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第4章 極悪上司と妻の想い出
2.これっきりにしませんか
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週末にまた、西山さんに食事に誘われた。
「今週も、お疲れ」
「……お疲れ様です」
ビールで乾杯。
今日、連れてきてくれたのは、ビアバーだった。
「また今週も、京塚主任に怒られちゃったよ」
西山さんは笑っているが、直す気はないのだろうか。
「なんであの人、あんなにすぐ怒るんだろうね?
もう営業じゃないのに口出してしてくるし。
オレにはオレのやり方があるんだっていうの」
ぶちぶち言いながらビールを飲んでいる西山さんに、はっきりと確信した。
この人は私とは絶対、相容れない人だ。
京塚主任が注意するのはいつも正当な理由で、だからこそ他の人間もいったんは、聞き入れる。
でも西山さんはどうして自分が怒られるのかすらわかっていないどころか、不当だと思っている節もある。
「……自分ひとりでできると思っているのなら、やってみたらいいんですよ」
「だろ!?
オレひとりでもちゃんとできるって」
はぁーっ、とため息をついた私に、彼は気づかない。
自分が内容を完全に聞き間違っていることにも。
「いつか、京塚主任の鼻を明かしてやりたいな」
「……」
ぐいっ、と彼がビールを呷った。
そんなときは永遠に来ないと断言できる。
それよりも大きな失敗をしないかの方が心配だ。
会社の愚痴も終わり、当たり障りのない話題に移っていく。
でもいままではややもすれば楽しい、なんて思えていたそれは、苦痛でしかなくなっていた。
「……もしかして、つまんない?」
急に彼が話を止め、私の顔をうかがう。
それではじめて、ただぼーっと話を聞き流していた自分を自覚した。
「あ、えと。
……全然」
慌てて、笑顔を作って答える。
「なら、いいんだけど」
表面も乾いてしまったグラスを、彼が口に運ぶ。
けれどそれからは、ほとんど話らしい話をしなかった。
いつもよりも早く、店を出る。
「今日、もしかして体調悪かった?」
駅に向かいながら訊いていた彼に、首を振って否定した。
「なら……」
「あの!」
足を止め、真っ直ぐに彼を見上げる。
彼も立ち止まり、私を見下ろした。
小さく深呼吸し、ゆっくりと口を開く。
「これっきりに、しませんか?
理由はもう、西山さんもわかっていると思うので」
「……」
彼からの返事はない。
しばらくして、はぁーっとため息が降ってきた。
「……そうだね。
じゃあ」
短く言った彼は私を置き去りにし、足早に去っていった。
「……よかったんだよ、これで」
その気もないのにだらだらと付き合って、相手に気を持たせるのは残酷だ。
「それにほら、これで京塚主任のこと、考えられるし」
無理にでも明るく考えて歩きだした。
翌日の西山さんは、私に素っ気なかった。
とはいえ、直接仕事で用があって話すことなんてあまりないから、別にいいのだけれど。
「今週も、お疲れ」
「……お疲れ様です」
ビールで乾杯。
今日、連れてきてくれたのは、ビアバーだった。
「また今週も、京塚主任に怒られちゃったよ」
西山さんは笑っているが、直す気はないのだろうか。
「なんであの人、あんなにすぐ怒るんだろうね?
もう営業じゃないのに口出してしてくるし。
オレにはオレのやり方があるんだっていうの」
ぶちぶち言いながらビールを飲んでいる西山さんに、はっきりと確信した。
この人は私とは絶対、相容れない人だ。
京塚主任が注意するのはいつも正当な理由で、だからこそ他の人間もいったんは、聞き入れる。
でも西山さんはどうして自分が怒られるのかすらわかっていないどころか、不当だと思っている節もある。
「……自分ひとりでできると思っているのなら、やってみたらいいんですよ」
「だろ!?
オレひとりでもちゃんとできるって」
はぁーっ、とため息をついた私に、彼は気づかない。
自分が内容を完全に聞き間違っていることにも。
「いつか、京塚主任の鼻を明かしてやりたいな」
「……」
ぐいっ、と彼がビールを呷った。
そんなときは永遠に来ないと断言できる。
それよりも大きな失敗をしないかの方が心配だ。
会社の愚痴も終わり、当たり障りのない話題に移っていく。
でもいままではややもすれば楽しい、なんて思えていたそれは、苦痛でしかなくなっていた。
「……もしかして、つまんない?」
急に彼が話を止め、私の顔をうかがう。
それではじめて、ただぼーっと話を聞き流していた自分を自覚した。
「あ、えと。
……全然」
慌てて、笑顔を作って答える。
「なら、いいんだけど」
表面も乾いてしまったグラスを、彼が口に運ぶ。
けれどそれからは、ほとんど話らしい話をしなかった。
いつもよりも早く、店を出る。
「今日、もしかして体調悪かった?」
駅に向かいながら訊いていた彼に、首を振って否定した。
「なら……」
「あの!」
足を止め、真っ直ぐに彼を見上げる。
彼も立ち止まり、私を見下ろした。
小さく深呼吸し、ゆっくりと口を開く。
「これっきりに、しませんか?
理由はもう、西山さんもわかっていると思うので」
「……」
彼からの返事はない。
しばらくして、はぁーっとため息が降ってきた。
「……そうだね。
じゃあ」
短く言った彼は私を置き去りにし、足早に去っていった。
「……よかったんだよ、これで」
その気もないのにだらだらと付き合って、相手に気を持たせるのは残酷だ。
「それにほら、これで京塚主任のこと、考えられるし」
無理にでも明るく考えて歩きだした。
翌日の西山さんは、私に素っ気なかった。
とはいえ、直接仕事で用があって話すことなんてあまりないから、別にいいのだけれど。
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