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プロローグ
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「君は本当に、それでいいのか」
彼が眼鏡の奥から、じっと私を見つめる。
きっとそんなつもりはないのだろうが、責めるような瞳に内心、冷たい汗をかいた。
いままでずっと、諦めることの多い人生だった。
周りの目には、なんでもわがまま放題に育ったお嬢様、そんなふうに見えていただろう。
けれど、私の好きにできたことなんて、あまりない。
いつもいつも、父の、婚約者の顔色をうかがい、その希望に添うように振る舞ってきた。
「私は」
もうなにも諦めないと決めた。
父と婚約者の言いなりにはならない。
あの――籠の中にはもう戻らない。
「私はもう、諦めません。
婚約者とも結婚しません」
私には許されない言葉。
でもはっきりと口にする。
だって今日はそのために、ここに来たのだから。
彼との出会いは最悪だった。
簡単な仕事もできない私を、彼は怒鳴ったのだ。
でもそのすぐ後、私の立場を知って限られた範囲ではあったけれど、父と婚約者の鎖から自由にしてくれた。
諦めない自由を与えてくれたのも彼だ。
そんな彼を私は――。
「だって私は……あなたが好き、だから」
彼をまっすぐに見つめ返す。
もうすでに婚約者との入籍が決まっている。
きっとこの決断は許されるものではないだろう。
けれどもう、私は自分に――嘘をつきたくない。
「愛乃……」
彼の顔が近づいてきて唇が重なる。
「俺は愛乃を……――」
彼の答えに感情が堰を切り、涙になって流れていく。
さようなら、お父様。
さようなら、婚約者。
私はもう、なにも諦めない。
愛する人と一緒に、自分で選んで生きていく。
彼が眼鏡の奥から、じっと私を見つめる。
きっとそんなつもりはないのだろうが、責めるような瞳に内心、冷たい汗をかいた。
いままでずっと、諦めることの多い人生だった。
周りの目には、なんでもわがまま放題に育ったお嬢様、そんなふうに見えていただろう。
けれど、私の好きにできたことなんて、あまりない。
いつもいつも、父の、婚約者の顔色をうかがい、その希望に添うように振る舞ってきた。
「私は」
もうなにも諦めないと決めた。
父と婚約者の言いなりにはならない。
あの――籠の中にはもう戻らない。
「私はもう、諦めません。
婚約者とも結婚しません」
私には許されない言葉。
でもはっきりと口にする。
だって今日はそのために、ここに来たのだから。
彼との出会いは最悪だった。
簡単な仕事もできない私を、彼は怒鳴ったのだ。
でもそのすぐ後、私の立場を知って限られた範囲ではあったけれど、父と婚約者の鎖から自由にしてくれた。
諦めない自由を与えてくれたのも彼だ。
そんな彼を私は――。
「だって私は……あなたが好き、だから」
彼をまっすぐに見つめ返す。
もうすでに婚約者との入籍が決まっている。
きっとこの決断は許されるものではないだろう。
けれどもう、私は自分に――嘘をつきたくない。
「愛乃……」
彼の顔が近づいてきて唇が重なる。
「俺は愛乃を……――」
彼の答えに感情が堰を切り、涙になって流れていく。
さようなら、お父様。
さようなら、婚約者。
私はもう、なにも諦めない。
愛する人と一緒に、自分で選んで生きていく。
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