【モフモフは正義‼︎】親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く

星 佑紀

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第伍譚

0048:舞台の役者達

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 ーーここは、アデル国立大劇場のメインホール。ーー

 ーー緞帳どんちょうが上がった舞台上では……。ーー

『嗚呼、ルーク、……何故、あなたはルークなの?(ものすっごい下手くそな厚化粧で正面を向き、隣にいるロバート殿下ルークへの思いを棒読みで放出するランドットのセラ・リノン男爵令嬢)』

『そーれはー、どうにもならない~、うんめいのしーわざーー? 嗚呼ー、イレイザー、イレイザー、うるーわしーのー、イレーイザー、いまーすぐー、かーけーよーりーー、攫いたいーー‼︎(隣にいるセラ嬢イレイザに対する想いをオーケストラの伴奏にのせて歌いかける、厚化粧なランドットの第二王子ロバート殿下)』

『でも、…そ~れはー、ゆるされない~、あい~~、ふたりはー、引き裂かれるー、うんめいなのよう~~‼︎ 嗚呼ー、嗚呼ー、ルークー、ルークー!(いきなり歌い出し、不協和音の幅を広げていく酔いどれセラ嬢イレイザ)』

『イレイザー、イレイザーー‼︎ ぼくだけのー、イレイレイザーー‼︎ 駆け落ちしてー、結婚だーー‼︎ 周りはどうなってもー、気にしなあいーー‼︎ ふたりだけでー、生きてー、いこうーー‼︎(酔いしれてるロバート殿下ルーク)』

『かぞーくをーー、みすーててえー、新天地をひらーくのようー‼︎(いきなりロバート殿下ルークの方を向いて手を組み、踊り出すセラ嬢イレイザ)』

『周りの村をー、襲ってえー、物資を調達するうー‼︎ そしーてー、子分を増やして~、金銀財宝を盗りまくり~、部外のー、女、子どもを攫ってー、痛めつけえー、ボコボコにしたー男どもの前でー、見せしめだあー‼︎(なかなか酷すぎる歌詞を酔いしれた表情で歌うロバート殿下ルーク)』

『自分たちがー、贅沢するためにー、奴隷を増やしてえー、家畜のようにー、働かせるうー‼︎ 奴隷にー、人権なんてえー、ないのだかあーらー‼︎(ゲスな歌詞を歌いつつクルクル回って踊りまくるセラ嬢イレイザ)』

『いずうれー、せかいのおー、ぜんじんるいをー、奴隷化してえー、ふたーりでー、神になるうーのだあーーー‼︎(コンプライアンスなんてないかのように、ゲスな歌詞を平気で歌ってるロバート殿下ルーク)』

『せかーいーはー、ふたーりーのためにー、ふたーりーは、ふたーりーのためにいー‼︎(ゲスゲスな歌詞に疑問さえももっていないセラ嬢イレイザ)』

『まわりなんーてー、どうでもーいいー! イレイザーさえー……。』

『ルークー、さえー……。』

『『生きていけるならーばーー‼︎(見つめ合う二人)』』


 シーーーーーーーーン(ドン引きな観客)


 ーー原作とかなり離れた内容で、公演が始まった‼︎ーー


 ◇  ◇  ◇


 ーー一方、特別席『玻璃はりの間』では……。ーー


「……。(歌いまくっている役者を見て、ワナワナと震えているリリアナ嬢)」

「……。(いかめしく、舞台上を睨みつけるベル殿下)」

「……悪役令嬢って、こんなにゲスいキャラクターなんだ。(ほえーとドン引きしてるパトリック殿下)」

「……いや、たぶん、物語というか、舞台設定が違うような気がするんですけど。(汗だくノア)」

「でも、今歌っている歌詞が、この作品の大まかな内容そのものなんでしょ? 歌通りに進むとなると、マリア様には、絶対に見せられないね。(さりげなくマリア嬢の両目を、自身の両手で目隠しするパトリック殿下)」

「……わふわふ。(パトリック様から目隠しされて、初めて安心致しましたわ。 歌の途中から聞きたくないという思いが先行して、耳栓をキュポッと装着したマリア嬢)」

「……。(マリア様にさりげなくイタズラできる良いチャンスだあー‼︎ マリア嬢の背後で、ニマニマしてるパトリック殿下)」

「……せない。(何やらブツブツ呟いてるリリアナ嬢)」

「「「…………?(さっとリリアナ嬢に目を向けるパトリック殿下とノアと大巫女ミクル)」」」

「……大好きな、クリンゲル先生の大切な作品を、ぐちゃぐちゃにするなんて、……ぶちコロシテやりますわよ‼︎(激おこリリアナ嬢)」

「「「ーーーーっ⁉︎(リリアナ嬢のアツい想いに火傷どころではない、パト、ノア、大巫女)」」」

「リア、……駄目だ。ここで、とやり合っても、相手の思う壺。……ここは、グッとこらえよう。(とても複雑な心境のベル殿下)」

「……そうかもしれません。……ベル殿下の仰るように、私がステージへ乗り込んだとしても、何も、変わらない、むしろ、役者達の都合の良いようになるでしょう。……ですが、こんな原作に逆らうようなシナリオを原作ファンの私が許したら、もっとおかしくなりますわ‼︎ ……原作を知らないお方が、この舞台を見て、悪役令嬢イレイザのことを勘違いしてしまいます‼︎ ……なにより、クリンゲル先生の気持ちは、……信念は、どうなるのですか⁉︎(ガバッと立ち上がって、全身をピシッと引き締めるリリアナ嬢)」

「……。(泣きそうな顔のベル殿下)」

「……あの、……この舞台の原作のあらすじを持ってたりしますか?(リリアナ嬢のアツさにビビりつつも、とりあえず質問するパトリック殿下)」

「……ここに。(シュパッとパトリック殿下のところまで移動してきて、一冊の分厚いハードな御本を差し出すリリアナ嬢)」

「……わお。(あらすじ通り越して本編きたあー⁉︎ 分厚さにビビりまくるパトリック殿下)」

「これはまだまだ冒頭部分だけですが、それでも、主人公イライザの聡明さ、そして、作者であるクリンゲル先生の素晴らしさを理解出来ると思いますわ。(アツすぎるリリアナ嬢)」

「……。(この分厚さで冒頭部分なの⁉︎ 大汗パト殿下)」

「……もっふう。(目隠しが取れたので、パトリック殿下と一緒に分厚い御本を覗き見るマリア嬢)」

「……よし、……どうにか読み込んでみよう。……ノア、分かってるね?(ノアに水を向けるパトリック殿下)」

「はい、パトリック殿下。(静かに立ち上がるノア)」

「リリアナ嬢、ベル殿下、……君達は、有名なランドットのご要人だ。……今ここで、お二人が何かを起こすと、アデルとランドット間で、なんらかの軋轢あつれきが生まれるかもしれない。……そこでだ。……僕達は、正直、世に出ていない顔だから、ちょっとした無茶は出来る。だからリリアナ嬢、今回のことは、僕達に任せてくれないかい?(真っ直ぐにリリアナ嬢を見るパトリック殿下)」

?(何かを感じ取るリリアナ嬢)」

「うん。……人知れず活動しているクーデター組織だよ。(真っ直ぐなパトリック殿下)」

「「ーーーーっ⁉︎(驚愕ランドットズ)」」

「いやいや、今は、解散してるじゃないですか、パトリック殿下!(慌てて訂正するノア)」

「……いずれ、再結成するつもりだからね。……(小声で)ランドット側に貸しを作っておくと、良いことがあるかも知れないだろ?(ノアにヒソヒソ話してるパトリック殿下)」

「そうですけど……。(モヤモヤしてるノア)」

「とにかく、ノア、……行けるよね?」

「ええ、いつでも、どうぞ。(覚悟を決めるノア)」

「指定人物魔法転送……。(瞳孔ピカッ)」

「「ーーーーっ⁉︎(驚きランドットズ)」」


 ほわほわほわほわ……シュトッーー‼︎


 ーー橙色の光とともに、ノアは消失した‼︎ーー


「ノアを舞台袖へ転送させました。(真剣パト殿下)」

「「ーーーーっ‼︎(驚きランドットズ)」」

「とりあえず、歌劇団内部で何が起こったのかをノアに探らせて、対策を練ります。……お二人とも、いいですか?」

「……リア、……パトリック殿下を信じよう。」

「……そうですわね。……パトリック殿下、よろしくお願い致します。(深く頭を下げるリリアナ嬢)」

「任せてください。……こんなときの為に、調してきましたからね‼︎(にんまり魔王殿下)」

「「…………?(きょとんランドットズ)」」

「マリア様、やっちゃいますよ‼︎」

「わっふふう‼︎(パト殿下のお膝の上で、左拳を振り上げるマリア嬢)」

「……なかなか、見応えがあるやもしれんな。(静かにパトリック殿下達を見守ってる大巫女ミクル)」


 ーーはてさて、パトリック殿下の思惑は如何に⁉︎ーー
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