【モフモフは正義‼︎】親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く

星 佑紀

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第肆譚

0035:聖女マリアの覚悟

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 ーーここは、フィックスド家の会議室。ーー


 ーーマリア嬢が気絶して一刻後(約三十分後)の話。ーー


「……はっ‼︎(ビクッと震えて起き上がるマリア嬢)」

「ーーーーっ‼︎ まりあさま~‼︎(うるうるお目々でマリア嬢を抱きしめる殿下)」

「パトリックさま、これは一体……。(困惑マリア嬢)」

「マリア様は、ミクル姉さんから渡された鈴を振り回した結果、力尽きて眠っていたんだよ。(涙と鼻水をごうごう流しながら、マリア様に縋り付く殿下)」

「すず……。(やや記憶障害を起こしているマリア嬢)」

「マリア様、お身体は大丈夫ですか?(マリア嬢と殿下の側に控えているオリビア)」

「もし何か違和感があれば、すぐに言ってくださいね。町医者を常駐させていますので。(オリビアの横にいるノア)」

「オリビア先生、先輩様、ありがとうございます。……身体の方は特に違和感はありませんが、もの凄く空腹ですわね。(丁度いいタイミングでグウウーとお腹の虫が鳴き、赤面するマリア嬢)」

「ーーーーっ‼︎ 承知致しました。今すぐお食事を用意致します‼︎(シュパパッと駆けていくオリビア)」

「あっ、……俺も、オリビアさんを手伝ってきます! 何かあれば、ジョナサンにお申し付けください‼︎(オリビアの後を追うノア)」

 グウウウー……。(マリア嬢のお腹の虫)

「……は、恥ずか死にますわ。……食いしん坊って、皆様にバレてしまいます。(より一層顔を赤らめるマリア嬢)」

「ううん、……マリア様、もっとたくさん食べるんだ!(さらにスリスリとマリア嬢に身体を密着させる殿下)」

「ぱ、パトリックさま……。(いつも以上に密着してくる殿下に困惑しているマリア嬢)」

「そうですよ、マリア様。たくさん食べないと、ガリガリの骸骨になっちゃいますから。ほら、これで、ご自身のお顔を確認してください。(手鏡をマリア嬢に渡すジョナサン)」

 ーーマリア嬢は渡された手鏡を覗き見た。ーー

「ーーーーっ⁉︎(ここここれは、……誰ですのー⁉︎)」

 ーー手鏡には、痩せこけた女性の顔が映っている。ーー

「ごめんね、マリア様。……僕がちゃんとマリア様を止めることができたなら、こんなことにはならなかったのに。あんなにまん丸でぽてぽてしてた柔らかほっぺが、こんなにも薄くなっちゃって……。ごめんなさい、マリア様ーー‼︎(悲しみに暮れた殿下が、余計マリア嬢にスリスリしまくる)」

「はうーー‼︎(いつの間にか痩せこけた自身にびっくりしつつ、すんごくやつれた殿下にもびっくりしつつ、殿下のスリスリ攻撃に羞恥心が勝って、茹で蛸化するマリア嬢)」

「パトリック殿下、もっと優しくしないと、マリア様がバッキバキに砕けちゃいますよー。(なんとも言えない表情のジョナサン)」

「……わかっているさ。でも、……でも、……マリア様が、マリア様がーー‼︎(両目に涙を溜めて堪えきれない殿下)」

「ぱとりっくさま……。(何かを感じ取るマリア嬢)」

「マリア嬢、すまない。……どうやら、私の姉ミクルが、の鈴『月輪』をマリア嬢に持たせたみたいなのだ。(目が覚めてからいろいろ事情を知った困り眉サネユキ)」

「……、ですか?(きょとんマリア嬢)」

「ああ。私も、もっと早く気づくべきであった。……マリア嬢が痩せこけてしまったのも、その鈴の副作用によるものなんだ。マリア嬢、本当に申し訳なかった。(スライディング土下座するサネユキ)」

「ーーーーっ‼︎ お、おやめください、実雪様‼︎」

「……確かに、月の砂を消失させるために『月輪』が必要不可欠なのは、事実だ。……しかし、『月輪』を使えば使うほど、マリア嬢は痩せこけていく。……マリア嬢に何も言わず、鈴を触らせてしまって、本当に申し訳ない。許してくれ。(深刻に思っているサネユキ)」

「(サネユキの横に並んでスライディング土下座して)マリア様、本当にごめんなさい‼︎ 僕が、強く、マリア様を止めていれば、マリア様がゲソゲソにならなくて済んだのに。……いつものぷにぷに柔らかマシュマロほっぺでいられたのに。……ごめんなさい‼︎(号泣殿下)」

 ーー会議室は、シーーンと静寂に包まれた。ーー

「実雪様、……パトリック様、…………私は、至って大丈夫ですわよ。(キリッとした表情で立ち上がるマリア嬢)」

「「「ーーーーっ‼︎(ハッとする殿下達)」」」

「難しいことは分かりませんが、鈴を鳴らして誰かの為になるのであれば、……私は鳴らし続けます。それが、私の運命なのですから。(ふんわりと微笑みを浮かべるマリア嬢)」

「マリア様……。(グスンと鼻を鳴らす殿下)」

「痩せこけてしまうのであれば、沢山食べて、太ればよろしいのです。(食いしん坊であることを誤魔化せますしね。 オリビアの料理を想像して内心涎を垂らすマリア嬢)」

「ーーうううっ、……まりあさまーー‼︎(感激しすぎてマリア嬢に飛び掛かる殿下)」

「ーーーーっ⁉︎ カハアッ‼︎(殿下に勢いよく飛び掛かられて、半分意識を飛ばすマリア嬢)」

「ズルいよマリア様。美しくて、可愛いくて、凛として、強くて、優しくて、あったかくて、柔らかくて、食いしん坊で。……僕は、マリア様のことが好きすぎて、愛しすぎて、心が苦しい。(マリア嬢を想う苦しみに顔を歪める殿下)」

「……く、くるしい、なら、……いったん、……はな、……れま、しょうか?(違う意味で苦しいマリア嬢)」

「離れられるわけないじゃないか‼︎ ……僕の心を縛りつけるマリア様を僕は絶対許さない……。(謎の被害妄想に取り憑かれる殿下)」

「しばり、つけて、ま、せんわ。……じゆうに、……はば、たいて、ください、まし。(息絶え絶えなマリア嬢)」

「……決めた。マリア様が聖女になるって言うのなら、僕がマリア様だけの騎士ナイトになる‼︎ マリア様が、しっかり聖女を勤められるように、僕が全てにおいてサポートするから、覚悟してよね‼︎(更にマリア嬢を抱きしめる殿下)」

「た、……たのんで、……ない、ですわ。(意識が無くなりかけてるマリア嬢)」

「ーーーーっ‼︎ マリア様も、僕の存在が必要不可欠なんだね。……わかった。……今以上に、マリア様を命がけで守るよ。(何かに酔いしれている殿下)」

「………………くううっ‼︎(白目剥き出しのマリア嬢)」

「よかったな、パトリック! マリア嬢も、パトリックがいてくれるだけで、とても心強いみたいだぞ‼︎(立ち上がって、パトリックにエールを送るサネユキ)」

「うん‼︎ マリア様も覚悟を決めたのだから、僕も、マリア様の為に頑張るよ‼︎(マリア嬢にスリスリする殿下)」

「そのいきだ、パトリック‼︎」

 ーー殿下とサネユキはきゃっきゃするのであった‼︎ーー

「……マリア様、なんだか苦しそうだったけど、大丈夫なのかな?(一人だけ冷静にマリア嬢を見ていたジョナサン)」

「心配ない。(さっとジョナサンの横に立つ大巫女)」

「姐御‼︎(バッと大巫女を見るジョナサン)」

「ラーズベルト家に生まれてくる女性は、遺伝的に強い身体と不屈な精神を授かりやすい。……『月輪』に耐えうる為なのか、……壮絶な人生に耐えうる為なのかはわからないがな。(ジョナサンにウインクする大巫女)」

「壮絶な人生……ですか?(きょとんジョナサン)」

「我も、詳細は過去の文献のみで得たから本当か否かは難しいところだが、今世の聖女であるマリア嬢も歴代の聖女と同じように、険しい困難にも果敢に立ち向かっていけるであろう。ただパトリックの愛が空回りし過ぎているのが、ほんの少しだけ心配だがな。(殿下の様子に困惑してる大巫女)」

「パトリック殿下は、マリア様を溺愛し過ぎて病んでますからね。……まあ、僕達がついてますから、なんとかなるかな?(不安げジョナサン)」


 ーーと、そこへ、オリビアとノアが戻ってきた‼︎ーー


「マリア様、お食事の用意ができましたよー‼︎ あれっ?(白目を剥いてるマリア嬢を見て焦るオリビア)」

「オリビアちゃん、ありがとう。マリア様のことは僕が責任を持って運ぶから安心してね。(キリッとした殿下)」

「パトリック殿下……。(無償の愛、流石ですわ。)」

「……。(いやいや、マリア様、白目剥いてて可哀想すぎるよ‼︎ かなり困惑してるノア)」

「よしみんな、……一旦、食事を取って英気を養うよ‼︎」

「「「「ラジャー‼︎」」」」

「……楽しそうでなりよりだ。(弟と従兄弟のわちゃわちゃを見て複雑な心境な大巫女ミクル)」

「姐御も行きますよ‼︎(大巫女の手を取るジョナサン)」

「ーーーーっ⁉︎ ……ジョナサン、我も一緒にいていいのか?(びっくりする大巫女)」

「当たり前じゃないですか‼︎ ノア先輩の奥様のお料理は、とっても美味しいんですから姐御も一緒に食べますよ‼︎」

「……ああ、ありがとう。(隠れて微笑む大巫女)」


 ーー聖女マリアは覚悟を決めて運命を突き進む‼︎ーー
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