【モフモフは正義‼︎】親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く

星 佑紀

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第壱譚(修正前)

0006:とあるモブの受難

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 【side とあるモブ(ジョナサン)】


「おいジョナサン、パトリック殿下の天幕見に行ってくれないか?」

「えっ、いやです! 先輩が行ってくださいよ!(とてもイヤそうな顔)」

「頼む、ジョナサン! 俺、一回、マリア様に見惚れてしまってからパトリック殿下にすっごく警戒されているんだ! この通り、頼む!(スライディング土下座)」

「先輩大丈夫です。僕も警戒されてますから。(苦笑)」

「そうだよなー。…………あの女っ気のなかったパトリック殿下が、ああなるなんて誰も思わないよなー。」

「それだけマリア様が特別なお方なのでしょう。……噂によると、パトリック殿下にとって、マリア様は初恋の人みたいですし。」

「パトリック殿下、純愛だよなー。(遠い目)」

「純愛通り越して、病んでますがね。(苦笑い)」

「ジョナサン、行ってくれたらアンパン一つやるから頼む!(ダブルスライディング土下座)」

「…………しょうがないですね。アンパン一週間分で手を打ちましょう。(にっこり)」

「ジョナサン、…………ありがとな。(嬉し涙)」

「先輩、よくを休ませとってくださいよ。」

「ああ、恩にきるぞ! ありがとな!」


 先輩に感謝された僕ジョナサンは、重い足取りで、パトリック殿下の天幕へと向かうのだった。



 ◇  ◇  ◇



「(コンコン)…………パトリック殿下、おはようございます。起きていらっしゃいますか?」


 シーーーーン


 天幕の中から返答はない。普段なら、そのまま天幕の中へと入って、パトリック殿下を叩き起こすのだけれど、今日はそうはいかないだろう。

 パトリック殿下が寵愛しているマリア様が一緒に寝ていらっしゃるかもしれないからだ。マリア様の顔を見るだけでパトリック殿下の機嫌が悪くなるのに、いつも通り入って行ったら機嫌どころではない。……修羅場だ。(汗)

 ということで、僕のとっておきの武器がある。それは、なんてことはない、だ。僕はシュパパッと目隠しして、視界を遮り、天幕の中へ入ることにした。

 えっ? 目隠ししていると、見えないんじゃないかって? 心配ご無用、僕達は、パトリック殿下直属の自警団員(おもてではクーデター組織)だ。を応用して、を視ようとすれば、人の気配くらいなら察知できる。

 僕は天幕内に入り、内部を見渡すと、スピスピ寝ているパトリック殿下の生き霊が一体、そして、寝台の下で、なにやらニホン帝国に実在するニンジャ(?)のような覆面を付けた格好で、コソコソと隠れているマリア様の生き霊を一体、確認した。(えっ、なんで?)

 ……なんだか目隠しを外しても問題なさそうだな。僕はシュパパッと目隠しを外し、パトリック殿下を起こすために寝台へと近寄って、パトリック殿下の頬を平手打ちした。(王族の人にやると重罪になるけど、こうしないと殿下は起きないんだよな。)


「パトリック殿下ー、起きてくださいよー、出立時刻に遅れますよー!(バシバシバシッ)」

「…………うーーん? …………なんだ、ジョナサンか。(大きい欠伸をしながら上体を起こす)」

「なんだとはなんですか。今日の新型爆弾のお披露目会を観に行くから早く起こしに来いって仰ったのはパトリック殿下なんですからね。」

「そうだったな。……マリア様の準備もあるし、急がないと。……って、マリア様、なんで隠れているのですか?(黒いニヤケ顔)」

「ば、バレてしまいましたわ、どうしましょう~⁉」


 ……お二人共起きているみたいだし、僕は逃げても大丈夫そうだな。


「わーーい! マリア様、僕の大好きなニンジャのコスプレですね?(隠れてるマリア嬢を捕まえて、寝台の上まで引き上げ、抱きしめる)」

「わ、私は、マリアではありません! パトリック殿下の命をつけ狙うニンジャです!(恥ずかしそうにパトリック殿下を睨みながら)」

「…………ジョナサン、出立時刻を三刻後に変更だ。(どす黒パトリック殿下)」

「えー、でも殿下、それだとお披露目会に間に合いませんよー。(うそーん、二人のイチャイチャに巻き込まないでください。)」

「間に合わなくていい! ……マリア様がせっかく僕を喜ばせようとしているんだから、僕もマリア様を喜ばせないと!」

「……ち、違いますわ! 私は、パトリック殿下の命をとって、を手に入れるためにやっているのです!」

「へえー、マリア様、…………全然懲りてないんですね。ジョナサン、三刻じゃなくて、五刻遅れるから。あと、マリア様と俺の朝食持ってきて。(ヤンデレパトリック殿下)」

「ひいいいいい⁉(ガクブル)」


 あーあ。パトリック殿下、ブチ切れちゃったじゃないですか。どす黒い瞳でじいっとマリア嬢を見つめるパトリック殿下を尻目に、僕はみんなに知らせる為に天幕から抜け出るのであった。



 ◇  ◇  ◇



「パトリック殿下ー、朝食お持ちしましたよーっと。………………えっ?」


 お二人分の朝食を持って再び天幕に戻ってくると、そこには、真っ黒い布で全身をぐるぐる巻きにされたマリア様と、うっとりとした表情でマリア様を眺めているパトリック殿下がいた。(どういう状況?)


「ジョナサン、ありがとう。適当に置いておいてくれ。」

「はい、…………ええと、マリア様大丈夫ですか?」

「うん? ああ、マリア様が僕から逃げようと企んでるみたいだから、簡単には動けないようにした!(爽やかな笑顔)」

「そ、そうですか。(ドン引き)」


 空回りしてるー。パトリック殿下、たぶん、同年代の女性との関わり方を知らないで育ったおかげで、なんかぶっ飛んだスキンシップになってるー。(目が点)

 これ、どーするつもりなんだ? マリア様を置いて行くのか、一緒に連れて行くのか。……連れて行くんだろうな。この人、簡単に離れるような感じしないもんな。(ため息)


「た、助けてーー‼(カスッカスな声)」

「……マリア様、俺以外の男に助けを求めるなんて、……もしや浮気ですか⁉」


 ええええ、違うでしょう。マリア様のどの部分に浮気要素があった?(激しくドン引き)


「だって、パトリック殿下、ずっと夜離してくれなくて、私、一睡もできなかったもん。……男の人と一緒のお布団に入ったなんて、私、もうお嫁にいけない!(ぐすん)」


「大丈夫だよ、マリア様。マリア様のことは、僕が貰ってあげるからね、心配しなくていいんだよ。……それに、昨日は一緒に添い寝しただけだし、何よりも、マリア様の身の安全を考慮した結果、僕の隣が一番安全だからそうなったわけで、嫌がるマリア様に手を出したりはしないからね。そうでしょ?」


「…………た、確かに、そうですわね。(納得)」


 いや、納得するんかーい。

 ……天幕余ってるんだから、マリア様のために一張り分マリア様専用にして護衛をつければいいのに。……とは思うが、言ったらどうなるかわかっているので、言わないでおこう。それよりも、マリア様、あなた完全にパトリック殿下に騙されてますよ。簡単に納得しちゃ駄目です。もっと危機感持たないと! じゃないと、いつのまにか既成事実とか作られてもっとがんじがらめにされてしまいますよ!(いや、もうされてるか。)


「パトリック様、私が間違ってましたわ。ごめんなさい。(ぺこり)」

「わかってくれたらいいんだよ。……少しずつね!」

「はい、パトリック様!」


 心配だ。見た目に反してとても素直すぎるマリア様が心配だ。目の前に飢えた狼(勿論殿下)がいるのに、全然それに気がついていない。……事故とか起こらなかったらいいなー。


「じゃあ、朝食を食べて、僕が特注で用意した変装服を着て、首都に行こう!」

「はい、パトリック様!」


 ああ、服はちゃんと着替えられるんですね。安心しました。一応、僕ら国賊なので、目立つとかなりまずいですからね。でも、なんかマリア様の反応が不自然なんだよなー。………………殿下、もしかして、でマリア様を操っているわけではありませんよね?(大汗)


 ――これは、首都中央広場に向かう前のお話。――
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