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第弐譚
0017:美人と『スピカ』其弐
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【side エドワード・ロック(偉大なる魔法使い)】
ーーとある組織の野営地付属食堂にて。ーー
「殿下、マリア様、美味しいお茶を用意してくださってありがとうございます!(深く礼をするオリビア)」
「わっふふ!(気にしないでくださいまし! 熱いうちに召し上がってくださいな!)」
「そうだよ、オリビアちゃん! 早く席につきな‼︎」
「ありがとうございます!(マリア嬢の横の席に座って美味しそうにお茶をすするほくほくオリビア)」
……何故だろう。俺(エドワード・ロック)は、マーズの弟パトリック殿下と大事な話をしたらすぐに帰るつもりだったのに、いつの間にかパトリック殿下の愉快な仲間たちと優雅にお茶会をしている。仕事が山積みだから、早くアデル皇国に戻らないといけないのに、……アンパンが意外にも美味し過ぎて、このまったりとした空間から抜け出せない。
「エドワード・ロック、……マーズ兄さんは元気?」
「ああ、……色々と無茶ばかりするがな。」
「へえーー、そうなんだ! ……僕、ほとんど会ったことがないからさ、色々とマーズ兄さんについて知りたいんだ‼︎(興味津々なきゅるるん殿下)」
「……マーズに会ったことがないのか?」
「一回だけあるよ! ……マーズ兄さんがアデルに売られる前日にね。(意味深顔な殿下)」
「ーーーーっ‼︎」
……やはり、パトリック殿下にはお見通しだったか。二国間の微妙な立ち位置、魔法の取り合い、魔石の交換条件、……そして、マーズの実母の存在。いろいろな事情が絡み合った結果のマーズの左遷。パトリック殿下からしたら、バカバカしく思っているんだろうな。
「手紙だけなら、何回か送り合っているんだけどね、マーズ兄さんがアデルに渡った直後の幾分かは連絡が取れない日々が続いたな。まさかその間に、既婚者と恋に堕ちていたなんて。……不倫とか言語道断。兄だろうが、偉大なる魔法使いだろうがなんだろうが、不貞をする輩は木っ端微塵のミンチにしてやる‼︎(ブラックヤンデレ魔王殿下)」
「わふわふ⁉︎(お客様は不倫を致してしまわれたのですか⁉︎ それは、いけませんね! 配偶者の方がとても悲しみますよ‼︎ 殿下の隣でアンパンをかじるマリア嬢)」
「お客様、確かに不貞をする輩の方が世界の半数以上、いや九割以上いるのは、当たり前なのかもしれません。しかし、その不貞で苦しむ子どもがいるのですよ! 親として、ご自身のお子様に顔向け出来るのですか⁉︎(冷静オリビア)」
「そうだ、そうだ‼︎ あの頃のマーズ兄さんはめちゃくちゃ可愛かったと思うし、愛嬌も最高だったかもしれないけどさ、子どもに手を出していいの⁉︎ 犯罪だよ⁉︎ しかも、配偶者を裏切ってマーズ兄さんを誘惑するだなんて、ミンチにしないと気が済まないな。(目がイッてる魔王殿下)」
「いや、恋に堕ちてないし、不倫してないから‼︎」
俺は何故か目の前の三人から凄い勢いで責められた。……目が本気というかなんというか、……特に殿下、一体過去に何があった⁉︎ 目だけで人を殺せるんじゃないのか⁉︎ ……というか、殿下にはさっき違うって言った筈なんだけどな。
「でも、マーズ兄さんからの手紙には、エドワード・ロックと本気の恋をしているって度々書かれてたよ‼︎」
「違う、違う! アイツが勝手に思い込んでいるだけだから、不貞を犯したりはしていない‼︎ マーズは、人違いをしているだけなんだ。(言い訳する公爵)」
「人違い?(きょとん殿下)」
「……詳細は言えないが、俺は、妻だけだ。」
「ふーーん。……みんな、どう思う?」
「……わふ。(お客様の目に曇りはなさそうですわ。)」
「……そうですね。……信じてみましょう。(疑わしきは罰せず、ですわ! 神妙オリビア)」
「……そういうことだね。(謎の愛想笑い殿下)」
「…………。(ため息をつくロック公爵)」
……目の前の三人の視線がグサグサと突き刺さってくるから、まだ信用はされていないのだろうが、やってないって言ったらやってないのだ。……事情がかなり複雑だから、言いたくても言えないのであるのだが。
「エドワード・ロック、なんかいきなり責めちゃってごめんね。ここにいる皆、浮気とか不倫で色々と悲しい思いをしてきたからさ。……ついつい責めちゃうんだ。」
「そ、……そうなのか。(困惑するロック公爵)」
「オリビアちゃんの元夫は、友達と不倫関係にあったし、僕の嫁マリア様の元婚約者であるリゲルも、マリア様の親友にお手付きしちゃって、マリア様を追い出しちゃうしさ、……なんで人間は浮気心を出してしまうんだろう?」
「わ、わふわふ‼︎(パトリック様、お客様にこんな重いお話してはいけませんよ! 気を遣わせてしまいますわ‼︎)」
「マリア様、……本当のことを公にしないと、嘘がまこととしてまかり通ってしまうからね。……リゲルのことは僕に任せて‼︎(ブラックヤンデレ殿下)」
「リゲルに、マリア……⁉︎ あの、殿下、隣にいらっしゃる着ぐるみの女性は……。(滝のような汗を流す公爵)」
「うん? ここの宰相ラーズベルト公爵の長女マリア様だよ‼︎(あと僕の嫁だけどね!)」
「ーーーーっ‼︎(驚きを隠せない公爵)」
「わっふ!(リゲル殿下に婚約破棄された挙句に国外追放をくらった結果、クーデター組織の一員になりましたわ‼︎)」
「あ、はい。(申し訳ないが、何を言っているのかさっぱりわかりません、マリア様。 汗だく公爵)」
「マリア様の受けた仕打ちに比べれば、私なんて、小さいものですわ。……アルトや、アリス、ノアさんが守ってくれますからね。(ささやかな喜びを噛み締めるオリビア)」
「わふわふう!(そんなことありませんわ、オリビア先生! オリビア先生もたくさんの困難辛苦を味わってこられたでしょう? これからは、お互いに助け合って悪に向かい立つのですわ‼︎)」
「マリア様……。(感極まるオリビア)」
「よしっ! クーデターしつつ、浮気も撲滅するぞ!」
「「おーー‼︎(わふう!)」」
……リゲル殿下とマリア様が婚約解消していただなんて、……聞いてないぞ⁉︎ ……通常ならば、一国の王子のスキャンダルともなれば、一週間もかからずにアデルに入ってくるのに……。そう、……たとえ、緊迫した状況であったとしても、人間の欲の話は世界を駆け巡る。新聞メディアが金目になる記事を書かない筈がない。……ということは、誰かが、この事に関して情報統制を行なっている可能性が高いな。それは、トルネード王国の唯一まともな貴族ラーズベルト公爵か、……否か。二つに一つだ。
「パトリック殿下、……リゲル殿下とマリア様がこのような状況になってしまっていただなんて、全然知りませんでした。申し訳ない。」
「エドワード・ロック、気にしないで。……誰かさんが箝口令を敷いているからね。(ブラックジト目殿下)」
「ーーーーっ⁉︎(やはりそうなのか⁉︎)」
「マリア様のことだけじゃない。……ごく普通の恋愛小説でさえも、検閲されて禁書扱いになったものがたくさんある。……そうだ! エドワード・ロック、もう一つお願いがあるんだけどいいかな?」
「お、お願い?(なんだなんだ?)」
「アデル皇国にお土産を持って帰って欲しいんだ!」
「……お、おう。(お土産とは?)」
「ありがとう、エドワード・ロック! (小声で)在庫処分するのに困ってたんだよね。」
「うん?(訝しげなロック公爵)」
「ううん、なんでもないよ! ……そろそろアルト達がお目覚めかな?(きゅるるん殿下)」
「確かにそうですわね! ちょっと、見てきますわ!」
ーーオリビアは、シュパパっと席を立った!ーー
「……こんな森の中で子育ては、さぞかし大変なんだろうな。(チビっ子ルナを思い出すよ。)」
「オリビアちゃんは超がつくほど真面目さんだからね! 最初ここに来た時は、アルト達にべったりくっついていたんだよ。母親としての責任感が強いから。……でも、ここは使用人がいるお屋敷ではないからね。必ず行き詰まるんだ。だから、みんなと話し合って、アルト達のことは交代で面倒を見ることにしているんだよ。……オリビアちゃんにしか出来ないお仕事もあるからね。」
「わっふわっふ!(オリビア先生には、色々と教わってばっかりですわ‼︎ 興奮マリア嬢)」
「……すごいな。(こんなに上手く回っている組織は珍しいぞ。 謎に納得するロック公爵)」
「未来を担う子ども達を真っ直ぐに育てることが、母国を発展させる一番の近道だからね!(きゅるるん殿下)」
ーーと、そこへ、オリビア達が戻ってきた‼︎ーー
「ぷりんしぇしゅー、楽しんでいまちゅか?」
「お、おう……。(目を細めて喜ぶ公爵)」
「あー、あっ!(なるほど! 確かにアルトが好きそうな美人だな! 何故か興奮するアリス)」
「……?(赤毛の赤ん坊にめちゃくちゃ睨まれてる⁉︎)」
「ははのアンパンは天下一品でちゅからね! たくしゃん食べて英気を養うのでちゅよ!(ビシッとアルト)」
「おう、そうだな。(アルトを抱き上げる公爵)」
「お客様、すみません、アルトの面倒を見てもらって。」
「いえ、大丈夫ですよ。俺、子ども大好きですから。」
「ぷりんしぇしゅー、今日は泊まっていきまちゅよね?」
「いや、おじちゃん忙しいから今日はかえ……。」
「泊まりまちゅよね?(ジト目アルト)」
「ぷくく、……エドワード・ロック、遠慮しないで泊まっていきなよ。(ニヤニヤ殿下)」
「しかし……。(仕事がー。 迷う公爵)」
「泊まらないと、ぷりんしぇしゅについて行きましゅよ‼︎(公爵にしがみつくアルト)」
「ーーーーっ⁉︎(それは危険だからかなり困る‼︎)」
「もう、アルトったら、お客様を困らせてはなりませんよ。(アルトを諌めるオリビア)」
「だって、……僕ちんはぷりんしぇしゅのことを守りたいのでちゅ!(大粒の涙を目に溜めるアルト)」
「……わかった。一晩だけだからな。(諦める公爵)」
「ーーーーっ‼︎ やったでちゅ! 今夜は一緒におねんねするでちゅよ!(興奮アルト)」
「ああ。(今日はいろいろ疲れたからな。)」
「そうと決まれば、マリア様、晩御飯の準備をしよう!」
「わっふわっふ!(そうですわね!)」
ーー二人は調理場へと消えて行った‼︎ーー
「えええ⁉︎(殿下と公爵令嬢が晩御飯作るの⁉︎)」
「……お二人の仲睦まじいお姿が、『スピカ』の光ですわ!(感極まるオリビア)」
「……ぷりんしぇしゅー、気にしなくていいでちゅからね。魔王しゃま、いつも、楽しそうに着ぐるみのお姉ちゃんとご飯作ってるんでちゅよ‼︎(ニヤニヤアルト)」
「そ、そうなのか……。(衝撃を受ける公爵)」
「あううー!(仲が良ければオールオッケーなのだ!)」
……結局、俺は二晩泊まった。アルトとアリスの子守りをしていると、時間の流れが早く感じて、帰る時にはなんだか久しぶりに寂しくなった。アデルには、二日分の溜まった仕事と、部下のマーズからの執拗な聴取が俺を待っている。……正直な話、もう少しアルト達と一緒にいたかった。……俺には少し先の未来が視えるから、どうにもやるせない気持ちになる事の方が多い。しかし、アデル側だけではなく、アルト達がいるトルネード側にも被害を出さないように、考えていかなけばならないと、改めて思い直した。
『エドワード、一体二日間、何処にいたのだ?』
「……仕事だよ。(子育てという大事な仕事だ。)」
『それに、この白い粉袋と大量の書籍は何なのだ⁉︎』
「……お土産だ。(お前の弟からのな。)」
『なになに、「国防軍幹部の秘められた物語」とは? ……エドワードがこれを読むのか?(信じられないマーズ)』
「……いや、アデルの出版社に持ち込む。」
『話の中身からして衆道の話みたいだが、……エドワードの趣味なのか?』
「違うわ!(お前の弟が書いたんだよ!)」
『……まあいい。エドワード、二日間離れてて、惚れ直した。私と結婚してくれ!』
「何度も言ってるが、俺は既婚者だ‼︎」
ーー偉大なる魔法使いの悩みは続く‼︎ーー
ーーとある組織の野営地付属食堂にて。ーー
「殿下、マリア様、美味しいお茶を用意してくださってありがとうございます!(深く礼をするオリビア)」
「わっふふ!(気にしないでくださいまし! 熱いうちに召し上がってくださいな!)」
「そうだよ、オリビアちゃん! 早く席につきな‼︎」
「ありがとうございます!(マリア嬢の横の席に座って美味しそうにお茶をすするほくほくオリビア)」
……何故だろう。俺(エドワード・ロック)は、マーズの弟パトリック殿下と大事な話をしたらすぐに帰るつもりだったのに、いつの間にかパトリック殿下の愉快な仲間たちと優雅にお茶会をしている。仕事が山積みだから、早くアデル皇国に戻らないといけないのに、……アンパンが意外にも美味し過ぎて、このまったりとした空間から抜け出せない。
「エドワード・ロック、……マーズ兄さんは元気?」
「ああ、……色々と無茶ばかりするがな。」
「へえーー、そうなんだ! ……僕、ほとんど会ったことがないからさ、色々とマーズ兄さんについて知りたいんだ‼︎(興味津々なきゅるるん殿下)」
「……マーズに会ったことがないのか?」
「一回だけあるよ! ……マーズ兄さんがアデルに売られる前日にね。(意味深顔な殿下)」
「ーーーーっ‼︎」
……やはり、パトリック殿下にはお見通しだったか。二国間の微妙な立ち位置、魔法の取り合い、魔石の交換条件、……そして、マーズの実母の存在。いろいろな事情が絡み合った結果のマーズの左遷。パトリック殿下からしたら、バカバカしく思っているんだろうな。
「手紙だけなら、何回か送り合っているんだけどね、マーズ兄さんがアデルに渡った直後の幾分かは連絡が取れない日々が続いたな。まさかその間に、既婚者と恋に堕ちていたなんて。……不倫とか言語道断。兄だろうが、偉大なる魔法使いだろうがなんだろうが、不貞をする輩は木っ端微塵のミンチにしてやる‼︎(ブラックヤンデレ魔王殿下)」
「わふわふ⁉︎(お客様は不倫を致してしまわれたのですか⁉︎ それは、いけませんね! 配偶者の方がとても悲しみますよ‼︎ 殿下の隣でアンパンをかじるマリア嬢)」
「お客様、確かに不貞をする輩の方が世界の半数以上、いや九割以上いるのは、当たり前なのかもしれません。しかし、その不貞で苦しむ子どもがいるのですよ! 親として、ご自身のお子様に顔向け出来るのですか⁉︎(冷静オリビア)」
「そうだ、そうだ‼︎ あの頃のマーズ兄さんはめちゃくちゃ可愛かったと思うし、愛嬌も最高だったかもしれないけどさ、子どもに手を出していいの⁉︎ 犯罪だよ⁉︎ しかも、配偶者を裏切ってマーズ兄さんを誘惑するだなんて、ミンチにしないと気が済まないな。(目がイッてる魔王殿下)」
「いや、恋に堕ちてないし、不倫してないから‼︎」
俺は何故か目の前の三人から凄い勢いで責められた。……目が本気というかなんというか、……特に殿下、一体過去に何があった⁉︎ 目だけで人を殺せるんじゃないのか⁉︎ ……というか、殿下にはさっき違うって言った筈なんだけどな。
「でも、マーズ兄さんからの手紙には、エドワード・ロックと本気の恋をしているって度々書かれてたよ‼︎」
「違う、違う! アイツが勝手に思い込んでいるだけだから、不貞を犯したりはしていない‼︎ マーズは、人違いをしているだけなんだ。(言い訳する公爵)」
「人違い?(きょとん殿下)」
「……詳細は言えないが、俺は、妻だけだ。」
「ふーーん。……みんな、どう思う?」
「……わふ。(お客様の目に曇りはなさそうですわ。)」
「……そうですね。……信じてみましょう。(疑わしきは罰せず、ですわ! 神妙オリビア)」
「……そういうことだね。(謎の愛想笑い殿下)」
「…………。(ため息をつくロック公爵)」
……目の前の三人の視線がグサグサと突き刺さってくるから、まだ信用はされていないのだろうが、やってないって言ったらやってないのだ。……事情がかなり複雑だから、言いたくても言えないのであるのだが。
「エドワード・ロック、なんかいきなり責めちゃってごめんね。ここにいる皆、浮気とか不倫で色々と悲しい思いをしてきたからさ。……ついつい責めちゃうんだ。」
「そ、……そうなのか。(困惑するロック公爵)」
「オリビアちゃんの元夫は、友達と不倫関係にあったし、僕の嫁マリア様の元婚約者であるリゲルも、マリア様の親友にお手付きしちゃって、マリア様を追い出しちゃうしさ、……なんで人間は浮気心を出してしまうんだろう?」
「わ、わふわふ‼︎(パトリック様、お客様にこんな重いお話してはいけませんよ! 気を遣わせてしまいますわ‼︎)」
「マリア様、……本当のことを公にしないと、嘘がまこととしてまかり通ってしまうからね。……リゲルのことは僕に任せて‼︎(ブラックヤンデレ殿下)」
「リゲルに、マリア……⁉︎ あの、殿下、隣にいらっしゃる着ぐるみの女性は……。(滝のような汗を流す公爵)」
「うん? ここの宰相ラーズベルト公爵の長女マリア様だよ‼︎(あと僕の嫁だけどね!)」
「ーーーーっ‼︎(驚きを隠せない公爵)」
「わっふ!(リゲル殿下に婚約破棄された挙句に国外追放をくらった結果、クーデター組織の一員になりましたわ‼︎)」
「あ、はい。(申し訳ないが、何を言っているのかさっぱりわかりません、マリア様。 汗だく公爵)」
「マリア様の受けた仕打ちに比べれば、私なんて、小さいものですわ。……アルトや、アリス、ノアさんが守ってくれますからね。(ささやかな喜びを噛み締めるオリビア)」
「わふわふう!(そんなことありませんわ、オリビア先生! オリビア先生もたくさんの困難辛苦を味わってこられたでしょう? これからは、お互いに助け合って悪に向かい立つのですわ‼︎)」
「マリア様……。(感極まるオリビア)」
「よしっ! クーデターしつつ、浮気も撲滅するぞ!」
「「おーー‼︎(わふう!)」」
……リゲル殿下とマリア様が婚約解消していただなんて、……聞いてないぞ⁉︎ ……通常ならば、一国の王子のスキャンダルともなれば、一週間もかからずにアデルに入ってくるのに……。そう、……たとえ、緊迫した状況であったとしても、人間の欲の話は世界を駆け巡る。新聞メディアが金目になる記事を書かない筈がない。……ということは、誰かが、この事に関して情報統制を行なっている可能性が高いな。それは、トルネード王国の唯一まともな貴族ラーズベルト公爵か、……否か。二つに一つだ。
「パトリック殿下、……リゲル殿下とマリア様がこのような状況になってしまっていただなんて、全然知りませんでした。申し訳ない。」
「エドワード・ロック、気にしないで。……誰かさんが箝口令を敷いているからね。(ブラックジト目殿下)」
「ーーーーっ⁉︎(やはりそうなのか⁉︎)」
「マリア様のことだけじゃない。……ごく普通の恋愛小説でさえも、検閲されて禁書扱いになったものがたくさんある。……そうだ! エドワード・ロック、もう一つお願いがあるんだけどいいかな?」
「お、お願い?(なんだなんだ?)」
「アデル皇国にお土産を持って帰って欲しいんだ!」
「……お、おう。(お土産とは?)」
「ありがとう、エドワード・ロック! (小声で)在庫処分するのに困ってたんだよね。」
「うん?(訝しげなロック公爵)」
「ううん、なんでもないよ! ……そろそろアルト達がお目覚めかな?(きゅるるん殿下)」
「確かにそうですわね! ちょっと、見てきますわ!」
ーーオリビアは、シュパパっと席を立った!ーー
「……こんな森の中で子育ては、さぞかし大変なんだろうな。(チビっ子ルナを思い出すよ。)」
「オリビアちゃんは超がつくほど真面目さんだからね! 最初ここに来た時は、アルト達にべったりくっついていたんだよ。母親としての責任感が強いから。……でも、ここは使用人がいるお屋敷ではないからね。必ず行き詰まるんだ。だから、みんなと話し合って、アルト達のことは交代で面倒を見ることにしているんだよ。……オリビアちゃんにしか出来ないお仕事もあるからね。」
「わっふわっふ!(オリビア先生には、色々と教わってばっかりですわ‼︎ 興奮マリア嬢)」
「……すごいな。(こんなに上手く回っている組織は珍しいぞ。 謎に納得するロック公爵)」
「未来を担う子ども達を真っ直ぐに育てることが、母国を発展させる一番の近道だからね!(きゅるるん殿下)」
ーーと、そこへ、オリビア達が戻ってきた‼︎ーー
「ぷりんしぇしゅー、楽しんでいまちゅか?」
「お、おう……。(目を細めて喜ぶ公爵)」
「あー、あっ!(なるほど! 確かにアルトが好きそうな美人だな! 何故か興奮するアリス)」
「……?(赤毛の赤ん坊にめちゃくちゃ睨まれてる⁉︎)」
「ははのアンパンは天下一品でちゅからね! たくしゃん食べて英気を養うのでちゅよ!(ビシッとアルト)」
「おう、そうだな。(アルトを抱き上げる公爵)」
「お客様、すみません、アルトの面倒を見てもらって。」
「いえ、大丈夫ですよ。俺、子ども大好きですから。」
「ぷりんしぇしゅー、今日は泊まっていきまちゅよね?」
「いや、おじちゃん忙しいから今日はかえ……。」
「泊まりまちゅよね?(ジト目アルト)」
「ぷくく、……エドワード・ロック、遠慮しないで泊まっていきなよ。(ニヤニヤ殿下)」
「しかし……。(仕事がー。 迷う公爵)」
「泊まらないと、ぷりんしぇしゅについて行きましゅよ‼︎(公爵にしがみつくアルト)」
「ーーーーっ⁉︎(それは危険だからかなり困る‼︎)」
「もう、アルトったら、お客様を困らせてはなりませんよ。(アルトを諌めるオリビア)」
「だって、……僕ちんはぷりんしぇしゅのことを守りたいのでちゅ!(大粒の涙を目に溜めるアルト)」
「……わかった。一晩だけだからな。(諦める公爵)」
「ーーーーっ‼︎ やったでちゅ! 今夜は一緒におねんねするでちゅよ!(興奮アルト)」
「ああ。(今日はいろいろ疲れたからな。)」
「そうと決まれば、マリア様、晩御飯の準備をしよう!」
「わっふわっふ!(そうですわね!)」
ーー二人は調理場へと消えて行った‼︎ーー
「えええ⁉︎(殿下と公爵令嬢が晩御飯作るの⁉︎)」
「……お二人の仲睦まじいお姿が、『スピカ』の光ですわ!(感極まるオリビア)」
「……ぷりんしぇしゅー、気にしなくていいでちゅからね。魔王しゃま、いつも、楽しそうに着ぐるみのお姉ちゃんとご飯作ってるんでちゅよ‼︎(ニヤニヤアルト)」
「そ、そうなのか……。(衝撃を受ける公爵)」
「あううー!(仲が良ければオールオッケーなのだ!)」
……結局、俺は二晩泊まった。アルトとアリスの子守りをしていると、時間の流れが早く感じて、帰る時にはなんだか久しぶりに寂しくなった。アデルには、二日分の溜まった仕事と、部下のマーズからの執拗な聴取が俺を待っている。……正直な話、もう少しアルト達と一緒にいたかった。……俺には少し先の未来が視えるから、どうにもやるせない気持ちになる事の方が多い。しかし、アデル側だけではなく、アルト達がいるトルネード側にも被害を出さないように、考えていかなけばならないと、改めて思い直した。
『エドワード、一体二日間、何処にいたのだ?』
「……仕事だよ。(子育てという大事な仕事だ。)」
『それに、この白い粉袋と大量の書籍は何なのだ⁉︎』
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『話の中身からして衆道の話みたいだが、……エドワードの趣味なのか?』
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『……まあいい。エドワード、二日間離れてて、惚れ直した。私と結婚してくれ!』
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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