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第3章 初めての……
6.
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「お土産買ってそろそろ出るか」
「あ、はい。
そうですね」
すぐに心の内から網代さんへ視線を向け、気持ちを切り替える。
きっと、いま考えたって答えは出ない。
帰ってからゆっくり考えよう。
タオルを買ったお土産ショップに戻ってくる。
「西沢さんにお土産、買った方がいいですよね」
「あー……」
微妙な顔で網代さんは手にしていたマグカップを置いた。
「絶対、どうだったか聞いてくるよな……」
はぁっと面倒くさそうに短くため息を落としながらも、彼がお菓子コーナーへと移動する。
「聞かれますね……」
しかも西沢さんの場合、そわそわしながらこっちから話すのを待っているから、さらに面倒くさい。
「なんで僕は西沢さんに車を借りたんだろうな……?」
「あー……」
なんとなく想像はつく。
きっとあのお人好し全開の笑顔で迫られて、断り切れなかったんだろう。
「これでいいんじゃない?」
網代さんが選んだのは、水族館一番人気と書かれているペンギンのケーキだった。
「そうですね。
これなら奥様も喜んでくれそうです」
適当に選んだと言われればそうだが、意外性を攻めるより無難なのが一番だ。
あとはぷらぷらと見てまわる。
「イッチー」
網代さんが手招きしていたのは、ぬいぐるみの前だった。
「イッチーがいた」
抱き上げたペンギンのぬいぐるみを私に見せてくる。
「凄く似てる」
右手で羽をぱたぱたさせながら網代さんはにこにこ笑っていて、もう文句を言う気もなくなった。
それにワラスボに似ているはショックだが、ペンギンは可愛いからいい。
「歩くところが一緒なんですよね?」
「可愛いところも似ている」
途端にぼっ!と火でも噴いたかのように顔が熱くなる。
「よし、これをイッチーに買ってやろう」
網代さんはさっき選んだお菓子と一緒に、ぬいぐるみを抱いてレジへと向かう。
「え、いいですよ!」
「いいだろ。
僕はイッチーがペンギンを抱いているところが見たい」
なんだかよくわからない理由だが、彼の中ではすでに決定事項なのらしい。
なら、仕方ないか。
それになんだか、気に入ったみたいだし。
駐車場に戻ったところで、ペンギンを抱かされた。
「やっぱり、イッチーとペンギンの組み合わせは最高だ」
うんうんと網代さんは納得しているけれど、そうかな?
「写真を撮っていいか」
いいもなにも彼の手にはすでに携帯が握られ、かまえられている。
「いいですよ」
変な人だなと内心笑いながら許可を出す。
「ありがとう」
二回、シャッター音がしたあと、網代さんは撮った写真を確認した。
「見せてくださいよ」
「ほら」
身を屈め、彼が私の前に携帯を出す。
そこにははにかむように笑う私が写っていた。
……こんな顔してたんだ。
仏頂面ではないのはわかっているが、こんな――嬉しそうな顔を彼に向けていたなんて自覚がなった。
写真撮影を終え、水族館を出る。
「今日は凄く楽しかったです。
ありがとうございます」
網代さんと一日ふたりだなんて大丈夫か不安はあったが、ずっと楽しかった。
それにこんなお土産まで。
私の膝の上には早速、ペンギンのぬいぐるみがのっている。
「なにを言ってる。
送り届けるまでがデートだろ」
まるで「家に帰るまでが遠足です」みたいな言い草だが、そう……なのか?
「ちゃんとバッチリのところを調べてある。
期待していていい」
網代さんは得意げなので、それは期待させてもらおう。
「あ、はい。
そうですね」
すぐに心の内から網代さんへ視線を向け、気持ちを切り替える。
きっと、いま考えたって答えは出ない。
帰ってからゆっくり考えよう。
タオルを買ったお土産ショップに戻ってくる。
「西沢さんにお土産、買った方がいいですよね」
「あー……」
微妙な顔で網代さんは手にしていたマグカップを置いた。
「絶対、どうだったか聞いてくるよな……」
はぁっと面倒くさそうに短くため息を落としながらも、彼がお菓子コーナーへと移動する。
「聞かれますね……」
しかも西沢さんの場合、そわそわしながらこっちから話すのを待っているから、さらに面倒くさい。
「なんで僕は西沢さんに車を借りたんだろうな……?」
「あー……」
なんとなく想像はつく。
きっとあのお人好し全開の笑顔で迫られて、断り切れなかったんだろう。
「これでいいんじゃない?」
網代さんが選んだのは、水族館一番人気と書かれているペンギンのケーキだった。
「そうですね。
これなら奥様も喜んでくれそうです」
適当に選んだと言われればそうだが、意外性を攻めるより無難なのが一番だ。
あとはぷらぷらと見てまわる。
「イッチー」
網代さんが手招きしていたのは、ぬいぐるみの前だった。
「イッチーがいた」
抱き上げたペンギンのぬいぐるみを私に見せてくる。
「凄く似てる」
右手で羽をぱたぱたさせながら網代さんはにこにこ笑っていて、もう文句を言う気もなくなった。
それにワラスボに似ているはショックだが、ペンギンは可愛いからいい。
「歩くところが一緒なんですよね?」
「可愛いところも似ている」
途端にぼっ!と火でも噴いたかのように顔が熱くなる。
「よし、これをイッチーに買ってやろう」
網代さんはさっき選んだお菓子と一緒に、ぬいぐるみを抱いてレジへと向かう。
「え、いいですよ!」
「いいだろ。
僕はイッチーがペンギンを抱いているところが見たい」
なんだかよくわからない理由だが、彼の中ではすでに決定事項なのらしい。
なら、仕方ないか。
それになんだか、気に入ったみたいだし。
駐車場に戻ったところで、ペンギンを抱かされた。
「やっぱり、イッチーとペンギンの組み合わせは最高だ」
うんうんと網代さんは納得しているけれど、そうかな?
「写真を撮っていいか」
いいもなにも彼の手にはすでに携帯が握られ、かまえられている。
「いいですよ」
変な人だなと内心笑いながら許可を出す。
「ありがとう」
二回、シャッター音がしたあと、網代さんは撮った写真を確認した。
「見せてくださいよ」
「ほら」
身を屈め、彼が私の前に携帯を出す。
そこにははにかむように笑う私が写っていた。
……こんな顔してたんだ。
仏頂面ではないのはわかっているが、こんな――嬉しそうな顔を彼に向けていたなんて自覚がなった。
写真撮影を終え、水族館を出る。
「今日は凄く楽しかったです。
ありがとうございます」
網代さんと一日ふたりだなんて大丈夫か不安はあったが、ずっと楽しかった。
それにこんなお土産まで。
私の膝の上には早速、ペンギンのぬいぐるみがのっている。
「なにを言ってる。
送り届けるまでがデートだろ」
まるで「家に帰るまでが遠足です」みたいな言い草だが、そう……なのか?
「ちゃんとバッチリのところを調べてある。
期待していていい」
網代さんは得意げなので、それは期待させてもらおう。
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