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第弐譚
0017:袂を分つとき
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「灰かぶり姫、ツクヨミと一緒に今すぐアデルの魔法省へ逃げてくれ。」
皆さん、こんばんは。小さい頃にお世話になっていた剣術のお兄ちゃんが、実は本当の父だったということを知って、衝撃を受けている灰かぶりです。
「マーズ殿下、お兄ちゃ……父をどうなされるつもりなのですか?」
ツクヨミさんとマーズ殿下の表情からみて、ここも安全な場所とは言い切れないようです。しかし、父を置いて自分一人だけ逃げるのはなんだかとても嫌なのでした。
父には、何か理由があったのでしょう。……身分を隠してたくさんのことを私に教えてくれました。精神的に、助けてもらいました。ここで一生のお別れになるくらいなら、私もここに残って戦います!。
「安心してほしい。エドワードは、私の魔法で仮死状態にしてある。息はしていないが、心臓はまだ止まってはいない。設備の整った魔法省にてしかるべき治療を施せば、一命をとりとめることは可能だ。」
「灰かぶり姫、殿下を信じよう。」
「私にはこの国の第一後継者として、果たさねばならぬことがある。それが終わり次第、エドワードを連れて必ず二人と合流することを誓おう。」
……そうですね。私はマーズ殿下のお顔を見て、大きく頷きました。
そして、父の顔を目に焼き付けるのです。父さん、必ずまた元気な姿で会えるように、私、頑張りますからね!
私は背後に控えているツクヨミさんの方を振り向いて、首を縦に振りました。
「二人とも、気をつけてな。」
「殿下も、お気をつけて。」
「マーズ殿下、父のことをよろしくお願いします。」
「ああ、まかせておけ。(微笑み)」
私はツクヨミさんが差し出す左手を取って、魔法陣の中へと入りました。
「この手を離したら絶対に駄目だからね!」
「了解なのです!」
私とツクヨミさんは、マーズ殿下と父を残して、小さな広場から魔法省へと向かったのでした。
【side マーズ殿下 始】
「……父上、出てきてください。そこにいるのはわかっているのですよ。」
ツクヨミと灰かぶり姫が魔法陣にて転送された後、私は、暗闇へ向かって声をかけた。
おそらく、私とエドワードに用があるのだろう。
「マーズよ、その男を渡しなさい。」
「何故ですか、父上。」
「月国王との約束だ。」
「……お断りします。」
やはり、エドワードの言っていた通りだ。第三王子のリゲルだけではない。父上も、月国王『ユエ』に毒されていたのだ。
闇の武器商人の国『月国』との同盟を結ぶということは、トルネード王国も必然的に戦争屋になることを意味している。
それは、戦争をしないと、経済が回らなくなるということだ。
経済が回らなくなると、国家はいずれ衰弱する。そして、ぐちゃぐちゃになったところで、月国は勇者然として攻め入るはずだ。
遠くから月国王のスピーチを聞いてみたところ、彼の言っていることは月国側からの内政干渉を堂々と宣言していたにすぎない。
――甘い話には、必ず裏がある。
月国王の思惑に気づかない、父上とリゲルに、国民は信じて付き従うだろう。
……それが、民の総意であるならば、致し方ない。
「マーズよ、いい加減、目を覚ましなさい。その男はアデル側の人間だ。」
「……。(じっと実父を見る)」
「じきに、両国間で大きな戦争が起こる。そこでお前は……。」
「父上、私の命にかけて、戦争は絶対に起こさせません!」
「……いいや、起こすよ。……この私がね。(笑)」
父上の背後から腹違いの弟リゲルが現れた。
「……リゲル、本気なのか?」
「ええ、そうですよ、マーズ兄さん。(笑)」
「マーズよ、お前が遊んでいるなか、リゲルがこの国のことを良く考えてくれてだな、旧友である月国王との間も取り持ってくれたのだ。マーズもリゲルを見習って……。」
「父上、ここが私達の潮時ですね。」
「……なに?」
「かねてより哀願していた廃嫡の話を今すぐここで進めましょう。」
「何を言っているのだ、マーズ⁉」
「私はトルネード王国だけではない、世界の平和を願っております。したがって、父上やリゲルの考えに沿うことはできません。」
私は、王族の第一後継者に受け継がれるペンダントをその場で外し、地面に置いた。
「父上、……リゲル、今までありがとうございました。どうか、お元気で。」
「ま、待て、マーズ‼」
私はエドワードを大切に抱き上げて、瞬時に魔法陣を展開した。
目的地は、アデルの魔法省へ。
今はまだ、私の言うことがトルネード王国のみんなに理解されることはないだろう。
……しかし、真実の平和を実現するために出来ることはたくさんあるはずだ。
――私は、幸運な男だ。
信頼できる友がいる。大事な恩師がいる。
――これからが本番だ。
【side マーズ殿下 終】
――白い光はまるで流れ星のように夜を照らし、アデル皇国へと降り注ぐ‼――
皆さん、こんばんは。小さい頃にお世話になっていた剣術のお兄ちゃんが、実は本当の父だったということを知って、衝撃を受けている灰かぶりです。
「マーズ殿下、お兄ちゃ……父をどうなされるつもりなのですか?」
ツクヨミさんとマーズ殿下の表情からみて、ここも安全な場所とは言い切れないようです。しかし、父を置いて自分一人だけ逃げるのはなんだかとても嫌なのでした。
父には、何か理由があったのでしょう。……身分を隠してたくさんのことを私に教えてくれました。精神的に、助けてもらいました。ここで一生のお別れになるくらいなら、私もここに残って戦います!。
「安心してほしい。エドワードは、私の魔法で仮死状態にしてある。息はしていないが、心臓はまだ止まってはいない。設備の整った魔法省にてしかるべき治療を施せば、一命をとりとめることは可能だ。」
「灰かぶり姫、殿下を信じよう。」
「私にはこの国の第一後継者として、果たさねばならぬことがある。それが終わり次第、エドワードを連れて必ず二人と合流することを誓おう。」
……そうですね。私はマーズ殿下のお顔を見て、大きく頷きました。
そして、父の顔を目に焼き付けるのです。父さん、必ずまた元気な姿で会えるように、私、頑張りますからね!
私は背後に控えているツクヨミさんの方を振り向いて、首を縦に振りました。
「二人とも、気をつけてな。」
「殿下も、お気をつけて。」
「マーズ殿下、父のことをよろしくお願いします。」
「ああ、まかせておけ。(微笑み)」
私はツクヨミさんが差し出す左手を取って、魔法陣の中へと入りました。
「この手を離したら絶対に駄目だからね!」
「了解なのです!」
私とツクヨミさんは、マーズ殿下と父を残して、小さな広場から魔法省へと向かったのでした。
【side マーズ殿下 始】
「……父上、出てきてください。そこにいるのはわかっているのですよ。」
ツクヨミと灰かぶり姫が魔法陣にて転送された後、私は、暗闇へ向かって声をかけた。
おそらく、私とエドワードに用があるのだろう。
「マーズよ、その男を渡しなさい。」
「何故ですか、父上。」
「月国王との約束だ。」
「……お断りします。」
やはり、エドワードの言っていた通りだ。第三王子のリゲルだけではない。父上も、月国王『ユエ』に毒されていたのだ。
闇の武器商人の国『月国』との同盟を結ぶということは、トルネード王国も必然的に戦争屋になることを意味している。
それは、戦争をしないと、経済が回らなくなるということだ。
経済が回らなくなると、国家はいずれ衰弱する。そして、ぐちゃぐちゃになったところで、月国は勇者然として攻め入るはずだ。
遠くから月国王のスピーチを聞いてみたところ、彼の言っていることは月国側からの内政干渉を堂々と宣言していたにすぎない。
――甘い話には、必ず裏がある。
月国王の思惑に気づかない、父上とリゲルに、国民は信じて付き従うだろう。
……それが、民の総意であるならば、致し方ない。
「マーズよ、いい加減、目を覚ましなさい。その男はアデル側の人間だ。」
「……。(じっと実父を見る)」
「じきに、両国間で大きな戦争が起こる。そこでお前は……。」
「父上、私の命にかけて、戦争は絶対に起こさせません!」
「……いいや、起こすよ。……この私がね。(笑)」
父上の背後から腹違いの弟リゲルが現れた。
「……リゲル、本気なのか?」
「ええ、そうですよ、マーズ兄さん。(笑)」
「マーズよ、お前が遊んでいるなか、リゲルがこの国のことを良く考えてくれてだな、旧友である月国王との間も取り持ってくれたのだ。マーズもリゲルを見習って……。」
「父上、ここが私達の潮時ですね。」
「……なに?」
「かねてより哀願していた廃嫡の話を今すぐここで進めましょう。」
「何を言っているのだ、マーズ⁉」
「私はトルネード王国だけではない、世界の平和を願っております。したがって、父上やリゲルの考えに沿うことはできません。」
私は、王族の第一後継者に受け継がれるペンダントをその場で外し、地面に置いた。
「父上、……リゲル、今までありがとうございました。どうか、お元気で。」
「ま、待て、マーズ‼」
私はエドワードを大切に抱き上げて、瞬時に魔法陣を展開した。
目的地は、アデルの魔法省へ。
今はまだ、私の言うことがトルネード王国のみんなに理解されることはないだろう。
……しかし、真実の平和を実現するために出来ることはたくさんあるはずだ。
――私は、幸運な男だ。
信頼できる友がいる。大事な恩師がいる。
――これからが本番だ。
【side マーズ殿下 終】
――白い光はまるで流れ星のように夜を照らし、アデル皇国へと降り注ぐ‼――
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