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第4章 極悪上司と妻の想い出
3.誕生会
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ごく普通の、建売住宅の玄関前に立って深呼吸。
……落ち着け、落ち着け。
今日は、料理と飾り付けの手伝いに来ただけだし。
「よしっ」
目を開け、インターフォンのボタンを押す。
相手が出る僅かな間が、私には妙に長く感じた。
『はーい、いま開けるねー』
『ちょ、待て!
杏里!』
焦る京塚主任の声と共に、ドタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。
次の週末の土曜朝、私は杏里ちゃんの誕生会の手伝いに、京塚家を訪れていた。
「はーい!」
元気いっぱいにドアを開けた杏里ちゃんだけど、私の顔を見て固まった。
「……なんで、あんたが」
ぽそっとかろうじて聞こえる声で呟かれると同時に、ちっ、と舌打ちの音も聞こえてきて、顔が引きつった。
「すまんな、星谷。
休みの日に」
「いえ、かまいません」
ふぉわっ、ぴっちり系のカットソーの京塚主任は、スタイルの良さが引き立って格好いいなー。
……なんて見とれてる場合じゃないんだけど。
「杏里。
今日は星谷さんが杏里の誕生会のために、いろいろやってくれるんだぞ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
杏里ちゃんはにっこり笑って私の顔を見上げているけれど……「余計なことしないで」ってその顔にははっきり書いてあった。
「えっと。
……喜んでもらえるように、頑張るね」
ううっ、わかってはいたことだけど、凹みそう。
――ピンポーン。
すぐにまた、インターフォンが鳴る。
「あ!
今度こそかなちゃんだ!
はーい!」
「おい、こら!」
玄関へ駆けていく杏里ちゃんを、京塚主任が追う。
確かに彼じゃなくても、あの元気に一日中付き合っていたら疲れそうだ。
親って凄い。
すぐに玄関の方から、お預かりしますとか、よろしくお願いしますとか言う声が僅かに聞こえてきた。
「杏里ちゃんは……?」
まもなく戻ってきたのは、京塚主任ひとりだった。
「お友達のママに預けた。
今日、招待しているから、そのとき一緒に連れてきてもらうようになっている。
いたらうるさくて準備どころじゃないからな」
はぁっ、と小さく彼がため息を落とし、私も苦笑いしかできない。
「準備の方は?」
「はい。
いろいろ準備してきました」
京塚主任へ、持ってきたトートバッグを見せる。
中にはガーランドやペーパーチェーンが詰め込まれていた。
ここ数日、駅ビルの百円ショップで材料を仕入れては作っていた、力作だ。
「凄いな」
「料理の下ごしらえもバッチリ」
反対の手に握る、保冷バッグを上げてみせる。
唐揚げとコロッケはもう、揚げるだけの状態にしてきた。
他にも家でできるものはいろいろと。
「本当に助かる」
「え、別にいいんですよ。
じゃあ、さっそくはじめちゃいましょう!」
着ていた上着を脱いでバッグの中からエプロンを出してつける。
「そうだな」
京塚主任も、笑って頷いた。
「これ、飾り付けたらいいようになっているんで、お任せします。
キッチン、お借りしますね」
飾りの入ったバッグを押しつけ、キッチンへと向かう。
誕生会は一時から、いまは九時過ぎたところだから、テキパキやんないと間に合わない。
「なんかあったら声をかけてくれ」
「はい」
京塚家のキッチンは、対面になっていた。
亡くなった奥さんの好みなのかな。
でもおかげで、京塚主任がやっていることもよく見える。
「まずは、っと」
唐揚げに一口大に丸めたコロッケ、ミニバンズで挟んだハンバーガーなど、ほとんどを串に刺して摘まんで食べられるものを計画した。
子供じゃなくても喜んでくれると思うんだけど……どうなんだろう?
今日のお誕生会には、仲のよいお友達三人だけ招待しているらしい。
お友達のママさんから料理は差し入れすると言われたものの、大丈夫だって大見得切ったのは京屋主任だ。
……まあ、あの性格からいってわからないでもないけど。
もしかして、最初から当てにされていた? って一瞬、喜びかけたけど、私の手伝いが決まったあとに招待することにしたらしいので、ちょっと残念。
……落ち着け、落ち着け。
今日は、料理と飾り付けの手伝いに来ただけだし。
「よしっ」
目を開け、インターフォンのボタンを押す。
相手が出る僅かな間が、私には妙に長く感じた。
『はーい、いま開けるねー』
『ちょ、待て!
杏里!』
焦る京塚主任の声と共に、ドタバタと慌ただしい足音が聞こえてくる。
次の週末の土曜朝、私は杏里ちゃんの誕生会の手伝いに、京塚家を訪れていた。
「はーい!」
元気いっぱいにドアを開けた杏里ちゃんだけど、私の顔を見て固まった。
「……なんで、あんたが」
ぽそっとかろうじて聞こえる声で呟かれると同時に、ちっ、と舌打ちの音も聞こえてきて、顔が引きつった。
「すまんな、星谷。
休みの日に」
「いえ、かまいません」
ふぉわっ、ぴっちり系のカットソーの京塚主任は、スタイルの良さが引き立って格好いいなー。
……なんて見とれてる場合じゃないんだけど。
「杏里。
今日は星谷さんが杏里の誕生会のために、いろいろやってくれるんだぞ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
杏里ちゃんはにっこり笑って私の顔を見上げているけれど……「余計なことしないで」ってその顔にははっきり書いてあった。
「えっと。
……喜んでもらえるように、頑張るね」
ううっ、わかってはいたことだけど、凹みそう。
――ピンポーン。
すぐにまた、インターフォンが鳴る。
「あ!
今度こそかなちゃんだ!
はーい!」
「おい、こら!」
玄関へ駆けていく杏里ちゃんを、京塚主任が追う。
確かに彼じゃなくても、あの元気に一日中付き合っていたら疲れそうだ。
親って凄い。
すぐに玄関の方から、お預かりしますとか、よろしくお願いしますとか言う声が僅かに聞こえてきた。
「杏里ちゃんは……?」
まもなく戻ってきたのは、京塚主任ひとりだった。
「お友達のママに預けた。
今日、招待しているから、そのとき一緒に連れてきてもらうようになっている。
いたらうるさくて準備どころじゃないからな」
はぁっ、と小さく彼がため息を落とし、私も苦笑いしかできない。
「準備の方は?」
「はい。
いろいろ準備してきました」
京塚主任へ、持ってきたトートバッグを見せる。
中にはガーランドやペーパーチェーンが詰め込まれていた。
ここ数日、駅ビルの百円ショップで材料を仕入れては作っていた、力作だ。
「凄いな」
「料理の下ごしらえもバッチリ」
反対の手に握る、保冷バッグを上げてみせる。
唐揚げとコロッケはもう、揚げるだけの状態にしてきた。
他にも家でできるものはいろいろと。
「本当に助かる」
「え、別にいいんですよ。
じゃあ、さっそくはじめちゃいましょう!」
着ていた上着を脱いでバッグの中からエプロンを出してつける。
「そうだな」
京塚主任も、笑って頷いた。
「これ、飾り付けたらいいようになっているんで、お任せします。
キッチン、お借りしますね」
飾りの入ったバッグを押しつけ、キッチンへと向かう。
誕生会は一時から、いまは九時過ぎたところだから、テキパキやんないと間に合わない。
「なんかあったら声をかけてくれ」
「はい」
京塚家のキッチンは、対面になっていた。
亡くなった奥さんの好みなのかな。
でもおかげで、京塚主任がやっていることもよく見える。
「まずは、っと」
唐揚げに一口大に丸めたコロッケ、ミニバンズで挟んだハンバーガーなど、ほとんどを串に刺して摘まんで食べられるものを計画した。
子供じゃなくても喜んでくれると思うんだけど……どうなんだろう?
今日のお誕生会には、仲のよいお友達三人だけ招待しているらしい。
お友達のママさんから料理は差し入れすると言われたものの、大丈夫だって大見得切ったのは京屋主任だ。
……まあ、あの性格からいってわからないでもないけど。
もしかして、最初から当てにされていた? って一瞬、喜びかけたけど、私の手伝いが決まったあとに招待することにしたらしいので、ちょっと残念。
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