第二王子の婚約者(虫除け)を演じることになりました―
甘塩ます☆
恋愛
「君を金貨三十枚で買ったのは、安すぎたかな」
酒浸りの父と病弱な母に売られた少女・ユナを救ったのは、国中から「放蕩王子」と蔑まれる第二王子・エルフレードだった。
「虫除けの婚約者になってほしい」というエルの言葉を受け、彼の別邸で暮らすことになったユナ。しかし、彼女には無自覚の天才調合師だった。
ユナがその才能を現すたび、エルの瞳は暗く濁り、独占欲を剥き出しにしていく。
「誰にも見せないで。君の価値に、世界が気づいてしまうから」
これは、あまりに純粋な天才少女と、彼女を救うふりをして世界から隠し、自分の檻に閉じ込めようとする「猛禽」な王子の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる