君は僕の大切なおもちゃ【R18】

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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最終章 唯一大事なおもちゃ

3-2 お仕置き、再び

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……暗くて狭いところは嫌い。
小さいころを思い出すから。

押し入れの中、薄く開いた扉の隙間。
そこから見るのは、お母さんと担任の先生。
見たくないのに目はじっと、外の様子を見つめてしまう。
不意に後ろから腕が伸びてきて、私の目を、耳を塞いだ。

「見るな。聞くな」

こくりとひとつ頷いて、安心して目を閉じる。

次に目を開くと……真っ暗な、クローゼットの中。

……あ、またあの夢。
まだトラウマに、なっていたんだ。

でも、いつもと違う、私の目と耳を塞ぐ手。

あれはきっと……悠生。

そのせいか、あの夢見たあとはいつも過呼吸起こしてしまうのに、今日は息苦しさが、ない。

「悠生……」

……私、嘘、ついてないよ?
翔はただの友達だもん。
それに利香だって一緒だった。
なんで信じてくれないの?
 
コトリ、外で音がして、びくっと身体が震えた。

「沙也加。
反省、したか?」

「……出して」

外から悠生の声。
扉に縋ってみても、やっぱりびくともしない。

「……もう嘘、つかないか?」

「……嘘、ついてない」

扉の外は無音。
自分の早い心臓の音だけが耳に届く。

「沙也加にはお仕置きが足りないみたいだな」

「え?」

まだ出してもらえないってことかな?

……でも。
そんな考えは甘かった。

「そうだな。
……とりあえず、自分の胸、揉んで」

「……はい?」

「……おもちゃに拒否権はない。
揉め」

「……」

低くなった悠生の声に恐怖を感じ、震える手で自分の胸を掴み、動かす。
悠生に教え込まれている身体はすぐに、それだけで熱を帯びだす。

「ちゃんと揉んでるか?
声、聞こえないぞ?」

おかしそうな悠生の声。

……わかっているくせに。
私があまり、声をたてないこと。

「ブラウスのボタン外して……、直にさわってみようか」

「いや、恥ずかしい……」

「クローゼットの中で見えないんだから、できるだろ」

なぜか逆らうことができないまま、プチプチとひとつずつゆっくりと、ボタンを外す。
直にさわると、甘い吐息が落ちた。
狭いクローゼットの中に響きだす、荒い呼吸。

「気持ちいいか?
ちゃんと気持ちよくなってるか確かめて見ろ」

「……どう、やっ、て……」

「……濡れてるかどうか、さわればわかるだろ」

見えないことがわかっていながら、激しくあたまを振る。

でも。

「さわって報告しろ。
こんなことで興奮する変態でなければ、大丈夫だろ」

「……」

悠生の冷たい言葉のひとつひとつに。
体温を上げてしまう自分がいる。
言われるがままにそっとふれたそこは、ぐっしょりと濡れていた。

「……てる」

「聞こえない」

「……濡れ、てる」

「変態」

どろり、溢れ出る、なにか。

「自分でさわって、気持ちよくなっていいぞ。
ただし、許可なくイくことは許さない」

「……無理」

「僕はかまわないが。
……沙也加は耐えられるのか?」

身体は完全に火照っている。

刺激が欲しくて、ひくついている、そこ。

落ち着けようと深呼吸してみたところで焼け石に水。

震える手を伸ばし、ふれる。

くちゅり、耳に届く水音。

指を動かすたび、そこは水音をたて続ける。
クローゼットの中に大きく響く、自分の荒い呼吸と水音。

時折混じりだした、喘ぎ声。

狭いクローゼット内は熱い吐息のせいで温度と湿度が上がっているのか、息苦しい。

「声、聞こえてるぞ。
自分でやって気持ちいいのか?」

どろり、また溢れ出る。

こんなことをさせられて、興奮しているだなんて、自分は変態だと思う。

自覚するとどろりとまた溢れ出る。

止まらない、指。
零れだす、涙。
あ、もうすぐ……。

「……誰が勝手にイっていいと言った?」

悠生の冷たい声に。

手が、止まる。

「……だって、……もう」

「沙也加は嘘ついていただろ」

「……ついて、ない」

「……いいぞ、続けて」

釈然としないながらも、手は勝手に動きだす。

また、いつも感覚が迫ってきて、涙が零れだし……。

「イくことはまだ、許してない」

ぴたり、手が止まる。

従う必要はないのに、従ってしまう身体が恨めしい。

「やっ……」

「沙也加が本当のことを話すまで、イくことは許さない」

「嘘とか……ついて……ない」

「続けろ」

また途中でやめさせられて、苦しい思いをするのはわかっているのに。

早く達してしまいたい私は、耐えられなくてまた、手を動かし始める。

何度も何度も、見えないのになぜわかるのか、あと少しのところでやめさせられた。

涙でぼろぼろ、息は絶え絶えで、気が狂いそう。

……そしてとうとう。

「友達の、結婚祝いじゃなくてっ、……悠生、の、……誕生日、プレゼント、……買い、にっ、……いっ、て、た、のっ」

「よし、イっていい」

やっと許可が出て、妨げるものはないのに。
あと少しのところからその先に行けない。
苦しくて苦しくて。

「……沙也加?」

「……ゆうっ、」

開いたクローゼットに必死で手を伸ばすと、悠生が握ってくれた。

……途端に真っ白く弾ける意識。

我慢させられていたぶん、いつもよりも余韻が長い。

ぐったりと悠生にもたれ掛かると、汗で額に張り付いていた髪を剥がして、口付けしてくれた。
そのまま抱きかかえられて、ベッドに寝かせてくれる。

「いっぱい泣いたから、のど乾いただろ」

ゆっくりと髪を撫で、口移しで水を飲ませてくれた。
いつもの、優しい笑顔にほっとする。

「マリッジブルーも嘘だろ」

「……うん。
悠生のプレゼント、どうしたらいいのか悩んでた」

「そんなことで悩む必要はない。
沙也加が、その……僕の大切なおもちゃでいてくれればいいんだから」

悠生が、赤くなって視線を逸らす。

……そっか。
私の言うこと、信じてなかったんじゃなくて。
全部お見通しで、私が嘘ついて隠し事して、ひとりで具合が悪くなるほど悩んでいたこと、怒っていたのだ。

「はい。
ごめんなさい」

ふれる唇に腕を伸ばした。
最後までもらえていない身体はまだくすぶっていて、それだけで甘い吐息が漏れだす。

「……ゆう、き」

「なに?」

わかっているくせに、悠生はふれてくれない。
見つめられているだけで呼吸を荒くしていく私を、ただ黙って見ている。

「……ゆう、き」

「だから、なに?」

たまらなくなって、自分から口付けした。
自分でも信じられないくらいに悠生を求める。

唇が離れて、悠生の耳元で小さく呟く。

「……悠生が、欲しい」

 
今度は悠生の方から口付けしてきたかと思ったら、そのまま押し倒された。
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